この記事をまとめると
■1990年代に軽自動車をベースとした日本らしさ全開のミニバンが各社から登場した■軽自動車のボディに3列目シートと660cc以上のエンジンを搭載
■商用バンやキャンピングカーも用意されるなど各社が趣向を凝らしていた
軽自動車でミニバンを作ったら……こうなった
コンパクトなボディでありながら、多人数乗車が可能な3列シートを備えるというまさに日本らしさ全開のモデル。それが1990年代を中心に各メーカーからリリースされた軽自動車をベースとしたミニバンだ。
もともとボディサイズが限られている軽自動車は、じつは乗車定員も最大で4人までとされており、それ以上のシートを備えることができなかった。
ボディパネルなどで全長や全幅は軽自動車サイズを超えていたが、室内空間は軽自動車と同等であったため、まさに極小なミニバンとなっていた。今回はそんな軽自動車ベースのコンパクトミニバンを振り返ってみたい。
スズキ・エブリイ+/エブリイランディ
1999年6月にエブリイワゴンをベースに3列シートを備えたモデルとして登場したエブリイ+(プラス)は、1.3リッターエンジンを搭載し、スズキとしては初の3列シート7人乗りのワゴンとなっていた。
サイドシルエットはほぼエブリイだが、鼻先を伸ばしてクラッシャブルゾーンを確保することで国内だけでなく新欧州安全基準もクリアする安全性を実現。
シートレイアウトは2+2+3の7人乗りで、決して広々とはいえないが、しっかり全員が座ることができるスペースが確保されていた。
当初はエブリイ譲りの簡素なルックスだったが、2001年のマイナーチェンジで車名を「エブリイランディ」に改め、大型メッキグリルやツートンカラーを設定するなど、より乗用車感を強めたルックスとなり、インパネシフトを採用して室内空間をさらに広くするといった改良が施されていた。

三菱タウンボックスワイド
1999年に登場した6代目ミニキャブバンをベースに軽ワゴンに仕立てたタウンボックス。そのタウンボックスをベースに1.1リッターエンジンを搭載して普通車のミニバンとしたのが、同年6月に登場したタウンボックスワイドだった。

この6代目ミニキャブバンは現在もミニキャブEVのベースとして現役モデルとなっているが、デビュー当初は現在のルックスとは程遠い、良くも悪くも三菱らしい見た目となっていた。
その見た目のまま車名のとおり大型バンパーやオーバーフェンダーでワイド化したタウンボックスワイドは、タウンボックスをさらにアクの強いデザインにしたようなルックスに仕上がっていた。
シートは2+2+2の6人乗りとなっていたが、3列目シートは補助席のような簡素なもので、2列目シートも個別に格納して長尺物を積載できるようになっていたため、商用ときどき乗用、というような使い方を想定していたのかもしれない。

商用バンやキャンピングカーも登場
ダイハツ・アトレー7/トヨタ・スパーキー
2000年7月登場と最後発となったのが、ダイハツのアトレーワゴンをベースに1.3リッターエンジンを搭載した7人乗りミニバンのアトレー7だ。

こちらも軽自動車のボディのオーバーハングを延長し、大型バンパーやオーバーフェンダーでサイズを拡大していたが、エアロパーツ風のデザインであと付け感の少ないデザインが美点となっていた。
また、2000年10月にはトヨタへスパーキーとしてOEM供給がなされたが、トヨタのユーザー層にマッチしなかったのか、アトレー7よりも販売が低迷し、先んじて2003年春に生産終了となっている。

なお、このモデルは唯一商用モデルが存在し、ハイゼットグランカーゴの名前で販売されていた(トヨタ版はなし)。
スバル・ドミンゴ
軽自動車ベースのミニバン化の元祖といえるのが、1983年に初代モデルが登場したドミンゴだ。当時の4代目サンバーをベースに1リッターエンジンを搭載しミニバン化したドミンゴは、現在のものよりもさらにサイズが小さい旧規格時代の軽自動車をべースとしながら7人乗りとしていた点が最大のトピック。

また、サンバー譲りのリヤエンジンと、4WD仕様も用意されていたことで、道の狭い山間部などの人員輸送車としても活躍しており、終売後も長らく愛用するユーザーが少なくなかった。
そんなドミンゴは、1994年に2代目へフルモデルチェンジ。先代には存在しなかった2ペダルモデルも追加され(ECVT)、パワーステアリングも装着するなど、快適性は大幅にアップ。さらにキャンピングカー仕様で、ポップアップルーフを備えた「アラジン」を設定し、ラインアップの拡大もなされていた。
