この記事をまとめると
■2024年上半期累計販売台数ナンバー1はN-BOXだった■10月単月での新車販売台数ナンバー1は登録車のトヨタ・ヤリスだ
■2024事業年度締め年度末決算セールに向けた動きもそろそろ見られる頃合いだ
10月は新車の売れ行きが落ち込む時期
例年10月は前月となる9月が事業年度締め上半期(4月から9月)末決算セールとなり、活発な新車販売活動が展開されるので、その反動で販売台数の伸び悩み傾向が顕著となる。そして、そんなときこそ車名(通称名)別販売ランキングも少々「動き」が出てくるのである。
「2024事業年度締め上半期累計販売台数ナンバー1」、つまり2024事業年度締め上半期にもっとも売れた新車となったのはホンダN-BOXだった。
N-BOXといえば、2024年9月末に派生モデルとなる「N-BOX JOY」を発売している。2024年10月はN-BOX JOY発売後初めてのフルカウント月となるので、その動向に注目していた。
N-BOX(標準車・カスタム)の月販目標台数は1万5000台、そしてJOYの月販目標台数は3000台なので、合算すると1万8000台となる。2024年10月単月締めでのN-BOXの販売台数は1万6821台となっているので、月販目標台数を下まわっての首位陥落と表現することもでき、二重の驚くべき状況となっている。仮にJOYが3000台販売したとすれば、標準車とカスタムは1万3000台強ということになったともいえる。

このような結果となった背景には、前述した「2024事業年度締め上半期累計販売台数第1位」達成が影響しているといえる。つまり、9月の半期決算セールのタイミングに合わせて、販売台数上積みのために自社届け出(行き先のないナンバープレートのついていない在庫車にディーラー名義などでナンバープレートだけつけること)がかなり積極的に行われたものと推測できる。
そして、自社届け出と並行してN-BOXの購入を検討しているお客の「青田買い」を好条件提示で行っていたとも推測が可能だ。つまり、10月以降実績分の先食いを行っていたのではないかというのである。さらに、現行モデルの販売力のパワーダウンというものも影響していると考えられる。

登録車のヤリスシリーズは本稿執筆時点ではハッチバック、クロスともに新規受注停止中となっている。ヤリスクロスは9月に出荷を再開しており、ヤリスクロスのバックオーダー消化が積極的に行われていたのかもしれない。
なお、ハッチバックは新規受注を停止するなか、レンタカーなどフリート販売向けの供給が活発に行われており、新車へのレンタカー車両などの入れ替えが積極的に行われている。あるとき、幹線道路で信号待ちをしていると、隣にトヨタの新車を満載した大型キャリアカートラックが停車したが、その荷台を見ると、すべてヤリスハッチバックだったので、レンタカーの積極的な入れ替えはやっぱり行われているのかなと思ったことがある。

ほかのトピックといえば、登録車のみのランキングでトヨタ車は1位から6位までを独占していたことが挙げられる。その6車の顔ぶれをみると、カローラシリーズ(除くクロス)、ルーミー、ライズ、アクア、プリウス、シエンタ(本稿執筆時点は新規受注停止中だが当時はまだ発注できた模様)など、トヨタ車のなかでは新規受注停止もしていなく、納期も比較的時間のかからないモデルばかりとなっているので、トヨタ系ディーラーでは集中して受注活動(そうするしかない?)を展開していることが伝わってくる。
ライバル車種は好調なセールスを記録中
納期が早いといえば、クラウンスポーツとクラウンクロスオーバーもトヨタ車のなかでは供給体制が整っているモデルとなっている。
「当初、クロスオーバーは、タクシー(おもに個人)車両としての販売はやめるようお触れが出ていたそうです。しかし、最近では個人タクシー車両として積極的な販売が展開されているとのことです。タクシー需要を想定していなかったので、自動ドア(後部助手席側)への架装業者も架装作業手順の確認に奔走した時期があったそうです(事情通)」。
アメリカではクロスオーバーはセダンとしてカテゴリーわけされているので、多少見た目に違和感があるものの、都内でも続々とクラウンクロスオーバーの個人タクシーが誕生しているようである。

軽自動車では、N-BOX JOYとタイミングを同じくしてスズキ・スペーシアが派生モデル「スペーシアギア」の新型を発売している。
スペーシア(標準車・カスタム)の月販目標台数は1万2000台、そして新型スペーシアギアの月販目標台数は2000台なので合算すると1万4000台となる。2024年10月単月締めでのスペーシア(合算)の販売台数は1万4234台なので、月販目標台数をクリアしていることとなり、新型スペーシアギアの販売が好調に推移しているものと考えることができる。

また、10月16日に発売したスズキのコンパクトクロスオーバーSUVとなる「フロンクス」が2137台を販売し、登録車のみのランキングで28位に入っている。フロンクスの月販目標台数は1000台となっているので2倍強を販売したことになる。専門家のフロンクスへの評価もおおむね高いようなので、今後「大化け」する可能性もあるのだが、インドからの完成車を輸入しての販売となっていることもあり、すでに大量のバックオーダーを抱えているとのことである。
とはいえ、今後はスズキ登録車のなかではスイフト、ソリオとともにスズキの看板車種になっていくかもしれない。

例年ならば暦年(1月から12月)締めでの年間累計販売台数トップをスズキとダイハツが激しく競い、11月12月はそのデッドヒートぶりが販売統計からも把握することができたのだが、2024年はすでにスズキのトップがほぼ確定的となっている。軽自動車ではN-BOXが11月、12月単月トップと暦年締め累計年間販売台数トップ維持のためにさらに積極的な販売を進めてくることが予測できるので、年末にかけてはN-BOXは買い得な状況が続きそうである。
登録車は納期が早いといっても2~3カ月となっているので、すでに2024事業年度(2024年4月から2025年3月)締め年度末決算セールをにらみながら販売促進活動が展開されていると考えていいだろう。