この記事をまとめると
■いま、昭和レトロブームとともにボルボ240エステートが注目されている



■ほのぼのとしたシーンを演出できるとしてTVやCMに登場したのがボルボ240エステート再ブレークのきっかけ



■150万~230万円ほどで入手可能だが1991年式以降、可能であれば1993年モデルの購入がおすすめ



武骨カッコいいスタイリングがカタカナ商売のセレブに大人気

いま、昭和、レトロブームとともに再注目されているネオクラシックカーの1台が、いまからちょうど50年前の1974年に登場し、1993年まで販売された長寿モデルであるスウェーデンのボルボ240、それも1982年に追加されたワゴン版のエステートだ。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブーム...の画像はこちら >>



1980年代から1990年代にかけて、ボルボは安全性を最大のアピールポイントとしていて、事故を起こしたボルボユーザーが、その見た目からもわかる”空飛ぶレンガ”と称された頑丈さ、高い安全性能から次もボルボに乗り換える……といった神話も生まれたほど。何しろ1991年の米国自動車保険協会の調査で、もっとも安全なクルマに選ばれたのが240エステートだったのである。



”四角いワゴン”のエステートは、その安全性、信頼性はもちろんのこと、ちょっと武骨カッコいいスタイリング、定評ある実用性もあって、カメラマン、デザイナー、サーファー、カタカナ商売のセレブにも愛され、安全でオシャレな人とは違う1台、いや、もっと正確にいえば、メルセデス・ベンツ、BMW、サーブなどとも違う清潔感ある選択として、ある種のステイタス、女子ウケグルマ!? として一世風靡したのである。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった
ボルボ240エステートとウインドサーファー



すでに1990年にはエアバッグが、1991年にABSが装備され、神話ではない現実的な安全性をさらに高めていったのだ。当時、多くの自動車専門家、モータージャーナリストから絶賛されていたことはいうまでもない。



もちろん、エステートはカメラマン、サーファー、そして当時の先駆者的アウトドア派に愛されたラゲッジルームの使い勝手も超優秀だった。後席を倒せば広大なスペースが出現して、クルマ移動で考えうるほとんどの荷物を飲み込むことができたのである。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった
マリンスポーツギヤを満載したボルボ240エステート



そしてなんといっても、四角い当時からしてもレトロなエクステリアデザインは、メルセデス・ベンツのTE(W123ステーションワゴン)モデルなどとは違う個性、存在感を都会、リゾート地といったあらゆる場面で発揮。

走行性はおおらかなものであったが、ロングドライブでの疲れにくさ、そして絶大なる安心感もまた、愛用者を唸らせたものだった。



中古車として入手するなら絶対に譲れない条件がある

そんなボルボ240エステートは、販売を帝人ボルボからボルボ・カーズ・ジャパンへと引き継がれ、1993年に生産終了、850シリーズに引き継がれることになったのだが、それがいま、どうして再注目を浴びているのか? 無論、冒頭に記した昭和、レトロブームもあるだろうが、TVやCMへの露出も理由のひとつといっていい。いまのクルマにない四角さ、ネオクラシック感によって、ほのぼのとしたシーンを演出できるからだろう。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった
ボルボ240エステートで買い物するファミリー



では、240誕生から50年を経た令和のいま、ボルボ240エステートの中古車を指名買いで所有するユーザーが増えているのは何故か。その理由として挙げられるのが、昨今のレトロブームで映えるエクステリアデザインであることはいうまでもないが、扱いやすい全長4790×全幅1720×全高1480mm、ホイールベース2650mmのサイズ、そしてもうひとつの大きなポイントが、ネオクラシックカーブームとは無関係に、日本中に240エステートの販売をメインとした信頼できるボルボの旧車専門店が存在し、かなり古いクルマであるにもかかわらず、手を出しやすいこともあるはずだ。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった
ボルボ240エステートのサイドビュー



つい最近では、「能登半島地震」を受け、ボルボ専門店が「240 SURVIVAL」と名付けられた、車中泊×防災をコンセプトにしたカスタマイズカーを発表、パーツの販売を開始したほどで、ただ眺め、そーっと走らせるネオクラシックカーとは違う超実用性を、令和に蘇らせているぐらい、その人気は衰えていないということになる。



中古車としては150万~230万円ぐらいで流通しているのだが、ひとつ、中古車選びでは注意点がある。手に入れるべきは1991年式以降が鉄則で、理想は1993年式の最終モデル。その理由はエアコンの冷媒(1992年までは廃止されたフロンガス、1993年に現在でも使われるR134aに変更)にあり、1990年式以前はエアコンのレトロフィットに多額の費用がかかり、なおかつエアコンの利きも期待できないからだという。



50年前に生まれた四角いワゴンがいま話題! 昭和レトロブームと共に「ボルボ240エステート」の人気が急上昇中だった
ボルボ240エステートクラシックのフロントスタイリング



決定的なのは、登場が50年も前のクルマだけに、パーツの入手についてだ。1991年式以降であればボルボ専門店でのパーツの入手は比較的しやすいらしいのだが、それ以前だとかなり難しいようなのだ。樹脂パーツのひび割れ、エンジンの冷却機構についても要チェックで、それらを含めてコンディションをしっかりと見ているボルボの専門店での購入がより安心だろう。

いい方を変えれば、比較的程度がよく、その後のメンテナンスも任せられる240エステートのほとんどは、ボルボ専門店にあるともいえる。



ある意味、実用性も文句なしのボルボ240エステートは、昭和、レトロブームのいまの時代だからこそ、ひときわ輝いて見える”使える”ネオクラシックカーの代表格といえるのではないだろうか。敏腕CMプランナーやプロデューサーがその普遍的価値に目を付けるのも無理はない。1980~90年代当時、240エステートに憧れつつも、手が届かなかった、しかしいまはネオクラシックカーに出費でき、メンテナンスにもお金をかけられる余裕あるボルボファンが、人とは違うステーションワゴンとして粋に乗りこなすのも納得ではないか。ただし、最新の世界最先端のボルボセーフティ(先進運転支援機能)とは無縁の世代のクルマだから、一段と安全な運転を心がける必要はある。