この記事をまとめると
■1月の中旬にカスタムカーイベントの東京オートサロンが開催された



■「ローハン・メタルインパラ」にスポットを当てた



■出展したのは「ROHAN IZAWA ART DESIGN」



「エングレービング」という手法が用いられている

オートサロン会場では、大きなメーカーブースのなかでコンパニオンを従えて多数のスポットライトを浴びて華やかに展示されている車両が主役級に人目を引いていましたが、それとは違って、本来の意味でスポットライトを反射してピカピカに輝きを放っていた車両がありました。



それがこの「ROHAN IZAWA ART DESIGN」の「ローハン・メタルインパラ」です。この車両は2019年の東京オートサロンに初出展されて受賞した後、いろんなイベントで賞を取っているので、知っているという人もいるかも知れませんが、改めて紹介してみたいと思います。



その周囲とは異なる雰囲気を放つこのインパラは、クルマと言うより彫刻を施された工芸品という印象でした。



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外装はボディ面だけでなく、ヘッドライトのカバー、グリル、バンパー、さらには内装のダッシュボードに至るまで、立体的な彫刻表現の「エングレービング」という手法で仕上げられています。



この手法をカンタンに説明すると、直線的な部分は塗膜の段差で立体的な段差を作っています。これだけでもかなりの手間を要する作業ですが、さらに唐草模様が描かれた部分は、線や点のひとつひとつを「エングレーバー」や「リューター」という彫刻用の専用工具を駆使して掘られているんです。



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「ローハン・メタルインパラ」のヘッドライト周辺



その表面の彫刻処理だけでもゆうに1年以上の時間が掛かっているそうです。まさに気が遠くなるような作業の積み重ねで出来上がっている渾身の作品というわけです。たとえば、模様を車両に配置する下書きの段階だけでも1週間くらいは掛かるのではないかと想像できます。



最大のポイントは「IZメタル」

ちなみにボンネットの裏側の放射状の波模様は「エングレービング」とは違う「グラインダータトゥ」と呼ばれる手法によるものです。こちらはその名の通りにディスクグラインダーに専用のブラシや砥石を装着して、フリーハンドで金属表面に模様を描いていくもの。適当に描いているようで、実際は施工者のセンスが現れる部分です。



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「ローハン・メタルインパラ」のボンネット



そしてこのカスタムの最大のポイントとなるのが、開発者の伊澤氏の名前が入った「IZメタル」という塗料です。



一般的なメッキは電解反応を使用するため金属にしか施行できないのが難点でしたが、メタル調の塗装の出現で、自動車の塗装面などの非金属の表面にも、メッキのように輝く塗装ができるようになりました。



この塗装にはいくつか種類があります。輝きの表現に優れる本物の金属素材を使った物をざっくり分けると、銀(Ag)を使ったものとアルミ(Al)の2種になります。



輝き具合を追求すると銀を使った物のほうが性能はいいと言われていますが、退色して黄ばんでしまうという欠点もあるようです。



この「IZメタル」はアルミを使った塗料とのことで、自動車やオートバイに施すことを踏まえて耐久性を重視して開発したそうです。そのうえで、銀に迫る輝き性能を求めて数年かけて調合の試行錯誤をおこない、2019年にようやく発売にこぎ着けたとのこと。



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「ローハン・メタルインパラ」のリヤスタイリング



この「メタルインパラ」は2018年に製作された車輌ですが、それから5年経った今でも変わらずシルバーの輝きを見せていて、耐久性の高さをアピールしていました。



エングレービングという手法は、アクセサリーやオートバイの金属パーツなどに施す手法として古くから使われていたものですが、タガネで彫っていくことから自動車のボディに施すには少し細かく、全体のバランスを取るのが難点でした。しかしこのメタル調塗料の出現で、下地の彫刻手法の自由度が高くなり、自動車のボディに施すのに丁度良い解像度のエングレービングが可能になったようです。



ちなみにエンジンもフルオーバーホールされて、すべての金属部分はポリッシュか再メッキで仕上げられていて、こちらもかなりのピカピカ具合を発していましたが、この車両のなかにおいては脇役のような存在感だったのも印象的でした。

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