この記事をまとめると
■近年、車両のヘッドライトカバーの多くはポリカーボネート製に代わっている



■ポリカーボネートは透明性と耐衝撃性に優れるが黄ばみやすいのがデメリットだ



■ヘッドライトの黄ばみを取る方法について解説



ヘッドライトはガラスからポリカーボネートへ

夜間走行に欠かせないヘッドライト。最近は、LEDなど明るいものが増えたので運転しやすくなったといえるだろう。この光源を保護し、光を必要に応じて集約、屈折しているのがレンズだ。

旧い世代では「レンズといえばガラス」と思いがちだが、近年のトラックなどに使用されるヘッドライトレンズは、ポリカーボネートという素材が採用されているのである。



これは合成樹脂の一種で、硬いプラスチックのようなもの。熱に強くて燃えにくいことに加えて、透明性、耐衝撃性(ガラスより200倍強いとされる)に優れるという特性を有している。ヘッドライトは「目」と表現されることもあるように、車両のデザインに大きな影響を及ぼすパーツ。ポリカーボネートは加工の自由度が高いので、そういった面からもヘッドライトレンズに最適な素材といえるのだ。



耐用年数が長いトラックだけに悩みのひとつ! ヘッドライトの黄...の画像はこちら >>



もともと、トラックの灯火類用レンズはガラスがほとんどであったが、ウインカー、テールランプ、ストップランプ、バックランプなどのレンズは、通常のプラスチックレンズに置き換えられてきた。これは、加工の容易性やコストなどがおもな理由とされる。



しかし、ヘッドライトは車両正面についており、かつ相当の大きさがあるので、万一の際に壊れにくいものが望ましい。通常のプラスチックでは耐久性に問題があったというわけだ。



ポリカーボネートは黄ばみやすい

このように、メリットが多いポリカーボネートなのだがデメリットも存在する。なかでも表面硬度が高くない(傷つきやすい)ことや、紫外線や薬剤(おもにアルカリ性のものや溶剤など)に弱いことは、劣化の原因に直結している。それにより、黄化するという厄介な問題も抱えているのだ。

古いトラックのヘッドライトが黄色く濁って曇ったように見えるのは、ほとんどの場合がこの理由によるものである。



曇ったヘッドライトは見た目がよくないだけではなく、必要な光量が確保できないなど走行にも支障が起きる。2024年8月から一部地域で始まり、今後は順次全国で実施する予定になっている「ロービーム車検(ヘッドライトの照射検査をロービームで行う車検)」では、この曇りが致命的な不合格要因にもなりかねないと懸念されているのだ。



耐用年数が長いトラックだけに悩みのひとつ! ヘッドライトの黄ばみにプロはどう対応している?
トラックのヘッドライトのイメージ



とはいえ、一度黄ばんで曇ったヘッドライトのレンズは、洗車した程度でもとに戻ることはない。プロにメンテナンスをしてもらうという方法もあるが、相応の費用が発生する。コストに厳しい運送業界には悩ましい問題だ。そこで、市販グッズを使用してDIYで解決するという方法が浮上する。黄ばみはおもに紫外線による表面劣化なので、単純にいえばそれを取り除く作業をすればよいわけだ。



方法は大別してふたつ。ひとつ目は比較的手軽なやり方で、市販のクリーナーを使用するというもの。クリーナーといっても、普通のガラスクリーナーでは効果が期待できない。コンパウンドが入った、黄ばみ落とし効果のあるものを使用することが肝要だ。



耐用年数が長いトラックだけに悩みのひとつ! ヘッドライトの黄ばみにプロはどう対応している?
トラックのヘッドライトのイメージ



まず、水やカーシャンプーでヘッドライトまわりをきれいにし、隣接するボディにマスキングをする(コンパウンド入りクリーナーは塗装に悪影響があるため)。クリーナーを塗布したあとはていねいに拭き取り、仕上げはマイクロファイバークロスで拭き上げる。あまり劣化が進んでいなければ、これである程度、透明度の回復が期待できるだろう。



ふたつ目は劣化の状況が進んでいる場合のやり方だ。洗浄・マスキング後に耐水ペーパーを使用して、劣化部分を削り取るのである。黄ばみの状態にもよるが、ひどい場合は耐水ペーパーの#800番ぐらいが必要になる。仕上げは#1000~#3000番ぐらいを必要に応じて使用する。きれいになったら水洗いをし、コーティング剤を塗布するとよい。少々手間はかかるが、少ない費用でヘッドライトが生まれ変わるので、挑戦する価値があるのではないだろうか。

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