この記事をまとめると
■総生産台数2000万台を超える通称フォルクスワーゲン・ビートル



■カブトムシという呼び名は本国ドイツで付けられたもの



■これが他の国に行くと違う虫で呼ばれる例が多数見られる



同じ車種名なのに愛称が国によって違う「ビートル」

車名が国ごとに違うこと、クルマ好きならよくご存じかと。最近の例でいえば、トヨタ・ハリアーは米国名「VENZA(ヴェンザ)」で、日産エクストレイルは同じく「ROGUE(ローグ)」と名付けられています。日本名そのままでは発音しづらいとか、慣習的に合わない(日本名そのままだと、妙な意味になる等)といったことから、車名が変えられるのはよくあること。



一方で、お国柄で車名というかニックネームが変わるというクルマもあります。総生産台数2000万台を優に越え、世界各国でいまでも走り続けているフォルクスワーゲン・ビートルは、正式社名が「ビートル」になる前から、それこそ各国で勝手に名付けられ、親しまれてきたようです。



本国ドイツと日本じゃ「カブトムシ」の愛称なのに世界じゃ……「...の画像はこちら >>



ビートルの名は世界各国でまかり通っていますが、正式名称になったのはごく最近で2011年に発表された3代目からのこと。1998年に登場したFFになった2代目は「ニュービートル」という車名で、なんだかややこしいことになっています。



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フォルクスワーゲン・ビートル(初代)とザ・ビートル(3代目)の2台並び



愛称となったビートルはご承知のとおりドイツで初代モデルが「Kafer(カブトムシ)」とあだ名が付けられたことが始まり。そもそも初代は第二次大戦中にヒトラーがフェルディナンド・ポルシェ博士に「国民車」の開発を命じた「KdF Wagen」を原型としたので、戦後になって同社が生産する際もこうした記号的な名前でタイプIとか、1200や1300など、型式や排気量をもとにしたそっけない車名が続いたのだと思われます。



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フォルクスワーゲン・タイプIのエクステリア



となると、愛称とかニックネームで呼びたくなるのも自然な流れ。最初にドイツで呼ばれはじめた「Kafer(カブトムシ)」が「Beetle(カブトムシや甲虫)」と英訳され、偉大な愛称がスタートしたわけです。ずんぐりむっくりしたボディ、決して俊足ではない様子はまさにぴったりな表現ですから、世界中に浸透したのも大いに納得。しかしながら、そこからの発展というか、転生はいささかアナーキー(笑)。



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フォルクスワーゲン・タイプIのドイツでの写真



まずはビートルと呼ぶのが流行っていたかのようなアメリカなのに、一般的に定着したのは「Bug(虫けら)」という呼び名でした。ビートルが上陸した1950年代のアメ車はテールフィンが付いているようなフルサイズがトレンドでしたから、ふたまわりも小さなビートルがバグに見えてしまうのも致し方ありません。



それでも、これは愛情を込めたニックネームでもあり、ディズニーによる「Love Bug」なんてビートルを主人公にした傑作映画が(続編とリメイク含め5~6本)製作されるほど。劇中ではビートルが「ハービー」と名付けられているので、アメリカのちびっ子に「ハービー」といえばビートルを指さすことがデフォ、らしいです。



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フォルクスワーゲン・ビートル(初代)のハービー仕様



南米ではまさかの「ゴキブリ」呼ばわり!

このケイファーとかビートル、あるいはバグという虫というキーワードは世界各国でさまざまな解釈がなされ、カブトムシ以外にもバリエーションが広がっています。たとえば、フランスでは「Coccinelle(てんとう虫)」だそうで、個人的にはカブトムシより的を射ているというか、可愛らしいのではないかと。さすが、芸術の国といった感じでしょうか。



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フォルクスワーゲン・ビートル(初代)のフロント



それがお隣のイタリアになると「Maggiolino(黄金虫)」となり、虫は虫でも国によって解釈が違うことがわかります。ただ、イタリア人に「マッジョリーノって知ってる?」と聞いてみると「ああ、美味しいよね」と謎の返答(笑)。アメリカのハービーほどには浸透していないようです。



で、同じくラテン系のスペインになると「Escarabajo」。エスカラバッホと発音するようで、これまた甲虫、とくに黄金虫という意味だそうで、ケイファーを由来としていること想像しやすいですね。とはいえ、フォルクスワーゲン・エスカラバッホといわれても我々日本人がビートルをイメージするのはちょっと難しいかもしれません(笑)。



また、同じラテンでもビートルを生産していたこともあるメキシコになると「Vocho」という愛称となり、意味こそ虫ですが、フォルクスワーゲン・ビートルだけにつけられたものだそう。

なので、あえてフォルクスワーゲンという社名をつけなくても、レンタカーのカウンターなどでは「ボチョある?」で通じるみたいです。



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メキシコでのフォルクスワーゲン・ビートル(初代)の写真



最後は南米での愛称「Fusca」。かの地ではビートルを指す一般的な呼び名として定着しているようですが、もとは「南米産の大ゴキブリ」の一種だそうです(笑)。たしかに、甲虫からカブトムシ、黄金虫といったトランスフォームはあるものの、ゴキブリまでたどり着くとは、さすが世界のベストセラーだけのことはあります。ブラジルでは「どんなクルマ乗ってんの?」「あ、ゴキブリ(fusca)だよ」的な会話が成り立っているのでしょうね。



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アフリカでのフォルクスワーゲン・ビートル(初代)の写真



※写真はアフリカでのフォルクスワーゲン・ビートル



なお、フォルクスワーゲンがセンスいいなと思うのは、こうした各国の呼び名を車名エンブレムとして販売しているところかと。日本国内でも入手できたようですから、ビートルマニアの方は、ぜひお気に入りの愛称をチェックしてみてはいかがでしょう。

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