この記事をまとめると
■京都ではBEVのタクシーが多く走るようになってきた■東京では営業範囲が広いのでBEVのタクシーは普及していない
■韓国や中国のBEVメーカーは、タクシー採用という実績で販路拡大を狙っている
じわじわとタクシー業界でもBEVが広まっている
京都ではBEV(バッテリー電気自動車)のタクシーが多く走っている。京都は国際観光都市であり、神社仏閣なども多く、日本を訪れるインバウンド(訪日外国人旅行者)なら必ずといっていいほど訪れる場所ともいえる。
1997年には京都にてCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が開催され、温室効果ガスの削減目標などが記された京都議定書が採択された場所でもあるのだ。
「京都 EVタクシー」と画像検索すると、日産サクラ、ヒョンデ・アイオニック5、BYD e6など複数の車両を検索することができた。ちなみに京都のとある大手タクシー事業者では、2025年までに全車両をBEV化する予定とのことである。
顔ぶれに日本車が少ないことはあえて触れないが、京都は盆地であり寒暖差の激しい地域でもあるので、BEVをタクシーというタイトな用途で使うことで、ある意味“実証実験”的な意味合いもあって、ほかの大都市より積極的にBEVタクシーが導入されているようである。また、盆地ということもあり、東京や大阪のようにロング(長距離利用)客もそれほど多くないというタクシーニーズも、実証実験の場としてはふさわしいのではないかともされている。

BEVタクシー導入で気になるのは、やはりお客の目的地が遠隔地となる場合の電気の消費量となるだろう。つまり、お客を乗せて目的地まで行ったはいいが充電残量が少なくなり戻ってくることができなくなるのではないかということ。これは、BEVの性能自体は日進月歩で進んでいるし、充電ステーションなどのインフラ整備が進めばある程度は解決するだろう。
過疎地域こそBEVのタクシーが大活躍する!?
インドネシアでは数年前からBYD製のBEVタクシーを最大手の事業者が導入している。導入当初は空港から40分ほどかかる振興開発都市までは「このタクシーでは無理だ」と断られることもあったが、今年、筆者が利用するとすんなり乗せてくれた。つまり、性能うんぬんではなく、乗務員自身が扱いに慣れるまでには、実際にどこまでなら行って帰ってこられるかなど、手に馴染ませる期間が必要なのだなと感じた。

もちろん、東京などでもBEVタクシーは走っているが、全体の保有台数に比べればわずかとなっているほか、BEVタクシーを扱う業者の移動範囲は23区内と三鷹市、武蔵野市とそもそも営業圏内が広大。
日本のタクシーはそもそも燃料がLPガスであることが大半であり、タクシー乗務員は深夜割増が始まる前にLPガスを満タンにし、ロング客に備えていた。LPガスの充填場所、つまりガススタンドはそれぞれの事業者で指定されており、たとえば出先でLPガスの残量が少なく急遽充填となると、かなり面倒になるそうだ。ましてや深夜なら、営業していない可能性もある。

このようなこともあり、BEVになっても「充電量が少なくなったら……」という心配も余計にしてしまうのかもしれない。
その意味でも、京都でいまBEVタクシーが積極的に導入されている背景は、車両供給している韓国や中国系BEVのインポーターはその実績をセールスツールとしてさらなる販路拡大に使うこともできるからだろう。いまの日本では、過疎地域ほどLPガススタンドはおろかガソリンスタンドすら空白地帯となっていることが珍しくない。最後の自動車を動かすエネルギーは電気となっていると言っても過言ではない。
公共交通機関からBEV化すれば、バスやタクシーに乗ってまずBEVに馴染んでもらうことができ、結果的に一般乗用車のBEV販路拡大にもつながることになるだろう。