この記事をまとめると
■フィアットのMPVであるドブロがマイナーチェンジを実施した■エクステリアをモダンに一新して先進安全運転支援機能が大幅に進化した
■マイナーチェンジしたフィアット・ドブロに試乗した
フィアットのMPV「ドブロ」がマイナーチェンジ
フィアット・ドブロは同グループ、ステランティスのプジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴと基本部分を共用する商用車派生のスライドドアを備えた”道具感”ある大空間ワゴン、3列シートミニバン(MAXI)だ。2列シートのドプロのボディサイズは全長4405×全幅1850×全高1825mm、ホイールベース2785mm。
つまり、国産車では見当たらないワイド&トールなマルチパーパスカーということになる(国産車でいえばフリード・クロスターやシエンタの2列/3列シートの大型版。

パワーユニットは1.5リッター直4ディーゼルターボ、130馬力、300Nmのスペックのもち主で、アイシン製8速ATが組み合わされる。駆動方式はFFのみ。2列シートモデルの車重は1560kg。WLTCモードの燃費は18.1km/Lとなかなかの数値を示す。

そんなドブロが日本に上陸したのは2023年11月。それから約1年後の2024年12月5日にマイナーチェンジが施されたので、さっそく新型ドブロに試乗してみた。
ドブロは商用車派生とはいうものの、立派に乗用マルチパーパスカーとして成り立っている。16インチアルミホイールを履き、電子パーキングブレーキやヒルスタートアシストなどを備え、シフターも先進的なスイッチ式だ。国産車からいきなり乗り換えても、違和感などないに等しい(リフター、ベルランゴ、ルノー・カングー同様にパワースライドドアこそないものの)。「趣味を堪能するオトナの遊びゴコロを楽しめるクルマ」として、アウトドア派などにもうってつけの1台といっていい。

ところで、ボックス型ミニバンもそうだが、このドブロもバックドアが大きく開くため、車体後方にスペースのない場所ではバックドアを全開することは難しい。

ここでマイナーチェンジの概要を説明すると、まずエクステリアでは新世代フィアットのブランドロゴ採用によるフロントフェイスの一新だ。新しいLEDヘッドライトを用い、フィアットロゴは新レタリングに変更され、フロントグリル右端には1980~90年代のフィアットを思わせる4本線のマークがあしらわれている。

1980年代にフィアット・ウーノに乗っていた筆者(初代ウーノのカタログのコピーを書かせていただいた)としては、懐かしさが蘇ってきた……。
この種のクルマのお約束(シエンタも採用している)といえるサイドバンパー(サイドアンダーモール)はこれまでの樹脂むき出しからグロスブラック素材が使用され、上質感、精悍さを高めている。もっとも、洗車、悪路走行での磨きキズ、擦り傷の目立ちにくさという点では、樹脂むき出しのほうがいいのかも知れないが……。

ブラック基調のインテリアはシルバーのアクセントカラーをインパネ、ドア内張り部分に組み合わせ、シートの刺繍パターンも変更。前席にはフィアットロゴ入りのシルバーラインがアクセントとして入っているのもマイナーチェンジモデルの細かな特徴である。

先進安全運転支援機能の充実でストレスを大幅に軽減
しかし、マイナーチェンジ最大の進化は、先進安全運転支援機能にある。高速走行で威力を発揮するACC(アダプティブクルーズコントロール)は以前から付いていたが、いわば旧式の制御だった。

そのACCとの組み合わせで便利なレーンキープ性能も、今回は右寄りや左寄りなど、ドライバー任意の位置で車線内のポジションを維持するレーンポジショニングアシストを新たに追加。高速走行でのロングドライブにおいて、ドライバーの運転にかかわるストレスを低減してくれることは間違いない。
ACC(アダプティブクルーズコントロール&スピードリミッター)のスイッチの場所も変更され、ステアリングコラムから常識的なステアリングスポーク上(国産車の右に対して左に配置)に移動。使いやすさが高まったことはもちろんだ。

マイナーチェンジにおける追加装備を整理すると、LED ヘッドライト&フロントフォグランプ、10 インチ タッチスクリーン(新インフォテイメントシステム搭載)、10インチフルカラーTFTマルチファンクションディスプレイ、寒い時期に嬉しいステアリングホイールヒーター、スマホの充電に不可欠なUSB-C typeソケット2個(スマホ置き場のすぐ隣)、スキッドプレートが新たに加わっている。

ボディカラーはヴォラーレブルーおよびシネマブラック(試乗車)の2色を追加。ジェラート ホワイトを加えた3色展開となる(アースカラー系の色もあっていいとも思うが……)。
さて、ドブロの2列シートのマイナーチェンジモデルに乗り込めば、視界の高さはもちろん、深いセンターコンソールボックスやルーフコンソールなど、収納の豊富さとともに、商用車派生とは思えない運転席まわりの現代的仕立てに満足できる(もっとも樹脂部分の質感に関しては商用車派生と思えなくもないが)。ちなみにメーターはド派手なピンク色のリングだったが、これは色を変更できるから安心してほしい。

スイッチ式のシフトセレクターをDレンジにセットして走り始めれば、低速域では軽めのステアリングの扱いやすさ(速度を増すと引き締まる)とディーゼルターボエンジンの振動の少なさ、スムースな回転フィール、そして8速ATのスムースな変速が印象的だ。
1560kgの車重に対して動力性能は十二分といっていい。アクセルペダルの踏み始めのレスポンスは穏やかなものの、軽快感ある走りを味わわせてくれるところがドブロらしさ。

乗り心地は文句なしだ。荒れた路面の低速域ではややゴツゴツしたタッチを伝えてくるものの、速度を上げるほどに足まわりがしなやかに動いてグッと快適になり、路面に張り付くような安定感ある走りになるあたりは、なるほどラテン系欧州車ならではの絶妙な躾けだ。なにしろ段差を乗り越えたときのショック、振動は最小限。乗り心地に関しては”商用車派生”を忘れたほうがいい!! といえるほどで、しかも想像以上に静かな走りを楽しませてくれるのだ。
これなら、ACCの装備もあって、遠路の目的地、アウトドアフィールドへとドライブしても、ドライバー、乗員ともにストレス最小限。元気ハツラツのまま到着し、休日、アウトドアライフを楽しみつくせるに違いない。

なお、価格はマイナーチェンジ前の399万円から414万円に値上げされているが、装備内容のグレードアップからすれば納得の範囲といっていいだろう。
