この記事をまとめると
■いま世界中の注目を集めているルシードのBEV「エア」に試乗した■洗練されたインテリアは開放感にあふれており居住空間も広くて快適だった
■走りはBEVにありがちなぎくしゃくした動きがなく性格で安定したコーナリングも魅力的だった
BEVメーカーとして世界が注目するルシード
世界ではいま、続々とBEVを市場へと送り出すためのベンチャー企業が誕生している。そのなかでもとくに大きな注目を集めているのが、アメリカのカリフォルニア州ニューアークに2007年車載用電池の開発や生産を目的にアティエヴァ社として創立され、のちにテスラからモデルSの開発などを手がけたピーター・ローリンソンをトップに迎えたことで新興BEVメーカーに転身し、一気にその存在を世界的に広めたルシードだろう。
現在彼らが生産しているのは、「エア」と呼ばれるミドルクラスのサルーン。
ルシードのエアには、そのエレクトリックモーターの数や、駆動方式などによってさまざまな仕様が設定される予定だが、今回、カリフォルニアで試乗したのは「グランドツーリング・パフォーマンス」と呼ばれるデュアルモーターの4WD仕様だ。

ちなみに先日ルシードは、さらに高性能なトリプル・モーターの「サファイア」を2023年春に発売する計画を明らかにしたが、このグランドツーリング・パフォーマンスでも、その最高出力はトータルで1050馬力、最大トルクは1250Nmにも達する。参考までに二次電池はリチウムイオン・バッテリーで、その搭載量は118kWh。ルシードによれば満充電からの最大航続距離は446マイル(約714km)、0-60マイル(約96km/h)を2.6秒でこなし、最高速は168マイル(約269km/h)を達成するという。その運動性能は大いに魅力的だ。
ルシード・エアのボディは、じつに洗練された、端正な造形が印象的なものだった。実際のボディサイズは、全長×全幅×全高で4976×2195(左右のミラーを含む)×1407mm。これに対してホイールベースは、サイドビューの画像からも想像できるように2959mmと十分な長さが確保されている。

ちなみにフロントのトランク(ルシードはこれをフランクと呼ぶ)は283リットル、リヤのトランクには626リットルの容量が確保されているから、そのサルーンとしての実用性は、まずは高く評価してもよいだろう。

スムースな走りは新興勢力らしからぬものだった
さらに驚かされたのは、こちらも美しく仕上げられたインテリアのフィニッシュだった。

後席のまわりのスペースも十分にリラックスした姿勢で長距離のクルージングを楽しめるレベル。キャビンに使用される素材の高級感も非常に高い。

車両のさまざまなセッティングは、そのほとんどをセンターコンソールに備えられるディスプレイで行うことができる。走行モードは「スムース」、「シフト」、「スプリント」の3タイプ。まずはスムースモードを選択して、そのドライブをスタートすることにした。

ルシードはすでに、このパフォーマンスのベースグレードとなる「グランドツーリング」のセールスを開始しているが、両車のもっとも大きな違いはモーターの出力。ベースモデルのグランドツーリングでも最高出力は819馬力にも達するから、車重が2000kgを大きく超える(試乗車のパフォーマンスの場合は2268kgと発表されている)重量級のサルーンでも、運動性能は十分にそれが期待できることは間違いない。
試乗車のパフォーマンスモデルのアクセルペダルを踏み込みと、スムースモードではじつに自然な加速のフィーリングを味わうことができた。あえてアクセルペダルをラフにオン・オフしてみても、BEVにありがちなぎくしゃくした動きは巧みに制御されているし、21インチ径のタイヤを装着しているにもかかわらず、ノイズや振動の処理も十分に納得できるレベルにあった。

前で触れたローリンソン氏がテスラからこのルシードに移籍してきたことなど、新興勢力にとっては力強いスタッフが加わるとともに、そのノウハウが持ち込まれた意味はやはり大きい。
走行モードをシフト、そしてスプリントへとチェンジしていくと、エア・グランドツーリング・パフォーマンスの走りはさらにスポーティなものになる。

洗練されたスタイリングと高級感、そして卓越した走りと実用性。そのすべてが実現されたルシード・エア。今後追加設定されてくるモデルを含め、それはBEV市場で大きな話題を呼ぶことは確かだろう。日本への上陸も、もちろん大いに期待したいところだ。
