この記事をまとめると
■新車ディーラーのセールスマンとの口約束は無効扱いとなりやすい■注文書の欄外に手描きされた事項はディーラーの正式承認ではない場合が多い
■念押ししたいことがあれば電子データで「特記事項」として形にすべき
新車販売は「いった、いわない」でトラブルになることも多い
「口は災いのもと」とニュアンスは異なるものの、新車販売セールスマンとの契約時の口約束は基本的に無効扱いとなりやすく、その意味では「口(口約束)は災いのもと」ともいえるだろう。
世のなかではよく「いった、いわない」でトラブルになることが多い。昭和のころには「お客さん、フロアマットサービスしますからどうですか?」などとして注文書へのサインを促すということがよくあった。
「同じ車種でライトバンがあればライトバン用のマットであったり、レンタカーなどフリート販売車向けの廉価なフロアマットなどが裏メニュー的に用意されていたと聞いたことがあります」(事情通)。
どんなタイプであろうが、純正品ならまだましなほうである。いまでもごくまれだが、カー用品量販店で販売されているような汎用格安マットとなっていたり、最悪は「聞いていない」ととぼけられるケースもあったりする。
「注文書に記載のないことはすべて非公式なもの」とは新車販売の鉄則。注文書のペーパーレス化(完全電子データ化)へ移行が始まっているが、これもお客とセールスマンとの間での非公式の合意を排除しようとの狙いもあるのではないかと見ている。
現状、紙ベースの注文書が残っているとしても端末入力して機械打ちされたものが当たり前。とはいっても、いまでも全面手書きの注文書を渡されてトラブルになるケースもまれに発生している。ほとんどないことだが、手書きの注文書はまず絶対に受け取らないこと。さらに機械打ちのものであっても、契約直前に取り決めたことが欄外に手書きされていたりしたら要注意。お客さま控えにたとえば「カーナビ10万円で取り付け」などとセールスマンが手書きしたとしても、データ上はその事項は記録されていない。

存在自体をトボけることはなくとも、過去には社員割引きで購入し、メカニックにバイト代を払って非公式に装着してもらうということもあった(取り付け保証がきかなくなる)。
手書きされた「特記事項」には要注意
とにかく、注文書の欄外に記載された事項はディーラーが会社組織として正式に承認したものではないと認識してもらいたい。そして、「きちんと特記事項として機械打ちしてほしい」と告げること(たいがいは無理だといいだすだろう)。
また、下取り車があるにもかかわらず注文書に下取り車の存在が明記されず、支払い明細に下取り査定額が反映されないこともある。「『下取り車は私個人のルートのほうがいい条件出ますので個人的に売却して現金で渡します』と伝えてくるセールスマンがいます。確かに当初の査定額よりは数万円アップしていますが、仮に10万円アップしても5万円をセールスマンが抜いて、『5万円アップしましたよ』と中抜きされるので注意してください」とは事情通。

少し前に車両買い取りを積極的に行う、大手中古車販売店がさまざまな問題を起こして世間を騒がせていた。事情通によると、ここは他店より20万円高く買い取るとしており、多くのメーカー系ディーラーセールスマンがお客の下取り車を個人的にここに売却して中抜きをしていたようであるとのこと。
いまでは下取り車のない受注についてはディーラー本部が発注者へ実際に下取り車はなかったのかという確認をしたり対策を打っているようである。

何か念を押しておきたいことがあれば迷わず電子データに残る形で「特記事項」として形にすること。新車販売に限らずセールスマンを全面的に信頼するのはかなりリスクの高い行為。よほど長年セールスマンと信頼関係を築いたつきあいがある人以外は、口約束は絶対に行わないこと。
相手を疑うことは気もちよくはないだろうが、物ごとをはっきりさせること、それこそ信頼の証なのである。