この記事をまとめると
■大型トラックは格納式のサイドミラーを装備している



■走行中トラックドライバーがあえてサイドミラーをたたむことがある



■駐車時以外にトラックドライバーがサイドミラーを格納する理由を解説



走行中にサイドミラーを格納!?

いまや格納式のサイドミラーが当たり前の装備となった現代の自動車社会。それは大型トラックも同様で、助手席側のサイドミラーは運転席からスイッチひとつで電動格納できるようになっているのが一般的である。その最たる活用法は、もちろん駐車時。

高速道路のパーキングエリアなどでは助手席側のサイドミラーが大きく張り出してしまい、かつ夜間になると周囲の車両からは確認しづらい。そのため、サイドミラーを格納するのが暗黙のルールであり、マナーとなっているのだ。



しかし、格納ミラーの役割はそれだけではない。大型トラックのドライバーたちは、1日の大半を運転業務に徹している。そのなかで、便利な活用法が生み出されたのだ。これらは格納ミラーを開発した自動車メーカーサイドの意向にはそぐわないものなのかもしれないが、元大型トラックのドライバーであった筆者自身が使っていた格納ミラーの活用法を、いくつかご紹介させていただこう。



走行中に「電動サイドミラー」を畳んだり開いたり! 乗用車乗り...の画像はこちら >>



まずは、運転中45度ほどの角度から斜め合流をする場合。運転席側の道路に入る場合は目視で本線の確認ができるのだが、自分から見て左側にある道路に合流や流入をしようとするとき、後方が見えないトラックの場合は目視による確認ができない。左側の本線道路を走行している車両すらサイドミラーに映らないため、危険が山盛りなのだ。そのときにサイドミラーを格納し、起こすという動作を行なう。



車体方向内側に倒れる乗用車とは異なり、大型や中型トラックの助手席側サイドミラーはフロントガラス方向の外側に向けて倒れる構造となっている。そのため、わずかな時間ではあるが、格納中のサイドミラーに左側の本線道路が映し出されるのだ。

それを必要に応じて何度か繰り返すことで、安全確認ができるというわけだ。ちなみに、むしろそうせざるをえないような場所は、そもそもトラック泣かせの欠陥道路であるといえるのだが。



峠でサイドミラーをたたむことも

ふたつ目は、右折レーンにいるとき。右折レーンが存在する交差点は、全国に山ほど存在する。そのような道路は大型トラックがたくさん走行しているのだが、右折レーンは車線の幅が狭かったりもする。そのため直進して対向する大型トラックは速度を落とすか、車体を多少左に寄せなければならないといった危険な状況が生じるのだ。それを配慮して、右折レーンにいる大型トラックはサイドミラーを格納するのである。



大型トラック同士はサイドミラーの高さが同じであるため、接触する危険性が高い。しかし右折レーンの大型トラックがサイドミラーを格納することで直進する大型トラックの通行を妨げることなく、自車の安全も確保できる。そして信号が変わって発車する直前にサイドミラーを起こし、安全確認をしたうえで右折を開始するというのが、マナーのいいプロドライバーの走り方である。



3つ目は、曲がりくねった峠道を走行するとき。そのような道路には、草や木の枝が覆い茂っていることが多い。

それらに接触してしまうとサイドミラーが破損してしまうため、格納して走るのだ。そのような道路では左側の後方から追い抜きをかけてくる自家用車やバイクが存在しないため、助手席側のサイドミラーを格納しても問題はない。むしろ木の枝を避けるという動作が不要になるため、センターラインを割らずに走行しやすくなるのである。



走行中に「電動サイドミラー」を畳んだり開いたり! 乗用車乗りが知らない大型トラックの「サイドミラー」を使ったワザ3つ
サイドミラーを格納するトラック



ここまで挙げたすべての技においては、もちろん自車の車両感覚に優れていなければできない芸当である。いずれも数10cmをめぐる攻防ゆえ、不慣れなビギナードライバーにはお勧めできないが、このような走り方をしている大型トラックは意外にも多い。右側から斜め合流をしてくる大型トラック、右折レーンで待っている大型トラック、草木が覆い茂るような峠道を走る大型トラックを見かけた場合には、ぜひともサイドミラーの状態を確認してほしい。乗用車のドライバーにはわからないような、プロドライバーならではの苦労や配慮に気付くことができるはずだ。

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