この記事をまとめると
■「OBD」と呼ばれる機構に関して解説



■現在は第2世代のOBD2の時代となっているが、似たような仕組みは1980年代からあった



■専用の診断機に繋ぐと瞬時に不具合の箇所がわかる優れものとなっている



たまに聞くOBDという装置は何をする物なのか

耳慣れない言葉だが、電気的に車両の健康診断を行う「OBD」(On Board Diagnosis=オン・ボード・ダイアグノシス)と呼ばれるシステムがある。直訳すれば、車載診断システムという言い方でよいだろうか。OBDの言葉自体は知らなくても、整備工場で車体側のコンピューター端子(コネクター)と外部コンピューターを接続し、車両の状態をチェックしている様子を目にしたことがあるだろう。

車両各部を制御しているECUが受け持ち動作領域の作動状態を記憶し、トラブルがあった場合はそれを異常として、接続したコンピュータ上に表示するシステムである。



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かつて、自動車はすべてメカニカル制御で、まっ先に電子制御が取り入れられたのは燃料噴射装置だった。エンジンの作動状態を各センサーが電気的に検知。吸気空入量とかスロットル開度、エンジン回転数、ひいては気圧などもセンシングし、それらの状態をコンピュータに送って演算。その運転状況から適正噴射燃料量(正確には噴射時間)を電磁ポンプ通してインジェクターに圧送するシステムだ。



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エンジンインジェクター



電子制御燃料噴射装置のメリットは、燃焼に必要なすべての情報を検知、演算することで、連続可変的に適正な燃料量をシリンダー内に供給できる点にある。これが機械式の場合だと、燃料噴射装置のメータリングカムに従った燃料供給しか出来ず、急加速/緩加速、高温/低温、高気圧/低気圧といった運転状況、環境の変化に応じた適正燃料量の供給を行うことは不可能である。



この電子制御システムの進化は、自動車の高性能化に大きな貢献を果たし、現在ではメカニカルな動きを行う自動車各部の動きを電気的に制御(電子制御)できるようになっている。たとえば、ブレーキでいえばABS、ステアリングで言えば速度感応型、高度な例になるとヨーレートセンサーや車輪速センサー、ABSを組み合わせた車両挙動安定装置、レーダー検知を組み合わせた自動アクセリングシステムや自動ブレーキシステムなど、電子デバイス抜きで現代のクルマを語ることはできない。



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ホンダレジェンド走り



今では欠かせない車両整備時の重要機能に

さて、このOBDシステムだが、現在は第2世代のOBD2の時代となっている。歴史を振り返ると思いのほか古く、機能診断という意味では、1980年にGMが生産ラインで品質管理に開発したALDL(Assembly line Diagnostic Link)が原点となっている。文字どおり生産ラインでの機能診断リンク機構で、車載ECUのデータを外部コンピューターで読み取り、各部の動作状況を確認できるシステムとして、その後発展している。


ただ、初期の電子制御システムは、各メーカー独自のシステムとして作られていたため、外部コンピューターとの接続コネクター方式や故障コードの表示方法などに互換性、共通性がなく、自動車全体の診断システムとしては汎用性に欠けていた。



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ALDLコネクター



ECUから故障状態を読み取るシステムとして、OBDが非常に有効であることは認識されていたため、一般市場での利便性、ユーティリティの向上を図る方式として、接続コネクターや故障コードを共通化して汎用性を一気に高める改善が行われた。このOBDの新旧を区別するため、初期タイプのものをOBD1、改善型のものをOBD2と名付けている。



通信に必要な規格は5種類が設定され、SAE J1850(振幅変調)、SAE J1850(可変振幅変調)、ISO 9141-2、ISO 14230、ISO 15765(CAN)となっている。ちなみに、OBD2規格のコネクターは、16の端子を持つもので規格されているが、実際にOBDシステムの信号のやりとりに使う信号端子は9つで、残りの空き端子は、各社が独自に自社車両の情報読み取り用として使っている。



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OBDコネクター



なお、OBD2の故障コードはDTC(Diagnostic Trouble Code)と呼ばれ、アルファベット1文字と4桁の数字による組み合わせとすることで、細かく故障状況が読み取れるようになっている。ちなみに、アルファベットによる故障コード表示は4種類で、Pコード(パワートレイン系)、Cコード(シャシー系)、Bコード(ボディ系)、Uコード(CANに関する故障表示)となっている。



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OBD診断機



電子、電気は目に見えず、それぞれの機能を理解するのは難しいが、機械制御だけではとうてい為し得なかった繊細緻密な制御を可能とし、その結果、クリーンで高性能な性能を実現したのみならず、その機能診断を即座に行ってしまうOBDの活用と、現代の自動車はトラブルシューティングすら瞬時に、そして確実に行える環境となっている。

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