この記事をまとめると
■2024年12月にJRがライドシェア事業に本格参入する方針だ■働き手不足により駅からの「足」が存在しない地域が目立って増えてきている
■バスやタクシーを運行するよりもライドシェアのほうが低コストで運用できるメリットがある
JRがライドシェア事業に乗り出す背景とは
2024年12月、JRがライドシェア事業に本格参入する方針を固めたと報じられた。仕組みとしては、自社グループのレンタカーを活用し、専用のスマホアプリを利用するとのことであった。
筆者は鉄道で地方の取材先へ出かける前には、取材先最寄りの鉄道駅にタクシー乗り場があるか、または駅から路線バスを利用できるかを必ず調べるようにしている。
以前、何も考えずに最寄り駅からタクシーで取材先へ移動しようと、現場の最寄り駅に降りたことがある。ただ、そのときに使った駅は首都圏でありながら無人駅で、駅の周囲にはコンビニもないような場所だったので、「やってしまった」と正直思ったことを覚えている。
それでも駅前には小規模なロータリーがあり、「タクシー利用の方は以下の番号へ電話を」みたいな看板があったので、そこへ電話すると「いまは周辺にタクシーがいないので迎えに行けない」と、つれない答えが返ってきた。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いて以降の深刻なタクシー不足が解消傾向に向かっていたときでもあり、「それもやむなし」と思い、恐れながらも取材先からクルマで迎えに来てもらったことがあった。
それ以降は、タクシー乗り場やバス路線の有無を調べ、タクシーしか取材先への移動手段がない場合には、グーグルマップを航空写真モードにしてどのようなタクシー乗り場なのか、さらには乗り入れているタクシー会社の数なども調べ、リスクが高い(タクシーに乗ることができない)ような場所であれば、最寄り駅手前などの、近場で比較的にぎやかな駅を探し、そこからタクシーで移動するなどの手段を講じるようになった。

最近はこのような無人だけではなく、駅から沿線地域への公共交通機関による「足」が存在しない地域が目立って増えてきているとも聞いている(事実上機能していないというものを含めて)。
バスやタクシーを動かすよりもライドシェアのほうが安価
2024年12月6日、JR東日本は国土交通省へ2026年3月予定として運賃改定(つまり値上げ)の申請を行ったことを発表している。今回の値上げの背景についてさまざまな理由を説明しているなかで、コロナ禍後の生活様式の変化(リモートワークの普及など)で利用客が減少していることをあげている。また沿線人口のさらなる減少などもあるようだ。

つまり、少子高齢化に歯止めのきかないなか、今後現役世代の人口減少も顕著となり、JR東日本圏内であっても鉄道住民による利用減少というものが顕著なものとなるのは明らか。
いままでは、何もしなくても通勤や通学で沿線から駅へ鉄道利用者が集まっていたが、今後はJRだけではなく多くの鉄道事業者も駅へ利用者を呼び込む、つまり駅へのアクセスの確保努力など、鉄道をより利用しやすい環境整備へ積極投資しなければならなくなってきているものと筆者は考えている。

しかし、いままでのようにバス事業者やタクシー事業者に頼ることも難しい。
首都圏をみると、一部私鉄と呼ばれるJR以外の鉄道事業者では自社沿線の駅前に自社タクシーを駅待ちさせ、自社路線バスを沿線で運行しているケースもある。これらのバスやタクシー会社は「民鉄系」とも呼ばれ、全国的にも鉄道、バス、タクシーを運行する事業者は存在するが、一時期は民鉄系バスやタクシーをなくす動きも目立っていた。しかし、現状を踏まえ、再び自社でバスやタクシーを運行するほどの体力は、さらなる将来を考えると温存しておきたいだろう。そこでJRもライドシェアサービスに着目したものと考える。

通勤には自宅最寄りと駅の間はバスを利用して鉄道を利用し、残業や会食などで帰宅が夜遅くなりバスの運行が終了していたらタクシーで帰宅できる、昭和のころにはベッドタウンと呼ばれる地域などでは当たり前であった風景がどんどんなくなってきており、鉄道事業者だけではなく自治体なども対応に追われているのがいまの日本の現状なのである。