この記事をまとめると
■トラックにも後輪操舵が存在する



■現在、重機トレーラーなどに導入されている



■全体としてはまだ普及率は高くない



トラックにも後輪操舵が存在!

1990年代、乗用車においては前輪だけでなく後輪も操舵して旋回性能やレーンチェンジでの安定性を高める四輪操舵(4WS)という技術がブームになった。日産はHICAS(ハイキャス)、ホンダは機械式のAWSを採用して話題となったものだ。



じつはトラックの世界でも後輪操舵が導入されている。

乗用車に比べて車体やホイールベースが長く小まわりがきかない大型トラックは、通行禁止の区域だけでなく、狭いところはなるべく避けて走るのが常識だ。



トレーラートラックはトラクタ(ヘッド部分の車体)とトレーラーの接合部で折れ曲がるので大型トラックより小まわりがきくといっても、内輪差も凄く大きな差になるのでやはり走るルートは選ばなければならない。さらに、ポールトレーラー(長い建築材料などを運ぶ、全長が調整可能なトレーラー)や海上コンテナを運ぶトレーラーは全長16.5mにもなり、大型トラックがさらにトレーラーを連結するフルトレーラーは全長25mもの長さになるのだ。



フルトレーラーの場合、連結部分で折れ曲がるのはセミトレーラーほどではないから最小回転半径などの小まわり性ではセミトレーラーほどの強みはない。圧倒的な荷物積載能力だけが強みの車両だ。



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しかし、運輸業界の人材不足を解消するためにも、さらなる輸送能力の強化が求められる。それにはいま以上に大型トラックの比率を高めることも必要だ。従来、大型トラックでは行きにくく中型トラックで運んでいた地域も、大型トラックで運ぶことで便数の削減や荷物量の増加に対応できるようになる。



重機トレーラーなどに導入されている

そんな運輸業界の救世主ともなり得るデバイスが後輪操舵なのである。それは多軸ステアリング機構、マルチステアリングトレーラー、ステアリングトレーラーなどと呼ばれている。重機トレーラーなど、一部のトレーラーにはすでに後輪操舵が導入されている。重機は山間部などでの工事に使われるので、狭くてクネクネと折れ曲がる峠道などを通過しなければならないからだろう。



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ステアリングトレーラーが操舵した様子



フルトレーラーにも後輪操舵を導入した例はあるが、全体としてはまだまだ普及率は高くない。ちなみにこの後輪操舵、どのように操作するのかというと、油圧のアクチュエータで転舵させるため前輪と連動させたり、リモコンで独自に操舵量を調整するなどがある。狭い道や現場の入り口に極低速時に利用することがほとんどなので、リモコンでの操作が増えてもドライバーの負担は少ないようだ。



海外では後輪操舵を行う後部(車体後端)に別の運転席を設けている車両もある。これは前後の運転手の息が合わないと難しそうだ。そもそも道路が狭く、交通量の多い日本では2名のドライバーで1台のトラックを操縦するのはかなり難しいことだろう。

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