この記事をまとめると
■車種ごとにそれぞれカラーバリエーションに違いがある理由を解説



■ボディカラーには車両の性格や車格をイメージさせる力がある



■カテゴリーや車格を問わずあえて同じボディカラーを用意するメーカーもある



ボディ色で受ける印象は大きく変わる

「同じメーカーなのに、なぜ車種によってボディカラーが違うの?」「このクルマにあの色があればいいのに」。こうした声はクルマ選びに「あるある」な話で、読者の皆さんも一度や二度は経験したことがあるのではないでしょうか。そこで、今回は車種によるカラーバリエーションの意図について整理してみたいと思います。



大きなセダンとコンパクトでは似合う色が違う?

まず、いちばんわかりやすいのは「車格の違い」でしょう。同じカテゴリーのクルマであっても、上級車とエントリーカーでは設定される色が違うのに加え、多くの場合で色数にも違いが見られます。



トヨタ車を例にすると、たとえば「アルファード」は基本が4色のみで、無彩色のホワイトやブラックの他は濃いレッドなど落ち着いた色ばかりになっています。一方、同じSUVでも「ライズ」では基本だけでも倍の8色で、明るいブルーやイエローなどが設定されているのが特徴です。



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また、セダン系を見ても「カムリ」では基本が5色で、やっぱりホワイトとブラックの他は濃いブルーやレッドによって構成。片や「パッソ」は基本だけで9色もあり、明るいブルーやグリーン、ベージュなど華やかなイメージが展開されています。



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コンパクトカーに明るい色が多いのは、よりアクティブで活動的なイメージがあるためで、これはスポーツカーに明るいレッドやイエローなどが設定されているのと似ています。これをあえて無視したのが先々代の「ピンククラウン」で、その違和感は読者の皆さんもよくご存知のところでしょう。



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専用色や全車共有色の設定などブランドごとに異なるカラー戦略

同じクラスでも使い方や目的はさまざま

もうひとつの違いは「性格の違い」です。たとえば、同じクラスのSUVであるトヨタの「ハリアー」と「RAV4」では、基本色は同じ8色としながら、カムリの配色に近いハリアーに対し、RAV4には「グレイッシュブルー」や「アーバンカーキ」といった明るい色を加えています。



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また、軽自動車のアウトドア派であるスズキの「ジムニー」と「ハスラー」にも違いがあります。両車とも基本は明るい配色ですが、ジムニーは山間でも目立つ蛍光色のイエローや、アースカラー的なアイボリーを設定。一方、ハスラーは彩度の高いオレンジやブルー、グリーンなどが印象的です。



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同じクラス、カテゴリーであっても、たとえばセダン的な乗り方なのか、よりアクティブな使い方なのか、そうした性格付けの違いによって色を変えているのです。



特別なクルマには特別な色がある

そのほかでは「専用色」というものあります。有名なのがホンダの「チャンピオンシップホワイト」で、ご存じタイプRの専用色です。スポーティなクルマが好きな方には、たとえば新しい「フィット RS」にもこの色が欲しい、なんて声もありそうですが、そうは行きません。



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似たような例では、スズキの「スイフト スポーツ」に設定された「チャンピオンイエロー」があります。いずれも、特定のグレードを表現する色としてそれ自体に価値を与えたことが特徴です。



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以上のように、車格や性格の違いなども含め、クルマのカラーはCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイナーという、エクステリアとは別のチームが担当するのが一般的です。チームは車種ごとに明快なコンセプトを立て、場合によって新色開発も行いますから、当然各車で配色も異なってくるワケです。



カラーとカタチを分けないマツダデザイン

最後に、ボディカラーについてはやはりマツダ車を取り上げなくてはいけないでしょう。「魂動デザイン」として共通のスタイルを持つ同社のラインアップですが、「色も造形の一部」として、基本的なボディカラーを各車で共有しているのが特徴です。



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11月15日には、新しいマツダの赤として「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を発表、色についての深い追求を進めていますが、どの車種を選んでもメーカー厳選のカラーを体験できる点は、他社にはないじつにユニークな姿勢と言えるでしょう。



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さて、今回は車種によって異なるカラーバリエーションの理由を整理してみました。どの色の設定にも相応の理由がありますが、たとえば「フルオーダー」的なメニューがあってもいいのでは? と思います。一定の金額と納期を条件に、そのメーカーが持つすべての色から自由に選べれば、クルマ文化にも寄与すると思うのですが。

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