この記事をまとめると
■新車の価格が上がっている要因のひとつに半導体不足がある■原材料価格や原油価格の上昇が新車価格の上昇に拍車をかけている
■電動化の加速で構成する部品が増えるため新車の価格はさらに上がる
新車価格の値上がりは部品代以外の影響も大きかった
最近、新車の価格が上がっている。少し前のデータだが、経済産業省が2023年5月に自動車産業の生産動態調査を公開している。これは乗用車の価格上昇の要因を探る目的があった。
その上で、新車の納期がモデルによっては半年、または1年以上の長期に渡ることも増えているとして、その要因としてはコロナ禍での半導体不足など部品供給の遅延を挙げている。
確かにコロナ禍では、日系メーカー各社の四半期決算のオンライン会見で、半導体の生産にばらつきがあり、自動車向けでの供給が不安定になっている点を指摘していた。また、コロナ禍で物流が滞ったことに加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって主に船舶輸送での順番待ちが長引いていることも指摘された。

こうしたなか、経済産業省の統計では、2019年以降4年連続で、乗用車の生産台数は減少していることを提示した。その上で、2022年の生産金額が増加している要因として、普通乗用車の単価が上がっている点がわかる。
電動化によってクルマがさらに高くなる可能性
こうした乗用車市場全体を見た場合、単価上昇の背景には価格の高いハイブリッド車のシェアが伸びていることが主な理由であるとみられる。

ただし、ハイブリッド車に限らず、新車価格が上昇していることは確かで、その要因は原材料価格や原油価格の上昇が挙げられる。ここでも、ロシアのウクライナ侵攻による直接的な影響や、それに伴う欧州でのエネルギー政策の転換などが関係している。
また、円安による為替要因によって自動車メーカーの営業利益は上がるが、原材料費に対して円安はマイナス要因になっているともいえる。
そのほか、自動車部品別で見ると、近年は予防安全に関するアセスメントのハードルが上がっていることで、先進運転者支援システム(ADAS)にかかわる部品購入費用がかさんでいる。

そして注目すべきは、オートマチックトランスミッションや電子ブレーキ、そして電動式が主流となってきたパワーステアリングなどの導入コストが上昇している点だ。
今後、電動化がさらに加速すると、新車を構成する部品にもさらなる変化が起こる可能性もある。そうなると、新車販売台数増による量産効果と、新規部品導入コストがどうバランスを保つのか? その上で、新車価格の上昇は止まらないのか?
新車市場の動向を今後、ユーザーはさらに注意深く見守ることになりそうだ。