この記事をまとめると
■1980年代ごろのクルマには「ロッドアンテナ」が装備されていることが多かった



■電波を送受信するアンテナをクルマに設置する際の設置基準は明確に定められている



■近年増加している「シャークフィンアンテナ」にもルールがあるので後付けには注意が必要だ



アンテナをつけると保安基準に接触する場合がある?

1980年代くらいまでの旧いクルマには、運転席の前にあるAピラーやトランクの脇から生えた長い「ロッドアンテナ」をよく見かけましたが、それ以降の年代になると、ダイバーシティ方式などのアンテナ技術の進歩に伴って、次第にアンテナの存在感が薄くなっていきます。



その一方で、趣味の無線の世界では、より高い性能を求めて長いアンテナを装備する車両も多いようで、山道を走るクロスカントリー車(ランクルやパジェロなど)に2mを超えるようなアンテナが装着されているのを見たことがあるという人もいるでしょう。



また、携帯電話がまだ無い時代には、パーソナル無線でクルマ同士のコミュニケーションを取っていました。

トランクの縁にステーを取り付けて、50cmくらいのものから1mを超える長いアンテナを装着した車両をよく見かけました。



かつては長ーいアンテナで無線を楽しむドライバーも多かった! ...の画像はこちら >>



いまは見かけなくなったあの長いアンテナですが、いま装着したいとなった場合、保安基準の規定的にはどうなんでしょうか? 気になってちょっと調べてみましたので紹介していきましょう。



電波送受信用アンテナの装着規定について

自動車のボディ外面に装着する物については、歩行者などの保護の観点から、細かく規定が定められています。もちろんアンテナもその対象で、装着する際にはその規定を守らなくてはなりません。



そのアンテナに関する保安基準の情報を集めてみましたので、まずはそれを紹介します。



<電波送受信用アンテナに関する保安基準(要約)>



・以下の基準は平成21年1月1日以降に製造された乗用の自動車を対象とする



・車両表面から突出した物は、衝突時又は接触時に歩行者等に傷害を与えるおそれのある形状、寸法、方向又は硬さを有するいかなる突起を有してはならない



・いかなる物も車両の最外縁の鉛直面より外にはみ出してはならない



・地上高2mより上の車体表面に装着されている物に関して(突起の形状)は不問とする



・フロアライン※より下に装着されている物に関して(突起の形状)は不問とする



・車体表面から5mm以上突き出ている物は、先端の半径を2.5mm以上にしなければならない



※硬さが60ショア以下の材料からなるものにあっては、その曲率半径は2.5mm未満であってもよい



・電波送受信用アンテナは、その先端が、自動車の最外縁を含む鉛直面より100mm以上内側になるように取り付けられなければならない



・電波送受信用アンテナのシャフトは曲率半径2.5mm未満であってもよい。 ただしその先端には曲率半径が2.5mm以上の固定式保護キャップを取り付けなくてはならない



・電波送受信用アンテナの台座は車体表面から40mmを超えて突出してはならない。ただし、運転者のレファレンスライン(保安基準上の運転者の頭部の位置)より後方に装着される物については高さ70mmまでOKとする



となっています。



これをかなりカンタンに言い換えると、



・後付けの物は車体外周からハミ出して装着してはダメ(アンテナは先端が車体外周より100mm内側に収まるようにしましょう)



・電波用のアンテナは、台座の高さが70mm(運転者の頭部より前の位置なら40mm)までOK



・台座もアンテナ部も先端の半径が25mm以下の鋭い形状はダメ(ただし2mより高い位置ならその限りではない)



となります。



このようにきっちりと規定がありますので、どうしても車体外縁からハミ出すように装着したい場合は構造変更手続きをすることになります。その際も、歩行者などを害する恐れがあるような物や装着方法はNGとなるでしょう。



とにかく、歩行者などが接触したときに、傷を負わせるような形状、状態の物は、アンテナに限らずNGということです。この記述が保安基準に明示されているので、たとえ上記の規定&数値を考慮したアンテナを装着したとしても、車検の検査員や取り締まりの警察官の判断でNGとされる場合はあると思ったほうが良いです。



アンテナには細かい規定が存在する

車体の外周をハミ出さなければ、長さは何mでもいいの?

ちなみに、アンテナの長さについてですが、保安基準のなかにそれに関する項目は見付けられませんでした。その範囲内で解釈する限りではありますが、アンテナの先端が、車体外周の垂直面より100mm内側に収まっていれば、長さに関してはとくに決まりはない、となります。



では実際に、たとえば2~3mの長すぎるロッドアンテナを装着したとして、意味はあるのでしょうか?



かつては長ーいアンテナで無線を楽しむドライバーも多かった! ところで「後付けアンテナ」も長さや形で違法になるケースがあるので要注意
クルマに後付けでアンテナをつけるには明確なルールがあった



たとえばFMラジオ用アンテナの長さは900mm前後が適しているとされています。これは電波の波長に関係していて、76~95MHzのFMの電波をキャッチしやすい長さが900mm前後となるのです。これがAMになると3倍以上の波長になるため、3~5mのアンテナが適することになりますが、これは現実的ではありませんので、ループコイルなど工夫してコンパクトに収めています。ちなみにAMが主流だった旧車の時代のロッドアンテナが長いのはこのためです。



これがパーソナル無線になると905MHz前後の周波数帯なので、300mm以下でも用は足りるようなんですが、山奥などで遠くからの電波を拾うときには弱まった電波を増幅する必要があるため、できるだけ広く電波を拾えるようにと、やたら長いアンテナを使っているとのことです。



ただし、あのアンテナを装着したまま走行したとすると、車体の規定範囲内に収めるのは困難でしょうし、歩行者などを引っかけかねない危険物として判断される可能性もありますから、現実的ではないと思います。標識やガード下をくぐるときなどに、うっかり引っかけてしまいそうで、街乗りには不向きですね。



かつては長ーいアンテナで無線を楽しむドライバーも多かった! ところで「後付けアンテナ」も長さや形で違法になるケースがあるので要注意
鉄道の高架下と高さ制限の標識写真



ルーフに付いている「シャークフィンアンテナ」の高さに制限はあるの?

最近採用例が増えている「シャークフィンアンテナ」はどうでしょうか? 純正でも多くの車種に採用されているのに加えて、後付けの社外品も出まわっていますが、車検に通るか心配になりますね。



かつては長ーいアンテナで無線を楽しむドライバーも多かった! ところで「後付けアンテナ」も長さや形で違法になるケースがあるので要注意
自動車のシャークアンテナの写真



保安基準上ではアンテナ台座の扱いになるようです。その条件は……



・突起の先端が曲率半径25mm以下である



・車体の外周より外にハミ出さない



・高さが基準以内である(運転者の頭部位置より後ろは70mm、前なら40mm)



となります。



よく見るとどの製品も、高さが70mm以下に収まるように作られているんですね。

後付けする際には念のため、ボディ面から70mmの範囲に収まるかを確認しておきましょう。

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