この記事をまとめると
■海外では日本で販売されていない日本車を見かけることも多い



■海外専売モデルが用意されるのはその国に適したものを販売するためだ



■グローバルモデルであっても日本仕様では細部が変更されていることがほとんど



日本にはないからこそ魅力的に見えることもある

筆者は海外のオートショーへ取材のためよく訪れる。会場へ行くと日本では見ることのできない日本車を見かけることも多い。なかには「こんなモデルが日本にあったら売れるのではないか」と思ってしまうモデルもある。

東南アジアで人気の高い某車が東南アジアにてデビューしたとき、それを見た日本のメディアがこぞって、「日本でもイケるのではないか?」と思ったそうだが、そのモデルのメーカー関係者は、「『日本でも売れそうだから販売すべき』といった報道は控えてほしい」とメディアに伝えたそうだ。



日本では「隣の家の芝生は青く見える」とよくいわれる。自分のものより他人のもののほうがよく見えてしまうことを例えたものだが、日本で販売されている日本車より、海外で販売されている日本にはない日本車のほうがよく見えてしまうという意味でここでは紹介させてもらう。



ただ前出のモデルもコンパクトサイズながら、全幅は1700mmを超えるので結果的に日本国内では3ナンバーサイズとなってしまう。ホンダWR-Vやスズキ・フロンクス(いずれもコンパクトモデルながら全幅は1700mmオーバー)が日本での正式発売前から実車を積極的に見せていたことからも、昔ほどではないものの5ナンバーサイズにこだわる消費者はまだまだ多く、そのような人へ向けての動きだったものと考えている。



よく聞く「海外専売の日本車を国内導入して」の声! パッと見売...の画像はこちら >>



その傾向もあり、たとえば日本国内では全幅1695mmで5ナンバーサイズとなるモデルでも、欧州仕様のトヨタ・ヤリスの全幅は1745mm、インド仕様のスズキ・スイフトの全幅は1735mmとなり、日本でいうところの3ナンバーサイズとなっている。日本国内での量販を考慮し、日本仕様についてはあえて5ナンバーサイズに収められているのである。



トヨタ・カローラセダンやツーリングもグローバルモデルよりも、全幅を狭く(それでも1700mmオーバー)、全長を短くしたモデルが日本国内で販売されている。



よく聞く「海外専売の日本車を国内導入して」の声! パッと見売れそうだけそうはいかない理由とは
トヨタ・カローラツーリング(EU仕様)のフロントまわり



日本市場への配慮ともいえるのだが、とくにツーリングでは国内仕様より欧州販売モデルぐらいのサイズのほうが利便性は高そうだという声が日本国内でもよく聞かれる。



日本車の海外専売モデルが海外専売になっている理由

筆者は南カリフォルニアでレンタカーを借りて運転するのだが、そのときにはトヨタ・カムリサイズぐらいが排気量やボディサイズ的には手ごろで便利に使っている。しかし、日本国内でカムリといえばボディサイズが大きくて、あくまで筆者の私見なのだが、日本国内でもて余してしまう人も多いように見える。



日本よりもUターンする機会も多い南カリフォルニアで「カムリサイズでも小まわりがよくきくなぁ」と思っていても、それはアメリカの道路サイズが大きいからそう感じてしまう部分も大きい。



よく聞く「海外専売の日本車を国内導入して」の声! パッと見売れそうだけそうはいかない理由とは
北米トヨタ・カムリのフロントまわり



日本車でありながら海外専売モデルとなっているのは、やはりそれなりの「訳アリ(あくまで悪い意味ではない)」となっているのであり、海外でよく売れているからといって日本でもよく売れるというわけでもないのである。



たとえば北米市場ではミニバンの代わりともいえるが、3列シートをもつクロスオーバーSUVがファミリーカーの標準となってきている。トヨタ・ハイランダーやホンダ・パイロットという、日本では販売されていないモデルが3列シートをもつクロスオーバーSUVとしてよく売れているが、日本ではそれらのモデルへのニーズは、トヨタ・ノア&ヴォクシー、日産セレナ、ホンダ・ステップワゴンあたりのミニバンが吸収しているので、当然ながら北米ほどの販売は期待できないものと筆者は考える。



よく聞く「海外専売の日本車を国内導入して」の声! パッと見売れそうだけそうはいかない理由とは
北米ホンダ・パイロットのフロントまわり



開発や生産コストを考えれば、世界各国や日本市場も含め「グローバルワン」、つまり共通スペックが望ましいのだが、それこそ世界は広いので結果的に大筋ではグローバルワンとなるが、搭載エンジンなどについても個々の市場で異なることもよくある。



前出のスイフトでは、日本仕様ではガソリンエンジンとガソリンエンジンベースのハイブリッドエンジンを搭載しているが、インドのスイフトではガソリンのみを燃料とするものと、ガソリン+CNG(圧縮天然ガス)となるエンジンの2種類がラインアップされている。



トランスミッションは日本ではMTとCVTが用意されるが、インドではMTとAMT(自動クラッチの2ペダルMT)となっている。CVTのようなセンシティブなものは、クルマをかなり酷使するインドでは適当ではないとの話も聞いており、コストや現地ユーザーの嗜好性なども考慮してAMTが採用されているようである。



よく聞く「海外専売の日本車を国内導入して」の声! パッと見売れそうだけそうはいかない理由とは
スズキ・スイフトの日本仕様のATシフトレバー



日本車なのに海外でのみ販売されていると、ついつい「ないものねだり」のようなものもあり、「いいなぁ」となりがちだが、日本国内で単に売れそうにないという以外の理由もあってラインアップされないのである。



また、グローバルモデルをそのまま日本市場にもち込むのではなく、ボディサイズを変えるなど同じモデルでも、一歩踏み込んで日本の消費者に合わせた専用設計になっているケースもあり、その点では日本以外の国のメーカーより目立つので、そこが日本メーカーならではの細かい配慮と表現することもできるだろう。

編集部おすすめ