この記事をまとめると
■ボルボにとって初のFFモデルとなった480はその開発にルノーやロータスやポルシェまでもが参画していた



■「8」という数字はスペシャリティクーペを表しており、従来のボルボデザインとは一線を画していた



■ボルボ480はボルボがもつオシャレDNAの体現と次世代モデルへの継承という役割を果たした



スタイリングにボルボらしさは一切なし

ボルボ480を初めて見た方には「ホンダのコンセプトカーじゃないの?」なんて思われるかもしれません。が、ボルボにとって初のFF車だったばかりか、480はルノー、ロータス、果てはポルシェまでもが参画した意欲的で画期的なモデルだったのです。しかも、ご先祖様のDNAを引き継ぎつつ、現代のボルボへとしっかり継承させているという立ち位置とくれば、北欧マニアならずとも興味をひかれるのではないでしょうか。



480のデビューは1986年のジュネーブショー。2ドアクーペと呼ぶにはやけにルーフが長く、ボルボのブースにあるわりに「リトラクタブルライト」だし、よくよく見れば「FF」パッケージとされていて、FR至上主義だったボルボ(雪道での運動性能はFRが適していると長年主張し続けていましたからね)のモデルとはにわかに信じがたい内容だったかと。



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それもそのはず、開発の主導はイエテボリのボルボ本社でしたが、実際にクルマを作ったのは1972年に買収しておいたオランダのDAF(ファン・ドールネ)。当時のボルボは主に北米に向けたコンパクトなモデルを欲していて、それを生産規模の適していたDAFに託したというのが主な理由とされています。



ところで、察しのいい方なら車名に8が含まれていることで、ボルボのラインアップにおける「スペシャリティクーペ」に設定されていることがおわかりかと。元をただせば1960年代に同社が誇ったシューティングブレークというか、スポーティクーペのP1800の8だそうで、480以外にもベルトーネが製造を担った780といったモデルもありました。

ちなみに、それ以前のベルトーネ製クーペにはボルボ262Cなんてチョップトップ風モデルもありました。



むろん、8というイニシャルをもつからにはP1800のロングルーフやリヤのグラスハッチといったキャラを踏襲。これは480からあとのC30へも引き継がれていると見ることもできそうです。



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ボルボ480のリヤ



また、リトラクタブルヘッドライトの採用で得たのは、空気抵抗係数Cd値0.336という性能だけでなく、当時の北米でボクシーと揶揄されていた(BOXY=箱っぽい、すなわち不格好)ボルボのイメージを刷新することにも貢献したかもしれません。



そして、同社初のFFパッケージですが、これは当時の提携先だったルノーの存在が理由のひとつに違いありません。ルノー製1721ccの4気筒SOHCエンジンだけでなく、前輪駆動ユニットごと480に搭載されています。



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ボルボ480のエンジンルーム



そして、足まわりがストラット&パナールロッドというサスペンションと聞けば、そのセッティングはロータスのお家芸ともいえるもの。FF初心者のボルボは迷わずロータスにセットアップを依頼したのですが、「雪道でもガシガシいける足にしてほしい」といったとかいわなかったとか(笑)。



109馬力の出力に対し、車重は1050kgとされていましたから、動的性能もさほどガッカリするようなものでもなかったかと。



ポルシェの協力を得てターボ化!

さらに、ボルボははっちゃけたアイディアを480に投入しました。1988年にはポルシェがチューニングしたインタークーラー付きターボを搭載した480ターボを発売。わずか15馬力アップの120馬力とはいえ、それまでのズングリした加速に比べれば雲泥の差。



アメリカの自動車専門誌では「!」マークの連続で高評価を受けたのでした。



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ボルボ480ターボの走行写真



この480ターボは日本にも正式導入され、300台が売り切れたとのこと。価格は397万5000円と、当時のスペシャリティ輸入車としてはなかなかにリーズナブルだった印象があります。



ところで、スペシャリティの8はインテリアのデザインやクリエイティブにもいかんなく発揮されています。たとえば、ドライバーオリエンテッドなインパネや、リヤシートも独立した4人乗りとするなど、ボディスタイルとマッチしたクオリティが特徴かと。



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ボルボ480ターボのインパネまわり



もちろん、当時のボルボが声高に主張した360度の視界も確保されており、比較的スラントしたフロントスクリーンを考えれば大したもの。

ボルボらしい安全至上主義が垣間見えるポイントといえるでしょう。



残念ながら、480はアメリカの景気が減速したために、ボルボの思惑通りウハウハ売れたわけではなかった様子。ですが、前述のとおりボルボがもつオシャレDNAの体現、そして次世代モデルへの継承という役割は存分に果たしたといえるでしょう。



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ボルボ480のサイド



ちょっと古い輸入車としてそれほど注目されていないのか、中古市場でも高騰しているわけでもなさそうです。北欧マニア、ボルボファンは探してみるのも一興ではないでしょうか。