【早稲田大を優勝に導いたルーキー】

 2026年の学生長距離界では、高校時代に全国で活躍したスーパールーキーたちが、トラックシーズンから存在感を発揮。10月12日に開催された出雲駅伝でも、1年生が3つの区間賞を獲得した。

 その3選手をはじめ、話題のルーキーたちは学生三大駅伝の初戦でどのようなデビューを果たしたのか。

 まずは早稲田大を16年ぶりの優勝に導いた、昨年の全国高校駅伝1区でトップスリーを占めた"令和の三羽ガラス"。日本選手権1500mで2位の本田桜二郎は2区に起用され、トップと16秒差の7位で走り出した。「距離が短いので、自分の強みが生かせると思っていました」と、5.8kmの短い区間で持ち味のスピードを発揮する。中央大・岡田開成(3年)らと激しい先頭争いを展開し、最後は岡田を振り切って首位に浮上。6人抜きで区間賞に輝いた。

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「中央大学さんがライバルだと思っていたので、そこに離されないように考えて走っていました。最終的には先にタスキを渡すことができたので、120点の走りができたのかなと思います」

 昨年、同区間で区間賞を獲得した先輩の山口智規(現・SGホールディングス)からは、後半にペースを上げるようアドバイスを受けていた。

 そして4区では、新妻遼己が本田に続いた。

「桜二郎が区間賞を獲ったということで、それに刺激を受けて、自分も頑張ろうという思いでした」

 新妻は日本大に先行されていた早大を再びトップに押し上げ、区間記録を更新。区間賞の快走で後続に16秒差をつけた。

 新妻は前半のトラックシーズンで苦しんだが、夏場は故障することなく練習を継続。本人によると、夏合宿ではチーム内で3番目くらいの練習量をこなしたという。

「無理のない範囲で練習を積んだなかで、ちゃんと距離を踏めたことは自信につながりました」

 大会新記録で16年ぶり優勝を飾った早大。花田勝彦駅伝監督は、新妻を今大会の「MVP」に挙げた。

 三羽ガラスの最後のひとり、全国高校駅伝1区の日本人区間最高記録を持つ増子陽太は出場しなかったため、3人がそろって駅伝を走る機会は、次戦以降に持ち越された。新妻は「増子は今もずっと調子がいいので、全日本(大学駅伝)で今回の自分たち以上にインパクトのある走りを絶対に見せてくれると思います」と期待を寄せた。

【仙台育英高の元チームメイトが1区で激突】

 早大のルーキーたちに負けないインパクトを残したのが、駒澤大の鈴木大翔だ。注目されたのは、創価大の菅野元太との直接対決である。ふたりは仙台育英高時代のチームメイト。ともに山形県出身で、中学時代から切磋琢磨してきた間柄だ。

「ライバルというか同期で、仙台育英で3年間一緒にやってきて、出身も山形で同じ。負けたくないという気持ちがけっこう強い相手です」

 鈴木はそう語っていた。1区で中大・藤田大智(4年)が序盤から飛び出すと、まず菅野が反応。その姿を見た鈴木も前を追った。

「かなりペースが速かったので、つくかどうか迷ったんですけど、元太がついたので自分もいきました」

 鈴木はレース中盤から集団の動きを冷静に見極め、最後の勝負に備えた。

「集団のなかからスパートが利く選手をピックアップして、臨機応変に対応できたところがよかったと思います」

 そして終盤、菅野が残り約700mから仕掛けたが、鈴木は慌てなかった。最後は一気に加速して先頭に立ち、区間賞を獲得した。

「安心しました。前日は怖かったんですけど、腹をくくって、藤田(敦史)監督の期待に応えられるように自信を持って臨めました」

 対照的に、菅野はトップから16秒差の8位。日本インカレ5000mで日本人トップの2位に入った実力者が、大学駅伝特有の難しさを味わった。

「スタート前から自分じゃない感じがしました。大学駅伝の背負うものが大きいというか、そういうのをすごく感じて、焦る気持ちがありました」

 終盤まで余裕があったというが、スパートのタイミングを誤った。

「ラストの直線が長いのは知っていたはずなんですけど、ちょっと早すぎたというか、タイミングを完全に間違えてしまいました」

 菅野は「鈴木大翔に勝つのが目標だった」と明かし、16秒差をどう埋めるかが今後の課題と語った。

 高校時代の仲間が大学ではライバルになる。その象徴的な勝負だった。

【鳥取城北高の元チームメイトは明暗】

 創価大の4区には村上遵世が起用された。村上は鳥取城北高出身。

2区で区間賞を獲得した本田とは高校時代のチームメイトだ。

 村上は5位でタスキを受けると、前方の順天堂大を追った。しかし、背後から猛追してきた國學院大・野中恒亨(4年)についていけず、区間新記録で快走した早大・新妻にも大きく差をつけられた。

「トップレベルの選手との力の差を感じました。同じ1年生に負けた。そこはすごく悔しいです」

 それでも終盤は粘り、設定タイムを上回る走りで5位を守った。自己採点は「70点」。大学デビュー戦で一定の手応えをつかんだ一方、同級生たちの区間賞ラッシュに刺激を受けた。

「これから(全日本大学駅伝、箱根駅伝と)距離が長くなるので、長い距離への適性をつけて、もっと勝負していけるようにしたいです。桜二郎には長い距離では負けたくありません」

 もうひとり、悔しいデビュー戦となったのが中大の栗村凌だ。学法石川高出身で、早大の増子とは高校時代のチームメイト。今季は、増子が5月に5000mで13分20秒35のU20日本記録を樹立したが、栗村も同じレースでU20日本歴代2位の13分21秒99をマークしている。

U20世界選手権はともに5000m代表に選出され、栗村は8位入賞を果たした(増子は体調不良で欠場)。

 中大は5区終了時点で3位。しかし、アンカーに抜擢された栗村は後続の猛追を受け、最終順位は5位になった。

「夏はしっかり距離を踏んで、疲労は抜けたと思っていたんですけど、後半の動きが全然よくなかった。まだ疲労が抜けていないのかなと感じました」

 区間7位に終わった自分の走りを悔やむ栗村だったが、意識するライバルについて尋ねると、こう即答した。

「早稲田の1年生全員をライバル視しています」

 本田、新妻に加え、高校時代の仲間である増子もいる。

「1年生で直接対決するとなったら、勝てるようにしっかり準備したいと思います」

 早大の本田と新妻、駒大の鈴木は最高のデビューを飾った。一方、創価大の菅野と村上、中大の栗村は学生駅伝の厳しさを知った。しかし、大学での駅伝生活は始まったばかりだ。出雲駅伝の区間距離は最長でも10.2km。全日本大学駅伝、箱根駅伝では、より長い距離への対応力が求められる。

 高校時代のチームメイトがライバルとして競い合い、時には同じ大学の仲間として刺激し合う。

強力ルーキーたちの争いは、これからさらに熱を帯びていきそうだ。

酒井政人●文 text by Masato Sakai

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