この記事をまとめると
■交通安全教育指針に「手を上げて運転者に横断する意思を明確に伝えよう」という項目が復活



■手を上げていなくても横断歩道を渡ろうとする歩行者がいたら車両が停止するのはルール



■それでも手を上げる意味はあると筆者は解説



2022年に交通安全教育指針の一部が改正された

昔から「手を上げて横断歩道を渡りましょう」という交通標語はおなじみだ。



頭でっかち的に道路交通法を読み解くと、「信号のない横断歩道や交差点などでは歩行者優先なのだから手を上げる必要はない」という意見もあるが、手を上げて横断する意思を示すというハンドサインは多くの自治体において推奨されているのも現実だ。



この背景には、2022年に交通安全教育指針の一部が改正され、「手を上げて運転者に横断する意思を明確に伝えよう」という項目が43年ぶりに復活したことがある。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そ...の画像はこちら >>



前述したように道路交通法を遵守することが前提の原則論でいえば、歩行者は横断する意思を表現する必要はないが、法律や制度の目的は交通事故を減らすことにある。歩行者のハンドサインによってドライバーやライダーに意思を示すことが安全につながるのであれば、原則論にこだわる必要もないだろう。



数年前より、信号機のない横断歩道付近に歩行者を確認したら車両は徐行、停止して歩行者の横断を優先しなければならないというルールに関する啓蒙活動が盛んに行われている。横断歩道の手前で停止する車両が増えたと実感している人も少なくないだろう。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そもそもなぜ手を上げる必要があるのか?
停止線で止まる自動車



一方、歩行者においてはスマートフォンを注視しながら歩くといった“ながら歩行”、“ながらスマホ”による事故の危険性も指摘されている。横断歩道付近でスマートフォンを触っている歩行者が、はたして横断の意思があるのかどうかわかりづらいのも事実だ。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そもそもなぜ手を上げる必要があるのか?
スマホを操作しながら歩く会社員



歩行者が手を上げるなどのハンドサインを出すということは、横断の意思表示となり、その際に周囲の確認もできるため“ながら歩行”対策としても有効といえる。



優先だからハンドサインを出す必要はない! というのは法律的には事実であっても、万が一事故になってしまうと被害を受けるのは圧倒的に歩行者である。車両のコミュニケーションをとることは自己防衛につながる行為といえる。



とはいえ、横断の意思を示すハンドサインは「手を上げて横断歩道を渡りましょう」という標語の狙いとは微妙に異なる。手を上げて横断の意思を示したとしても、横断しているときには手を下ろしているイメージだからだ。



身長の低い子どもには自己防衛の有効手段

では、手を上げて横断歩道を渡る行為に意味はないのだろうか。



身長1m以下の子どもにおいては手を上げて横断歩道を渡ることは有効な自己防衛手段となる。だからこそ、長年にわたりこの標語が受け継がれているのだろう。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そもそもなぜ手を上げる必要があるのか?
手を上げて横断歩道を渡る子ども



ご存じのように、クルマには死角がある。車体形状にもよるが近年のデザインは歩行者保護のためにボンネットが高くなっている。そのため前方の死角が大きくなりがちだ。そうなるとボンネットより背の低い幼児などをドライバーが認識できないこともある。



その対策として、子どもが手を上げて横断歩道を渡ることには大いに意味がある。背の低い子どもが死角に入っていたとしても手の先が見えることでドライバーがその存在を認識できるからだ。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そもそもなぜ手を上げる必要があるのか?
横断歩道手前の手を上げている人形



子どもと交通事故といえば「魔の七歳」という言葉がある。



小学低学年の児童は交通事故にあいやすいので注意すべき、というわけだ。このくらいの年齢までは身長的に車両の死角で隠れてしまいやすいので「手を上げて横断歩道を渡る」ことを習慣づけておくのは、自己防衛として有効といえる。



もっとも子どもにだけ手を上げるようにいっても、幼児というのは大人の真似をしがちであり、大人が実行していなければ習慣づくこともないだろう。



「手を上げて横断歩道を渡りましょう」が43年ぶりに復活! そもそもなぜ手を上げる必要があるのか?
手を上げて横断歩道を渡る大人



子どもの安全を守るために、大人が率先して「手を上げて、左右を確認して横断歩道を渡る」という動作の見本を見せることには意味があるといえそうだ。

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