この記事をまとめると
■日本のトラックはほとんどがキャブオーバー型だ■海外ではボンネット型のトラックも多く使われている
■それぞれのメリット・デメリットを解説
キャブオーバー型はスペース効率に優れる
日本のトラックはキャブオーバー型ばかりだが、海外、とくに北米市場ではボンネット型のトラックも多く使われている。それは、利用する環境によって最適なトラックの形状が異なるからだ。
日本のトラックも最初はボンネット型だった。
バスも同じようにスペース効率を考え、ボンネット型からキャブオーバーへ、そしてリヤエンジンへと進化していったが、トラックの場合は後部に重量物を載せるのと、頻繁に乗員が乗り降りすることはないため、高いキャビンでも問題ないと考えられてFRのキャブオーバー型のまま進化してきた。
キャブオーバーでもキャブを前方へとチルトさせれば、パワーユニット全体が現れるから、整備性はそれほど悪くない。チルト機構のロックを忘れて走行してしまい、強いブレーキングでキャブがチルトして操縦不能に陥ったトラックの動画がネット上に出まわったが、あのようなうっかりミスがなければ、キャブオーバー型はスペース効率に優れたトラックだ。
ボンネット型は衝突安全性能が高い
一方、ボンネット型にもメリットはある。まずは空気抵抗の少なさだ。キャブオーバー型はキャブの長さを抑えているため、フロントウインドウより前に出っ張っている部分がなく、壁のようなフロントマスクになってしまう。これは空気の壁と正面から当たりながら走っているので、相当な空気抵抗になっている。長い距離を走るトラックとしてみれば、燃費性能に直結するだけに、広大な北米では大きな問題だ。
それと意外と無視できないのが衝突安全性能だ。キャブオーバー型でも乗用車との衝突事故では、キャビンが高く頑丈な大型トラックのほうの乗員はケガが軽傷で済むことも多いが、同じ高さと重さの大型トラック同士の衝突事故や、建物などとの衝突では、大型トラックのドライバーでも死傷者が出ることは珍しくない。
しかし、ボンネット型は文字どおりボンネットがクラッシャブルゾーンになるので、前面からの衝突に関しては安全性が高い。

これからトラックも電動化や自動運転化など、高度な制御が盛り込まれていく進化が予測されている。そうなると、キャビンの形状や荷積み荷下ろしのシステムなども、変わっていく可能性が高い。日本の場合、都市部の一般道が狭くさまざまなモビリティが混在しており、自動運転にはまったく向いていない。
交通事故自体は減少しているものの、大型トラックの比率も増えて重大な交通事故の起こる確率も高まっているように感じる。運転支援システムによる安全性向上には限界があるだけに、道路構造などから抜本的な改革を行わなければならない時期が近付いているのは間違いない。