この記事をまとめると
■スタッドレスタイヤの雪道性能はスリップサインの露出までだ



■経年劣化はもちろん乗り方でも寿命が変わる



■使用しない間の保管方法にも気をつけると長年使うことができる



スタッドレスタイヤの寿命とは

「スタッドレスタイヤ、買ったはいいけど、ぶっちゃけどのくらいもつの?」そんな不安をもっている人も少なくないのではないでしょうか。



そんなスタッドレスタイヤの使えるか、使えないかの判断材料は大きくわけて3つあります。



ひとつ目は法令的な使用限度。



タイヤは、スリップサインが出たら交換しなくてはいけないことは、多くの人が知っていると思います。そうです、タイヤは残り溝が1.6mmなると使用出来なくなります。これは道交法に規定されていて、反則金と違反点数があります。



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スタッドレスタイヤについては、50%の摩耗でスタッドレスタイヤとしての性能は終わりとなります。スタッドレスタイヤの使用限界を示す印は「プラットホーム」と呼ばれ、タイヤの側面にスリップサインのマークと別に印が付けられていて、それをトレッド(接地面)側になぞっていくと、タイヤの溝にプラットホームと呼ばれる50%摩耗を示す突起がつけられています。



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スタッドレスタイヤのスリップサイン



このタイヤの寿命に関しては、各都道府県の公安委員会が定める規則「道路交通法施行規則」、「道路交通規則」がかかわってきます。「地方自治体に取り締まる権限があるの?」と思う人もいるかもしれませんが、道交法の71条に運転者の遵守事項というのがあり、その1項第6号に「道路または交通の状況により公安委員会が道路における危険を防止しその他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」によって、都道府県の公安委員会が定めた規則も道交法違反の対象となります。



厳密にいうと、摩耗量を規定していない公安委員会もあるのですが、県をまたぐと違反になることもあるので、50%摩耗を使用限界と考えるのが安全でいいと思います。



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チェーン規制のイメージ



ふたつ目は経年変化(劣化)です。タイヤは古くなると紫外線や、窒素酸化物、オゾンなどによってゴムが劣化していきます。また、再架橋(さいかきょう)といってタイヤのゴム分子(ポリマー)同士が結びついてタイヤが硬くなっていきます。



架橋というのは、ゴムに必要な弾性を作り出すために硫黄を反応させる工程です。

これによってポリマー同士が急速に結びつく「架橋」が起こるのですが、タイヤは経年劣化によってもゆっくりと架橋が進みます。これを再架橋といいます。ポリマー同士がさらに結びついて柔軟性が失われたゴムに変化してゆくのです。



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タイヤに使われるポリマー素材



倉庫に適切に保管されていたタイヤだと、1年くらい保管されていてもほぼ劣化はないので、絶対的な判断基準ではないのですが、タイヤには製造週が刻印されていますので、これをひとつの目安にすることはできます。



タイヤの側面に4桁の数字が書かれています、たとえば3524といった数字です。この数字の前2桁が製造週、後ろ2桁が製造年を表しています。つまり3524なら2024年の35周目に作られたタイヤということです。



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タイヤの製造年表記のイメージ



ちなみに、輸入タイヤなどでときどき見られるのですが、タイヤが白っぽい粉を吹いていることがあります。これはタイヤのなかに配合された劣化防止のためのワックス成分が染み出たもの。タイヤを放置したための汚れではありません。むしろこの成分はタイヤの被膜になって、タイヤを劣化から保護する役割を果たしています。



もしタイヤショップで、タイヤ組付け前にタイヤをごしごし掃除しているのを見かけたら、「そんな汚いタイヤを組むな」などと怒らないように。

むしろタイヤの性能を劣化させないように保管していたということです。



なるべく負荷をかけない走り方が重要

「で、実際のところスタッドレスタイヤはいつまで使えるの?」っていう話ですが、ゴムの性能だけでいうと、多くは3年から4年くらいはもつように作られています。ただ、野ざらしで屋外に保管していると、半年で数年分劣化してしまうこともあります。



