この記事をまとめると
■タイヤメーカーでは「エアレスタイヤ」の開発が進んでいる■ミシュランやブリヂストン、TOYOがエアレスタイヤを開発中であることを発表している
■2023年秋に開催される東京モビリティショーではタイヤにも注目したい
空気を使用しないタイヤの実現がもう目の前
空気入りタイヤが誕生してすでに100年以上が経過している。ビートと空気を用いることで乗り心地が良くなり高速化を実現したタイヤ。しかし、パンクや空気圧調整など、空気を用いることでの不便な部分もある。
ミシュランがエアレスタイヤをスタート
エアレスタイヤという考え方が登場したのは2005年のことであった。ミシュランタイヤによるTWEEL(トゥイール)と呼ばれるコンセプトアイテムがエアレスタイヤの起源であったと言えるだろう。このTWEELはタイヤとホイールを一体化させるといったコンセプトで、主に小型の作業用車両をターゲットにしたアイテムであった。TWEELでは高強度のポリ樹脂スポークで荷重を支え衝撃を吸収するというメカニズムだ。
このTWEELはすでに市販化されており、2014年にアメリカのサウスカロライナ州にTWEEL用の専用工場を開設し、スキッドローダーや芝刈り用のTWEELを製造し、北米市場を中心に販売を開始した。2018年にはヨーロッパやロシアでも販売を開始し、2019年には日本にも導入されている。
ミシュランは公道での試験導入をしている
ミシュランタイヤは、「パンクしない」という利点は乗用車ではなく商用車にあると考えており、TWEELのように業務で使うクルマをターゲットとしてエアレスタイヤ開発を積極的に行っている。業務で使うクルマをターゲットとしているのは、パンクを原因とした作業中断による経済上の損失を少なくし、空気圧チェックがなくなることでのメンテナンス時間の短縮を狙い、稼働率を向上させ生産性を最大化させることが主な理由だ。
そして、公道を走るクルマにもエアレスタイヤを使用し始めている。2023年6月末からフランス郵政公社と提携して、「ミシュラン アプティス・プロトタイプ」を装着したLa Poste車両の運用がスタートしている。La Poste車両は手紙や小包を配達する車両で、約40台を運用しているそうだ。

この「ミシュラン アプティス・プロトタイプ」は、乗用車・ライトバン用のエアタイヤで、すでにシンガポールでDHLエクスプレスが試験採用を開始している。環境負荷軽減も考えられたアイテムとなっているのだ。

日本での導入は現状予定されていないそうだが、もし、ミシュランのエアレスタイヤが日本の公道を走ることがあるとすれば、それは商用車からのスタートである可能性が高い。
日本のタイヤメーカーもエアレスタイヤの実現を目指している
ブリヂストンは環境に配慮したエアレスタイヤを開発中
日本のブリヂストンもエアレスタイヤの開発に取り組んでいる。現在、ブリヂストンがターゲットとしているのは小型のEV車両だ。「エアフリーコンセプト」という名称の小型EV向けタイヤは2023年2月から、出光興産千葉事業所の構内移動車両で実証実験を行っている。エアフリーコンセプトは空気に代わってスポークによって荷重を支えており、路面に接する部分はリトレッドが可能となっている。そしてスポーク部分は再生が可能な樹脂でできている。環境配慮を考えたタイヤと言えるだろう。

この環境配慮を考えたタイヤとEVのキャラクターのマッチングが良いことや、エアフリーコンセプトと出光興産のビジョンの親和性が高かったことから実証実験がスタートした。現在、この実証実験と並行して実用化に向けたロードマップも検討しているとのことなので、市販化への見通しが見えてくる日は近いかもしれない。
TOYOはカラードスポークでドレスアップへの対応も目指す
エアレスタイヤに取り組んでいる日本のもうひとつのタイヤメーカーがTOYO TIRESだ。2006年からエアレスタイヤの研究に取り組み始め、2012年には試作モデルを人とくるまのテクノロジー展に参考出品した。そして2017年にエアレスコンセプトタイヤ「noair」(ノアイア)を発表している。

コチラも基本的には小型車での研究開発から始めており、低燃費トレッドゴムを採用するなど、環境配慮も当然行われているが、市販化を見据えてユーザーにより積極的に選ばれるように、スポークのカラーリングを選べるようにするといった、アフターパーツとしての商品性も意識した開発が行われているようだ。
まだまだ発展途上であるが、無限の可能性を秘めているエアレスタイヤ。今年秋のモビリティショーでは、エアレスタイヤがトレンドのひとつになるかもしれない。新型車に目が行きがちだが、タイヤにも注目してショーを楽しみたいところだ。