この記事をまとめると
■ディディエ・オリオール選手がラリージャパンに参戦した■オリオール選手は1994年にセリカで王者を獲得しているレジェンドドライバーだ
■ラリージャパンではGRヤリスを駆ってナショナル部門で勝利を獲得
念願だった日本でのラリー参戦を果たしたオリオール
11月21~24日、愛知県・岐阜県を舞台に開催されたWRC第13戦「ラリージャパン」では、WRCでワークスチーム、WRC2で国内外のトップドライバーが激しいタイム争いを展開したほか、日本独自の車両を対象とするナショナル部門でも国内外のドライバーが激しいバトルを展開。そのなかで、もっとも注目を集めたのが、フランス人ドライバーのディディエ・オリオールだといえるだろう。
オリオールは、1984年にWRCにデビューしたベテランドライバーで、1989年からはランチアのワークスチームで活躍したほか、1993年にはトヨタのワークスチームへ移籍し、セリカを武器に1994年にチャンピオンを獲得。

そんなオリオールにとって日本でのラリー参戦は夢のひとつだったようで、オリオールと旧知の間柄にあるモデルカーブランド「スパーク・モデル」のウーゴ・リペール代表および全日本ラリー選手権で活躍するフィット・イージー・レーシングの協力のもと、当初はラリージャパンと併催されていたヒストリックカーラリーへの参戦を計画していたという。
しかし、ヒストリックカーラリーが中止となったことで、オリオールはフィット・イージー・レーシングのトヨタGRヤリスでラリージャパンのナショナル部門に参戦することになったのである。
フィット・イージー・シーシングが製作したGRヤリスは、全日本ラリー選手権のJN2クラスに合わせて開発された国内規定モデルで、しかも、若手ドライバーの育成を目的に、JN2クラスのサブカテゴリーとして設定された「MORIZOチャレンジカップ」を対象にしていることから、ロールケージやダンパー&スプリング、タイヤ&ホイールを除けばほぼノーマルの状態。競技車両でポイントとなるエンジンのECUやミッションも純正品だ。もちろん、国際競技に参戦すべく、国際規格の安全燃料タンクなど必須アイテムは搭載されているものの、オリオールに与えられたGRヤリスは、イメージ的に市販モデルに“毛が生えた”程度の状態といっていい。

本人もテスト段階から「クルマが遅い」と語っていたようだが、66歳のベテランは不慣れな右ハンドルのGRヤリスで安定した走りを披露していた。
ナショナル部門でトップを獲得
オリオールの最大のライバルは、スバルWRX S4を駆る新井敏弘で、新井も「オリオールは上手いと思うし、GRヤリスも軽いからナショナル部門で勝つのは簡単じゃない」と語っていた。事実、豊田スタジアムを舞台にしたSS1こそ、オリオールはナショナル部門の8番手タイムにとどまったが、SS2で2番手タイムをマークすると、その後は5回のSSウインを獲得し、デイ2をナショナル部門のトップでフィニッシュ。

最大のライバルである新井敏弘がリタイヤしたことも影響したのだろう。デイ3でのSSウインは1回のみだったが、それでもポジションをキープし、デイ4では余裕のクルージングを披露。最終的にオリオールは総合19位で完走を果たし、ナショナル部門で勝利を獲得した。

フィット・イージー・レーシングでオリオール車のチーフメカニックを担当した熊崎大介は、「たぶん、ライン取りが日本人ドライバーと違うんでしょうね。
さらに「アライメントも特殊で、トーはイン方向、キャンバーもほとんど付けていない状態です。たぶん、うまく荷重をかけて曲がっているんだと思います」と印象を付け加える。
また、2018年のAPRCでチャンピオンに輝いた経験を持つフィット・イージー・レーシングのチームマネージャー炭山裕矢も、「テストで同乗しましたが、やっぱり基本的なドライビングがピカイチです。普通なら66歳になると、いろんなことが衰えてくると思うんですけど、ドライビングも現役ですし、気力も“参戦するからにはクラス優勝をしたい”とモチベーションも高かったので、やっぱりすごいと思います」と語っている。

まさにオリオールは“超人”のレベルで、ラリー界におけるレジェンドドライバーだといえるだろう。