この記事をまとめると
■ロータリーエンジンを積む最後の市販車、RX-8の生産が終わったのは2012年



■今後ロータリーエンジンを積む内燃機関車が登場する可能性は低い



■しかし小型ロータリーエンジンを発電機として使用する試作車が開発されていた



ロータリーエンジンを積む最後の市販車はRX-8

ロータリーエンジンの可能性について、幾多の論議がある。ただ、『効率的に大排気量車には向かない』ということは言われてきた。ロータリーエンジンの真価は、『軽量コンパクトな点にあり』こうした意味では、『それほど大きくない、中型クラスまでのスポーツカー用パワーユニットとしては最適』と言われている。



そのロータリーエンジンを積む最後の市販車、RX-8の生産が終わったのは2012年。それ以降、モーターショーなどでロータリーエンジン車の未来像としてコンセプトカーのかたちで目にすることはできたが、今日にいたるまで具体的な商品企画を耳にすることはなかった。二酸化炭素の排出ゼロを目指し、カーボンニュートラルが声高に叫ばれている現在、ロータリーエンジンを積む内燃機関車の登場はかなり難しいと推察できるが、別のかたちでロータリーエンジンの試みを知る機会に恵まれた。



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もう数年以上も前の話だが、横浜にあるマツダR&Dで、発電機として機能するロータリーエンジン車に試乗することができた。搭載車両はデミオで、EVの充電用として330ccのシングルロータリーエンジンを搭載。設置場所はリヤのラゲッジスペースで、エンジン搭載方向は縦、つまりエキセントリックシャフトが垂直になるかたちだった。



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マツダ・デミオEVのトランクルーム内の発電機用ロータリーエンジン



当時は、現在ほどEVに対する注目度は高くなかったが、排出ガスに含まれる二酸化炭素の削減(無排出化)は、喫緊の課題として重要視される状況だった。世の中の声は、むしろロータリエンジン搭載車の復活を願う傾向が強く、デミオに搭載された発電機としてのロータリーを目にしたときは、「はて? どの程度の能力なのか」と疑問を持つ程度だったが、実際に走らせてみてロータリーエンジンの優秀性を強く感じることになった。



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マツダ・デミオの試験車両に搭載されるロータリーエンジンのレンジエクステンダーシステム



試作車では小型ロータリーエンジンを発電機として使用

発電機としての細かな設定は、はっきりと覚えていないが、走行速度が10km/h以上になると発電機(ロータリーエンジン)が動きだす設定で、エンジンは定常回転による作動だった。エンジン回転数は、音から判断する限り低速回転域での設定で、4人乗車で走らせたが、ドライバーシートには運転音はほとんど伝わってこなかった。後部座席に乗った人に聞いたところ、エンジンが回っているのはわかったが、まったく耳障りではなかったとのこと。



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マツダ・デミオの試験車両の走行写真



このデミオの試乗車(試験車)は、発電機用に9リッターの燃料タンクを装備していたが、EVとしての航続距離設定が200kmだったことに対し、小型ロータリーエンジンを発電機として使い、充電しながら走った場合は、ちょうど倍にあたる400kmの航続距離が得られたという。



発電機として活用するため、大排気量である必要はなく、デミオEVの場合も330ccの排気量設定だった。当然、単気筒(シングルローター)で事足りる排気量だが、回転バランスに優れたロータリーエンジンを縦方向に搭載して低速回転で運転する手法は、じつに効果的で斬新だと思わされた。これがレシプロエンジンなら、単気筒で足りる排気量だが、エンジン振動の点ではロータリーに及ぶべくもない。2気筒でもかなわないはずだ。



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マツダ・デミオの試験車両に搭載されるロータリーエンジン



当時、実用化にあたって何が問題なのか、確認することはできなかったが、マツダはロータリーエンジンと水素燃料の相性がよいことは、かねてからの研究・開発で手応えをつかんでいた。現在のレベルで言えば、二酸化炭素を排出する化石燃料による内燃機関の使用ははばかられる状況だが、燃料が水素となれば話は別だ。無公害内燃機関として水素燃料エンジンを活用するのは正しい選択肢のひとつと言ってよいだろう。



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マツダ・プレマシーの水素ロータリーエンジン車のエンジンルーム



余談だが、現在、ガソリンを燃料とする携行型の発電機がある。あれをレシプロエンジンでなく、ロータリーエンジンにしたら音、振動の点で有利になり商品価値は上がるだろう、とデミオの発電機ロータリーを眺めながらこんな思いにとらわれた。

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