この記事をまとめると
■昔のクルマには車種名とは違う「愛称」で呼ばれていたものも多い■最近のクルマには愛称が付かないことが多い
■相性がないのには、なんでもハラスメントになりかねない社会的風潮も影響している
いまのクルマにもあだ名を付けたくなるモデルはある!
編集部からもらったお題のなかで目に留まったのが、「いま愛称のあるクルマがない理由」。そういえば何でだろうと思って、ワケをぼんやり考えてみた。
まず、愛称やニックネームの類で呼ばれても不思議でないクルマはいまも存在する。
つまり、愛称のあるクルマがなくなったというより、クルマを愛称で呼ぶことがなくなったのだ。
その理由について、ない頭を絞ってみる。クルマに愛称がついた時代より車種が大幅に増えた。軽自動車を除いてグローバルモデルが主力を占めるようになった。ハッチバックもSUVもミニバンも、基本的にはどのクルマも同じようなカタチになってきた。などという点が挙げられると思う。
しかし、一番大きく影響しているのは、ユーザーマインドの変化ではないだろうか。一般大衆にとってマイカーを持つことが現実的になったとはいえ、まだ贅沢だった1960~70年代。多くの人々はクルマという存在にいまよりも憧れを抱き、その愛情表現としてまさしく「愛称」やニックネームが自然発生的に生まれた。
カブトムシ(VWタイプ1)にはじまり、カニ目(オースチン・ヒーレー スプライト)、テントウムシ(スバル360)、ダルマ(初代トヨタ・セリカ)、クジラ(4代目トヨタ・クラウン)、ハマグリ(2代目日産シルビア)などなど。

人間も「あだ名」をやめる時代
愛称やニックネームを使わなくなった理由としてもうひとつ思い当たるのは、「相手にあだ名を使うのはやめて、『さん』づけで呼びましょう」という現在の社会的風潮だ。
とくに学校では、2013年にいじめ防止対策推進法が施行されてから、そうした指導が行われることが増えたという。あだ名は身体的な特徴や癖などからつけられることが多く、あだ名で呼ばれた人が不快に感じれば、それはいじめ行為にあたるというものだ。
クルマの愛称も見た目の特徴に由来したものがほとんど。なかには「ブタケツ」(2代目日産ローレル)や「ブタ目」(3代目トヨタ・コロナマークII)といった、愛称というより蔑称といったほうがよさそうなものも確かにある。「あだ名禁止」には賛否両論あるが、相手をいじめるつもりはけっしてなくても、知らず知らずのうちに嫌な思いをさせるとしたら、もちろんいいことではない。

部下に軽く注意をしても、女子に「かわいいね」といっても、ややもするとハラスメントといわれる時代。クルマが愛称で呼ばれることは、今後ますますなくなるのかもしれない。何とも世知辛い世の中である。