この記事をまとめると
■積み下ろしの時間を短縮することで輸送効率は高まる■トラックのウイングボディは積み下ろしなどの作業時間短縮のために生まれた
■ウイングボディの仕組みや歴史について解説する
最初に作ったのは架装メーカー大手の日本フルハーフ
トラックは毎日たくさんの荷物を運ぶ。そのため、短時間に積み下ろしすることができれば輸送効率を高めることにつながる。移動のための時間を削ることは難しいし、渋滞などで増えてしまうことがある。
配達先ごとにパレットでまとめて積み下ろしするためには平ボディならアオリを下げればいいが、パネルバンのような荷室が箱状のボディでは、最後部の扉を開けてフォークリフトが内部まで進入して積み下ろしをする必要がある。そのため、ボディの側面をガバッと開くようにしたのがウイングボディだ。平ボディのアオリの上に屋根と一体で開くパネルを備えることで、上下分割式のワイドな開口を実現している。
これを一番最初に作ったのが架装メーカー大手の日本フルハーフで、1970年にはパイプフレームと幌によるウイングトレーラーを発売、1993年にはアルミパネルのウイング車を発売した。
なぜウイングボディと呼ぶのかは、ボディを持ち上げたときの姿がまるで鳥が翼を持ち上げた状態に似ているから。斜めから見れば、鳥が翼を広げる前の持ち上げた状態に似ているといわれれば確かに納得できるシルエットをしている。ウイングボディのルーフとサイドパネルはボディの前後の四角いフレーム(前側はパネルも組み込まれる)で支えているだけなので、剛性はそれほど高くなく、以前は高速道路走行中にギシギシ、バラバラと異音を立てながら走行していくウイングボディ車も珍しくなかった。
最近はボディ剛性を高めるなどの改良で、そうした難点は解消されているようだ。ウイングの開閉は電動油圧や電動モーターで直接行うが、小型トラックなどはウインチを使った手動のものも存在する。ルーフ部分の中央にヒンジとシリンダーを備えてウイングをもち上げる仕組みだ。
冷蔵/冷凍車のウイングボディ仕様も登場
またその構造上、保温性を高めるのも難しく、当初はウイング車が運べるのは常温の荷物だけだったが、架装メーカーの技術革新によって冷蔵/冷凍車のウイングボディ仕様も登場している。このウイングボディを生産して、利用しているのは日本ぐらいなので、日本の物流システムの高度さとトラック架装メーカーの技術力があるからこそ確立しているものといえる。
なお、ウイングボディを断熱仕様にしても冷凍機を搭載していない、保温機能を強化した仕様もあるし、近年の気候変動によって、常温の荷物でも夏場では荷室内の温度上昇が著しいため、断熱仕様のボディになっていないウイング車にも冷凍機を取り付けた仕様もあるようだ。

バース(ホームにシャッターを設けている構造)と呼ばれる物流倉庫の積み下ろしエリアは、たくさんのトラックが同時に積み下ろしできるように、トラックを後ろからまっすぐバースの開口部に駐車して、ボディ後端の扉から荷物を出し入れする。これはウイングボディよりも1台あたりの積み下ろしでは時間がかかっても、何台ものトラックの積み下ろしを同時に行えることから、物流拠点ではバース方式が増えている。
ウイングボディは真横から積み下ろしできる強みを活かしたいところだが、バースでは多くのトラックの積み下ろしを捌くために後ろからつける必要があるため、そこでは強みを発揮できないのだ。しかし、荷積み荷下ろしのどちらかでウイングボディの強みを発揮できる場合も少なくないので、ウイングボディが活躍するシーンはいまだに多い。さらに、後部扉にパワーゲートを組み合わせて積み下ろしを効率化したボディもあるし、高さギリギリまで荷物を積むために、積み下ろしのときにはウイングとなるルーフとパネルももち上げる機構を備えたボディも登場しているのだ。