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野ざらしにしたタイヤのイメージ



3つ目は、ひとつめ、ふたつ目ともかかわってくるのですが、タイヤの損耗です。要は、摩耗するにしても平らに減るのではなく、タイヤのショルダー部が摩耗してしまったり、ブロックのヘリが丸く摩耗してしまったり、あるいはサイプ(極細溝)が開いてしまったりといった傷み方です。スタッドレスタイヤのゴムは寒冷時に柔軟性を保つために柔らかなゴムが使われています。その柔軟性が氷雪路で路面を捉える働きをしてくれるわけです。スタッドレスタイヤをドライ路面でサマータイヤと同じように扱うと、当たり前のことですがタイヤの傷みは激しくなります。



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ドライ路面で走るスタッドレスタイヤのイメージ



急加速や急減速……といってもタイヤが鳴き出すような激しいものというわけではなく、強めの加速でも十分タイヤのブロックに負担がかかります。同様にカーブでもぐっと横Gがかかる程度の旋回、あるいは交差点でアクセルを踏んで加速しながら旋回するといった使い方でもトレッドブロックのエッジや角、ショルダーブロックは摩耗してしまいます。



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スタッドレスタイヤでドライ路面を走るイメージ



なので、サイプが開いてギザギザになってしまったっり、ショルダーブロックの角が削れて丸くなってしまったり、ブロック全体のエッジが削れ丸みを帯びてしまうと、氷雪性能はガクッと悪くなります。



一般道の交通状況で絶対にそうした運転をしないで、静かに丁寧に走るなんてことは現実的に無理ですが、そうした運転が許される状況のときだけでも、なるべくタイヤに負担をかけないように穏やかに加速したり、減速もたっぷり制動距離をとるようにする……コーナリングも惰性やパートスロットル(加速も減速もしないアクセルの踏み方)を行ってやると、断然タイヤの性能の下落を最小限にとどめることができます。



スタッドレスタイヤは、ゴムの性能はもちろん重要ですが、それだけでなくブロックのエッジや角、サイプの溝が氷雪路面での性能を作り出しています。この部分の摩耗を最小限にとどめるように走ってやると、4年後でも驚くほど氷雪性能を発揮してくれます。



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スタッドレスタイヤで雪道を走るイメージ



また、摩耗と同時に気を付けなくてはならないのがゴムの劣化です。



タイヤは、風雨や窒素酸化物、オゾンなどで劣化が進みます。また、装着したまま走らずにガレージにクルマを停めておくだけでも劣化は進みます。



よくいわれることですが、タイヤはある程度走ってゴムを運動させてやったほうが劣化が少ないのだそうです。それが、タイヤが生モノといわれる所以だったりするわけです。



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雪道を走るイメージ



タイヤが経年変化で劣化するのは、前述のとおり、再架橋によってポリマー同士のつながりが密になって、柔軟性を失われるからだといわれています。同時にタイヤに練り込まれた劣化防止のためのオイルが蒸発してゴムがカサカサになってしまうこともよくあります。



こうなるとブロックの根もとやサイドウオールにひび割れが入ってくるので、それとわかります。



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タイヤのひび割れイメージ



経験的にいうと、多少の浅いひび割れは2~3年たつと出てくることがありますが、柔軟性が保たれているようならまず問題ないと思います。ブロックの根もとや溝底、あるいはサイドウォール(タイヤ側面)に深い亀裂用に名ひびが入ると、これはもう使いものになりません。



保管の仕方や走らせ方でタイヤの使用限界は大きく変わってきます。ただ、ちょっと注意をして走らせてやるだけで、安全快適な冬道ドライブを長く楽しむことができます。



保管に関しては、密閉しないカバーをかけて。かつ雨風にさらされないように保管しておくだけでゴムは3~4年程度は性能を保ってくれます。このとき、空気圧を少し抜いてタイヤの緊張を取っておくとさらにいいでしょう。



今年もイケるか交換か? 数年経ったスタッドレスは「減り」に「ヒビ」に「溝の形」と色んなところをチェックして判断すべし!!
スタッドレスタイヤの保管イメージ

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