この記事をまとめると
■デコトラはデコレーションされたトラックのことを指す略語



■1970年代の黎明期からトラック以外の車両を飾った猛者たちもいた



■デコトラの変わり種を紹介する



トラック以外の車両をデコトラ風に

自動車好きの人たちにはご存じのことだろうが、デコトラとはデコレーションされたトラックのことを指す略語である。荷物を運ぶために開発されたトラックを派手に飾り立てることが文化の基本となっているのだが、デコトラの黎明期ともいえる1970年代から意外な車両を飾り立てた猛者たちが存在した。それらはもちろん(ベース車両が)トラックではないため、本来であればデコトラと呼ぶには適さないのかもしれない。



しかし、デコトラとは日本で生まれた独自の文化である。それゆえに初期のころから存在してきたものに対しては、本物のデコトラである、という認識で問題ないだろう。今回は、長きにわたるデコトラ界において活躍してきた、変わり種のデコトラたちを紹介しよう。



デコブルーバードにデコミラにデコキャラバン! デコトラ乗りさ...の画像はこちら >>



まずは、乗用車をベースにしたものから。なかでも1970年代に活躍した「港の陽子」が有名で、ベース車はなんと日産の510ブルーバードであった。トラック顔負けのデコレーションが施されていた同車は、現代でもマニアたちの間で語り草となっている。



デコブルーバードにデコミラにデコキャラバン! デコトラ乗りさえも震撼させた「デコ車」たち
デコトラ風の510ブルーバード(港の陽子)



さらには、フォルクスワーゲン・ビートルを飾った「寿丸」も存在した。外国車であり流線型のフォルムを持つワーゲンは、お世辞にも飾りが似合うベース車であるとは言えない。デコトラとは無縁の個体であるだけに、文字通り唯一無二の存在感を放っていたのである。



1980年代にはいると、ダイハツ・ミラをベースにした「こつぶ丸」が後に続いた。さらにダイハツ・ミラのウォークスルーバンを飾った「マリオネット」もデコトラ界を震撼させた。



デコブルーバードにデコミラにデコキャラバン! デコトラ乗りさえも震撼させた「デコ車」たち
デコトラ風のダイハツ・ミラ(こつぶ丸)



令和の時代には旧車である日産Y30セドリックのワゴンをベースにした「雷雷号」も生み出された。

そんな同車を製作したオーナーの起爆剤となったのは、先述の「港の陽子」の存在だったのである。



デコトラ界に大きな影響を与えた1台とは?

日産のE20キャラバンを見事に飾り立てた「デコバン」も、デコトラ界に大きな影響を与えた1台。1970年代に生み出された同車のインパクトは凄まじく、ワンボックスを飾るというスタイルをデコトラ界に定着させたのだ。やがて1980年代にはいるとE23キャラバンの「らいらっく」や「サスケ丸」という過激なデコバンが、あとに続いた。



デコブルーバードにデコミラにデコキャラバン! デコトラ乗りさえも震撼させた「デコ車」たち
デコトラ風のE23キャラバン(らいらっく)



そして、1970年代には三菱ジープを飾った「デコジープ」も大きな話題となった。幌には本物の(聖徳太子柄の)一万円札を飾るという独創的なスタイルで、見る者を驚かせたのである。



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デコトラ風の三菱ジープ(デコジープ)



1980年代では、自動車ではなくトラクターを飾った者までもが現れた。飾りも本格的であったのだが、実際にトラクターとして活躍していたかどうかは不明である。兎にも角にも、その独自のスタイルで注目を集めたのだ。



このように振り返ってみると、個性的な車両のほとんどが1970年代と1980年代であったことに気づかされる。その時代は個性が尊重されていたため、独自の路線を目指した猛者が多かったのだろう。



デコトラ本来の持ち味とは、スバリ個性であった。

それが1990年代以降では流行(なんらかのスタイル)というものが芽生えてしまったことで、似通った飾りのデコトラが増えてしまったのである。それと同時に、デコトラブームが大きな盛り上がりを見せることはなくなったと感じるのは、おそらく筆者だけではないだろう。



デコブルーバードにデコミラにデコキャラバン! デコトラ乗りさえも震撼させた「デコ車」たち
デコトラ風のE23キャラバン(サスケ丸)



個性がない改造車の世界は、当然のごとく発展しない。右を見ても左を見ても同じような車両しかいなくなってしまえば、誰も関心など示さなくなるだろう。そんなデコトラ界を再び活性化させるべく、個性が持つ重要性をいま一度再確認したい。そして、当時のユニークな作品を眺めながら、デコトラ界がより盛り上がってくれることを祈る次第である。

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