この記事をまとめると
■フランスのパリでは2024年9月からパリ地域外から来たSUVの駐車料金が3倍になる



■欧州の環境保護団体からはICE車は敵視されており、とくにSUVがその標的になっている



■世界中で起きている「環境に優しいクルマ論争」は泥沼化しつつある



世界ではクルマに対する環境規制が白熱

フランス・パリ市は2024年2月に「パリ市内においてSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の駐車料金の値上げを問う住民投票」を行い、その結果、賛成が54.55%となり2024年9月より市内中心部ではSUVの駐車料金が3倍になることが決定した。ただし、パリ市民などは適用免除となるので、パリ地域以外からの来訪者車両に限って適用されるとのことである。



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2019年、ドイツのフランクフルト市開催最後のIAA(このときは開催地がフランクフルトショーだったので、通称フランクフルトショー)取材のためにフランクフルト市を訪れると、駅前では環境保護団体と思える若い人たちがテントを張って「クルマは有害」といったアピールを行っていたほか、ショー会場入口付近でも環境保護団体が活動を行っていた。

さらに、地元ニュースを見ていると、環境保護団体がより地球環境に有害として某自動車メーカーを訪れ、SUVの生産中止に関する要望書を手渡したと報じていた。



パリではSUVの駐車料金が3倍……ってBEVも対象! いま世界的にクルマの環境論争が泥沼化している
2019年のフランクフルトショー



また最近、無料動画配信サイトを見ていると、ドイツと思われる地域でハイパフォーマンススポーツモデルを環境保護団体が取り囲むといった騒ぎの動画がアップされていた。とくに欧州では自動車、なかでもICE(内燃機関)車は一部の人からは完全に悪者扱いされており、その最たるものがSUVとなっている。



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欧州メーカーのSUV



今回のパリ市内の駐車料金の報道を見ていると、「SUVは大きいし、車両重量も重い」といったことが今回の動きの背景にあるとしている。欧州では前のめりにも見える勢いでBEV(バッテリー電気自動車)が普及しようとしているが、そのBEVでは電池容量の確保などでボディサイズが大きく、バッテリーを搭載することで車重が2トン以上となる傾向にある。そしてこれらの車両は、いずれも2トン以上となるので、BEVであろうとも今回のパリの駐車料金対策の対象となる。この辺りは公平性が保たれているともいえよう。



政治家のいう「環境に優しいクルマ」ってナニ?

日本では車両重量税というものがある。



道路整備に活用する目的で導入されたもので、道路により負担をかけるということで車両重量の重いクルマほど課税額が高くなる仕組みだ。しかし、エコカーで免税対象車だと重量税も非課税となる。重量税については、地球環境への負荷などは関係のない税金だと筆者は認識しており、この認識が正しければ、同クラスICE車より全般的に車両重量が重くなるBEVが非課税となることにはしっくりこないものを感じる。



道路への負担を考えれば車重の重たいBEVが増えれば負担は大きくなり、再舗装などの整備費用の負担を課税対象となるICE車ユーザーが負担することになる。

パリの事例に比べるといささか不公平感を抱くものとなっている。



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自動車税の内訳



筆者の私見では、欧州でさえSUVの人気が高くなっているのだが、それ自体に抵抗を示す人も多いように感じる。今日の欧州メーカーにおける、前のめりにも見えるBEV普及に対する動きは、日本メーカーの優れたハイブリッドシステムに、同じハイブリッド技術で対抗することが困難であるいわれて久しい。



SUVでもプレミアムブランドではそれほど目立っていないが、欧州の量販ブランド、とくにフレンチブランドでは、好みもあるだろうがクロスオーバーSUVのラインアップは苦手のようにも見える。



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プジョー407



また、BEVに関しても存在感がやや希薄なようにも見える。今回のパリ市の措置に政治的なものが大きく作用したかは定かではないが、「オシャレなパリにSUVは似合わない」といった保守派の意見などもあったのかもしれないが、筆者はさまざまな政治的臭いを感じている。



パリ市の今回の措置を見れば、軽量でコンパクトなBEVが理想的にも見えるが、そこのジャンルは中国メーカーが得意としており、パリ市では新たな規制を設ける必要が出てくるかもしれない。



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パリ市街地のイメージ



欧州における「環境に優しいクルマ論争」はいよいよ出口の見えない迷路に迷い込んでいるように、今回のパリの動きを見ても強く感じる。

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