この記事をまとめると
■ホンダは一部車種に燃料タンクを車体中央に配置する「センタータンクレイアウト」を採用



■後席座席下に燃料タンクがないことで後席空間を広く使うことができる



■ホンダがかつて特許をもっていたが現在は有効期限切れになっている



センタータンクレイアウトとは

燃料タンクを車体中央に配置する、センタータンクレイアウトは、ホンダの小型車や軽自動車に採用されている。最初に採り入れたのは、2001年の初代フィットだ。



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フィットは、その前のロゴの後継として開発された。ロゴは、コンパクトハッチバック車として実用性に優れていたが、バブル経済崩壊後の競合他社を含め、際立つ個性を見つけにくいところがあった。そこは、トヨタ・スターレットも同様で、次のヴィッツの登場を待つことになる。日産マーチも、欧州での人気を頼りとしながら、次へのモデルチェンジを模索して2世代目が10年も変わらず売られた時代であった。



そんな市場を改めて綿密に調査した結果導き出されたのが、フィットだ。また、スターレットはヴィッツになり、マーチはルノーとの提携を活かした3代目へ大きく変身する。



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日産マーチ(3代目)



そうしたなか、フィットの商品性を特徴づける下地となったのが、センタータンクレイアウトである。



通常は後席下などに配置される燃料タンクを、車両の中央となる前席下に設け、後席下は座席アレンジを活用できるようにした。座席下に燃料タンクがないことにより、後席の座面を座り心地のよい厚みにすることができ、乗員すべてが快適な移動を手に入れられる。



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ホンダ・フィット(4代目)の後席シートの厚み



さらに大きな利点として、後席座面のチップアップ機能がある。座面が跳ね上がることにより、車両後ろのハッチバックを開けなくても、後席のドアを開けることで背の高い植木などを床に載せることができる。



その有効性を象徴的に実感させたのが、路上駐車で前後のバンパーを接触させながら止めるパリの人々だったといわれる。



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バンパーを当てた状態で停車している様子



人口が密集する大都市で、路上駐車が認められている(欧州では一般に路上駐車が認められている)パリでは、前後のクルマがバンパーを接して縦列駐車するため、荷物を積むためハッチバックを開けることができない場合がある。それでも、センタータンクレイアウトを採用するフィットなら、後席の座面をチップアップすることにより、背の高いものを含め、後席側ドアを開け荷物を自在に積めるのだ。



また衝突安全の面でも、後ろから追突されたとき、燃料タンクが車体の中央にあることにより、損傷の懸念が低減される。



一方、センタータンクレイアウトによる不便さもなくはない。ひとつは、後席に座ったとき、足を延ばして前席下へつま先を差し入れにくくなる。もちろん、その配慮のため、フィットは後席側へ傾斜した床構造にているが、長身であるなど足の長さによっては、他社のように前席下へつま先を奥まで差し入れることは難しい。



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ホンダ・フィットRS(4代目)の後席まわり



ほかに、フロントエンジンの排気管を車体中央の床下に通すことができず、サイドシル側へ寄せて通さなければならない。



そんなセンタータンクレイアウトは、ホンダが特許を取得した。特許の有効期限は20年間だ。すでに期限は過ぎたが、では、いまからセンタータンクレイアウトを他社が採り入れる必要はあるかどうか。



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ホンダN-ONE(初代)のセンタータンクレイアウト



電気自動車(EV)が現実のものとなり、軽自動車にもEVが用意されている、改めていま、新規にセンタータンクレイアウトのプラットフォームをエンジン車用に開発する意義があるかどうか、迷うところだろう。



ガソリンタンクを持つエンジン車のためのセンタータンクレイアウトは、画期的であったが、電動化の時代には別の考えを優先する方向性もあるだろう。

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