この記事をまとめると
■電動キックボードが普及する一方でパリではシェアリングでの利用が禁止となった■シェアリングが禁止となったのは利用者のマナーの悪さが原因
■パリ市の事例を教訓として利用者自身がマナーを守り交通ルールを理解することが必要だ
いち早くシェアリングを開始したパリでサービス終了
日本でも普及に向けた動きが活発化しているいわゆる電動キックボードについて、メディアやSNSでは賛否両論がある。
そのなかで、「パリじゃ禁止になったのに、日本では大丈夫なのか?」という声がある。これは、どういうことなのか?
フランスのパリ市は2023年4月2日に「パリ市内での電動キックボード・シェアリング事業の存続の有無」を問う市民投票が実施された。
あくまでもシェアリング事業が禁止となるだけで、個人所有の電動キックボードは引き続き利用できる。また、今回の投票率が市民全体の10%にも満たなかったことについて、投票の有効性を問題視する声や、そもそも投票の実施がしっかり広報されておらず、投票の日時や場所を知らなかった市民もいるとの指摘もある。
だが、パリ市としては投票は有効であったと結論づけている。
パリ市といえば、電動キックボードのシェアリングをいち早く取りれた大都市として知られてきたのだが、いったい何が問題となったのか?
問題とは、利用者のマナーの悪さだ。

ふたり乗り、飲酒運転、違法な場所での駐車など、目に余る行為が多く発生したため、パリ市がシェアリング事業に許可を与える事業者の数を絞り込んだり、違法行為に対する取締り強化を行ったにもかかわらず、状況は好転しなかった。
こうした状況を受けて、パリ市のアンヌ・イダルゴ市長は電動キックボードのシェアリング事業を継続することは難しい局面となったと捉えて、今回の市民投票の実施につながったのだ。
まずは利用者がルールを守ることが絶対条件だ
別の観点で、今回のパリ市における電動キックボード・シェアリングの禁止はグローバルに対して大きなインパクトがあると思う。なぜならば、欧州やフランスでは、2000年代から都市交通に関する抜本的な変革に向けてさまざまな法律を制定したり、市民を交えて新しい時代の都市像についての議論を深めてきたからだ。

そのなかで、2010年代以降はスマートフォンの普及によって小型モビリティのシェアリングがビジネスとして成立するようになった。いわゆる、シェアリングエコノミーと呼ばれる領域である。
このような経緯のなかで誕生し、そして普及が進んできた電動キックボードのシェアリングがパリ市から姿を消すことは、単なるパリ市だけの社会問題ではないはずだ。

他方、日本では改正道路交通法が2023年7月1日に施行されたことに伴い、特定小型原動機付自転車(警察庁による略称:特定原付)が誕生した。
これにより、一部の電動キックボードなどの小型モビリティが、16歳以上であれば運転免許不要、またヘルメット着用が努力義務で運転できることになった。さらに、一定の要件を満たす機種では、最高速度6km以下で自転車等が走行可能な歩道を走行することも可能だ。

電動キックボードについては、特定原付が生まれる前の時点で、事故や違法な利用が発生しており、警察庁がそのデータも公開している。直近では、特定原付による違法行為についても各種報道がある。
日本においては、パリ市の事例を教訓とし、まずは利用者自身がマナーを守り、交通のルールをしっかり理解することが先決だ。
そのうえで、状況に応じて法律の改正、または市町村でのローカルルールの策定が必要になってくるかもしれない。