この記事をまとめると
■2024年4月、トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用された■この規制強化がかえってトラックドライバーを苦しめているという
■物流の「2024年問題」が生じてからの現場の変化について解説
トラックドライバーの収入が大幅に減少
今年の4月から始まった、物流の2024年問題。トラックドライバーの時間外労働の960時間上限規制と改正改善基準告示が適用され、労働時間が縮小された。その規制内容を額面どおりに捉えれば、トラックドライバーのためを思った内容だと感じられるかもしれない。
というのも、労働時間の短縮によって収入が大幅に減ってしまい、生活が立ちゆかなくなるというトラックドライバーが増えることが容易に見込まれたからだ。いうなれば、これまでは960時間程度の時間外労働ではまともに生活できないほどの安い運賃で、トラックドライバーたちは命をかけ、身を粉にして働いてきたのである。そんな彼らに恩恵を与えるどころかより厳しい環境にしてしまうのだから恐れ入るばかり。
まずは、その部分を改善するほうが先決だっただろう。それに伴い運送能力も低下してしまい、荷物が従来通りに運べなくなるという懸念が、施行前から問題視されてきた。
そんな物流の2024年問題が施行されてから、現場はどう変わったのか。先日、大阪から鹿児島県まで高速道路で移動したのだが、以前とは明らかに異なる光景を目の当たりにしたのである。
高速道路を走るトラックの速度が上がった
まずは、ダブル連結トラックが増えたことに驚かされた。大型トラックの世界にはたくさんの荷物を運ぶことができるトレーラーが存在するが、トレーラーとは運転席を含む牽引車両であるトラクタと、荷物を積む荷台部分、いわゆるトレーラー部分が別個体であり、そのふたつが組み合わさったものを指す言葉。そしてダブル連結トラックは、構造自体はトレーラーとさほど変わらない。
それゆえに、一度に運べる荷物の量は大幅に増える。それはもちろん、運送会社側の対策なのだろう。労働時間の短縮によりドライバー不足が避けられないため、新たな車両を導入してまで2024年問題と向き合わざるをえないのだ。

そして、もうひとつ大きな異変を感じた。それは、大手運送会社の大型トラックが、以前より速度を上げて走っているのである。これまでは会社の規則で、高速道路の最高速度は時速80kmと決められており、わずかでも超過すればドライバーにペナルティを課していたはずの大手運送会社の大型トラックたちが、軒並み90km/hで走行していたのである。
ほとんどの大型トラックが時速90km/hで走行するようになったことは、正直ありがたいところである。大型トラックが追い越し車線に移るという行為が、物理的に少なくなるためだ。それにより、高速道路の流れそのものはよくなるに違いない。
しかし、ドライバーとしては意見がわかれることだろう。

これももちろん、2024年問題が産み出した結果だろう。時間外労働ができなくなったことで、結局はドライバーに負担がかかる結果となっているのだ。それでいて以前より稼げなくなるのだから、まさに本末転倒な愚策だったといわざるをえないだろう。
物流の世界は、わたしたちの暮らしと密な関係にある。それだけに、トラックドライバーの苦難は他人事では済まされない。是が非でも、改善を望みたいところである。