この記事をまとめると
■トヨタ・ハリアーは4代目となる現行モデルも好評なクロスオーバーSUV■初代モデルはセダンベースのプレミアムSUVとして1997年に登場した
■都会的なクロスオーバーSUVという現在の人気ジャンルを開拓した先駆者的な1台だった
現行も大人気なクロスオーバーSUV界の雄・ハリアー
2020年に4代目となって登場したトヨタ・ハリアーは、同門のトヨタRAV4とはまったく異なるキャラクターを持つプレミアムSUVだ。
RAV4、北米向けハイランダーに続く、トヨタ最新のGA-Kプラットフォームを使う都会派クロスオーバーモデルであり、都会の高級ホテルのエントランスにも似合う高級感溢れるスタイリッシュさはもちろん、トヨタの上級サルーンに匹敵するインテリア、居心地のよさ、乗り心地を備える。
さらには、先進運転支援機能のトヨタ・セーフティセンスやDCM、ヘルプネットの全車標準装備、ハイブリッド・FFモデルでWLTCモード燃費22.3km/Lという、クロスオーバーモデルとしては飛びぬけた燃費性能を誇る。

さらに、ハリアー誕生25周年の2022年には待望のPHEVモデルも加わった。ハリアーのフラックシップという位置づけで、最上級のZグレードのみの設定となり、そのパワートレインはハリアーハイブリッド E-Fourをベースとしてフロントモーターの出力アップやバッテリーの大容量化が図られ、専用のPCU、DC/DCコンバーターの採用などによって、システム出力306馬力を達成した。

駆動方式がE-Four(4輪駆動)のみなのは、そうした大パワーを確実に路面に伝えるためにほかならない。
また、PHEVならではのポイントのひとつが、EV走行可能距離の長さだ。ハリアーPHEVの場合は93kmとされ、実走行でも90km程度のEV走行を実現している。1日30kmぐらいの走行なら、3日間は電気自動車として使えることになるわけだ。

ハリアーはハイブリッドモデルでもトヨタの上級サルーン的乗り味が自慢だが、PHEVモデルはさらにその上をいく極上の快適感がある。これは、1950kgもの車重、その低重心化に合わせたコンフォート寄りのセッティングが施されているからにほかならない。

さて、今回の本題はそんなトヨタ・ハリアーの初代モデルについてである。それがいまから28年も前の1997年12月に発売されたといえば、ハリアーがいかにロングセラーモデルであるかがわかるだろう。
都会的なクロスオーバーSUVの先駆者だった
初代ハリアーは、当時のトヨタ・カムリ(1996年発売の6代目)をベースに、高級乗用車としての基本性能とSUVの機動性や機能性をあわせもつプレミアムSUVとして開発され、北米市場では、メルセデス・ベンツ MLクラスやBMW X5などを仮想敵として、レクサスブランドからはRXというネーミングで発売された。

カムリという北米で大人気のセダンをベースにしていることからも、土の臭いのするSUVではなく、都市型SUVであることは間違いないところで、クロスカントリーモデルとは別物の佇まいある都市型クロスオーバーモデルではありつつも、最低地上高を185mmに設定し、SUVとして十二分な悪路走破性が与えられている。

パワーユニットは、140馬力を発生するバランスシャフト内蔵の2.2リッター直列4気筒ハイメカツインカムエンジン(2000年11月に160馬力の2.4リッターエンジンに置き換え)、および220馬力の3リッターV6DOHC24バルブエンジンの2種類を搭載し、いずれもステアマチック付4速ATとの組み合わせ。駆動方式はFFとフルタイム4WDを用意していた。
土の臭いを感じさせないプレミアム感あるエクステリアデザインもさることながら、インテリアも高級セダンに匹敵するデザイン、質感を備え、前席のサイドウォークスルーが可能など、使い勝手も文句なし。現行ハリアーを筆者は「SUV界のクラウン」と勝手に呼んでいるが、初代ハリアーもまさに高級セダンのように快適な走行性能、乗り心地をもつSUVで、まさにクロスオーバーSUVというジャンルを日本で確立したモデルだったのである。

ちなみにハリアーという車名の由来は英語の「小さな鷹の一種“チュウヒ”属のタカ」の名称に由来しており、それはエンブレムデザインにも表れている。

振り返れば、初代ハリアーが登場した1990年代は、日本市場、北米市場ともにSUV人気が一気に高まった時代で、「高級サルーンの持つ優れた資質はそのままに、SUVの良好な視界、オフロードでも走行できる機動性、ステーションワゴンの便利さを兼ね備えたクルマ」として開発がスタートしたと聞いている。 “WILD but FORMAL”。つまり、「ワイルド、しかしフォーマル……」というキャッチフレーズが、そこから延々と続く歴代ハリアーの本質を見事に表しているといっていいだろう。

フォーマルという意味では、シート地上高をフロントで725mm、リヤで745mmに抑えたことで、悪路走破性とスムースな乗降性を両立。力強さとプレステージ性を追及したエクステリアデザインをはじめ、高級車に匹敵する優れた操縦性・走行安定性と静粛性、乗り心地もハリアーならではの特徴として受け継がれている。

最後に、初代ハリアーがクルマ好きを驚かせたトピックをひとつ紹介したい。それは1998年6月に発売された特別仕様車で、V6モデルをベースにした、イタリアのカロッツェリアであるザガート社とのコラボレーションモデル、「ハリアー・ザガート」である。

ザガートによるフルエクステリア、オーバーフェンダーを纏い、専用ローダウンサスやゴールドのアルミホイールを装着。当時の価格は約363万円と、ベース車の3.0Gパッケージの約80万円高とはいえ、イタリアンテイストむんむんのオンロードV6ハリアーとしてはかなりリーズナブルといえる値付けだった。
2024年末、カーセンサーやグーネットで検索したところ、残念ながら1台もヒットしなかった希少車でもある。