この記事をまとめると
■ルーマニアで販売されている「ダチア」を紹介■欧州ではフォルクスワーゲン・ゴルフよりも販売台数が多い
■ライバルと比較して破格なのが特徴だ
ルノーグループの一角「ダチア」を知っているか?
ダチア・サンデロといわれて、すぐさまハッチバックのコンパクトカーを思い出せる方は滅多にいないかと。ですが、欧州の売り上げでは、それまで永代横綱かのように君臨していたフォルクスワーゲン・ゴルフをぶち抜くという快挙を成し遂げているのです。相撲のたとえを重ねれば、序二段が幕内に昇進していきなり本場所で優勝しちゃうくらいの出来事! ルーマニアという、これまた日本になじみの薄い国からやってきたサンデロは、たしかに出自も悪くなく、売れまくっているのも納得のモデルだったのです。
そもそも、ダチアというメーカーは、ルーマニアのUAPという自動車メーカーとしてスタートしています。当初はルノーをノックダウン生産していたのですが、1980年代中頃にはルノーと決別。純ルーマニア産のクルマ作りを始めたものの、早くも1990年代初頭には経営が悪化(笑)。
ふたたびルノーの軍門に下ることとなり、それからはお馴染みルノー&日産コラボの恩恵に授かり、ルーマニア国内はもちろん、東欧諸国やフランス、ドイツ、スペインといった西欧のクルマ好き国家にも輸出するというなかなかのやり手メーカー。

販売網だけでなく、クルマ作りについてもダチアは抜け目がありません。たとえば、2004年に発売した4ドアセダン「ロガン」は、ルノーのシャシーやコンポーネンツを巧みに切った貼ったしたもので、その狙いは徹底したコスト削減でした。東欧向けにエアバッグなどの安全装備を一部省いたとはいえ、当時6000ユーロ(およそ78万円)という値段は当のルノーが一番驚いたといわれています。

となると、ゴルフを駆逐してしまったサンデロも「東側クオリティでお安く作られてるんでしょ」となめてかかりがち(笑)ですが、安いだけで横綱をやっつけるのは到底無理。ダチアに負けず劣らず安価なクルマを作るメーカーは少なくありませんからね。
恐ろしいほど破格の価格設定!
では、サンデロの優れたポイントはというと、6速MT(ヨーロッパの廉価モデルは5速MTが標準的)をはじめ、オートエアコン、アイドルストップ、ヒルスタートアシスト、さらにはキーレス機能にエコモードなどなど、クラスをふたつくらい超えた充実装備にほかなりません。
これで1万7000ユーロ(およそ267万円)程度なんですが、ヤリスは2倍の3万ユーロ超え、VWポロにしても2万7000ユーロと1万ユーロも高いわけです。これはちょっと勝負にならないくらいのアドバンテージといえるでしょう。

また、車体各部やインテリアのしつらえも仕上がりがいいそうで、ちょっと前の韓国車みたいな「安っぽさやボロっぽい雰囲気」はまったく感じられないとのこと。
デザインだってお世辞にもスタイリッシュとはいえないものの、このクラスとしては及第点。だいたい、コンパクトクラスでスタイルにいちゃもんをつけるユーザーもさほど多くはいないでしょう。

お手頃で使い勝手のいいサンデロ、これだけでもダチアは評価されるべきでしょうが、じつは環境問題にも真摯に取り組んでいます。サンデロは、日本でいうレギュラーガソリンで走る設定なんですが、バイオエタノール混合燃料(E10/E5)も使用可能! 一般的なガソリンよりもいくらか値段も安いそうなので、良心的メーカーといっても過言ではないでしょう。
ただし、混合燃料の燃費はガソリンに比べ悪化傾向にあることも事実なので、ここの判断はわかれるところかもしれません。
2020年にフルモデルチェンジがなされ、3代目となったサンデロ。日産のCMFシャシーを用いていますから、国産でいえばノートのような雰囲気でしょうか。搭載エンジンは1リッター直列3気筒NAとターボ、そしてバイオフューエル仕様の3タイプが用意されています。
また、SUVライクな派生モデル「サンデロ・ステップウェイ」が加わったことも大きなアピールとなったはず。

初代サンデロからグイグイと商品力をアップしてきたダチアですが、これは本家ルノーのプレミアム路線への舵取りも無関係ではないでしょう。これまでルノーのボトムラインを購入していた顧客を、これからはダチアが取り込んでいくという狙いは、ゴルフの売り上げを追い越した時点でコンプリートできているのではないでしょうか。
シュコダやセアト、あるいは欧州に上陸している韓国メーカーはもとより、日本車もうかうかしていられないこと、確かなようです。