この記事をまとめると
■ヨコハマタイヤの「アドバンV61」がリプレイスタイヤとして展開されることになった■4本のストレートグルーブでウエット性能を確保しつつ不等ピッチのリブデザインでロードノイズの低減
■静粛性と低燃費を優先したジェントルドライビングを心がけるユーザー層におすすめだ
OEMで好評だった「アドバンV61」をリプレイス展開
ヨコハマタイヤの「アドバンV61」はこれまで、主に自動車メーカー標準モデルとしてOEM装着されてきた。とくにトヨタbZ4Xなど重量の重いBEV(バッテリー電気自動車)などに採用され、装着メーカーからの評価も高かったことから、今回、リプレイス商品としても展開されることとなった。
通常、メーカー標準装着仕様とリプレイス仕様では中身が異なっているものだが、V61ではOEM装着と同じ仕様で商品化しているという。
今回、その試乗を行うことができたのでリポートしよう。
V61の外観上の特徴は左右非対称のトレッドパターンデザインを採用していること。4本のストレートグルーブを配してウエット性能を確保し、AIを活用した不等ピッチのリブデザインで、とくにロードノイズの低減を狙っているという。

音の静かなBEVに装着されるにあたってはロードノイズの低減が強く求められ、それを訴求する新デザインを採用したというわけだ。また、BEVの課題である航続距離を最大限引き出すために転がり抵抗が小さいことも重要で、トレッドゴムのヒステリシスを減らし、プロファイルも最適化することで実現している。
試乗前に実験走行として従来型タイヤであるブルーアースとアドバンV61による空走距離を比べる実験が行われた。キャリアカーのプラットから装着車を惰性で転がし、何メートルで停止するかを比較する。同一車両で空気圧を揃え、重量も変わらない状態でV61は15%程度も空走距離を伸ばしていた。

結果は一目瞭然だったが、実際に走らせてみなければドライブフィールはわからない。次はV61装着車を走らせてみる。
我々が選んだのは新型にモデルチェンジを受けたばかりの三菱アウトランダーPHEVだ。標準装着タイヤはグッドイヤー製サマータイヤだったが、V61を履くことで如何に印象が変わるのか興味深い。

高い燃費と静粛性がバランスされたプレミアムタイヤ
アウトランダーPHEVは4輪駆動AWDであり、三菱独自のS-AWC(4輪制御技術)を搭載している。まずは低速で走り始める。転がり抵抗の小ささは発進時のストレスも軽減してくれ、通常よりアクセルを踏み込む量も減少している印象だ。
そして、初速のままコースティング(空走)させてみると、どこまでも転がり続けていく。まるでクリープで走っているかのようだが、コースティングモードにしているので駆動力は一切かかっていない。

公道に出てタイトなコーナーをいくつかクリアしてみる。ライントレース性は申し分ないが、若干ステアリング切り始めの操舵ゲインが足りない感じも受ける。ヒステリシスを抑えたコンパウンドゴムはグリップの立ち上がりが遅いのかもしれない。
高速道路への合流で加速すると、4WDゆえに十分なトラクションが伝わり車速を制御しやすい。そして、直線のクルージングにおいてはロードノイズが静かで、車格がワンランク向上したような乗り味を体感できた。一方で、路面の継ぎ目や段差通過時のハーシュネスは少し強く伝わる。剛性感としては申しぶんないのだが、突き上げが強いのは車体側のブッシュ類と減衰特性を合わせる必要がありそうだ。

ハーシュが強く感じられるのはカーカス構造によると考えられる。V61はカーカスケーシングでサイドウォールを構成し、ビードを包み込んだあとにショルダー部まで巻き上げるハイターンアップ構造を採用している。これは、BEVなどの高荷重に耐える耐荷重性を高めるためで、それが路面段差ショックを吸収せずに車体側にダイレクトに伝わっていくためだろう。
もちろんレーシングタイヤのようなごつごつとした不快なものではなく、ハーシュは一瞬にして収束されるのだが、音が静かで快適なぶん、その一点が気になってしまったようだ。
テストコースでパイロンスラロームやS字コーナーを攻めてみると、高剛性なサイドウォール効果で車体のロールは少ないが、電動トルクを急激にかけるとグリップが一瞬遅れ電子制御が介入する場面もある。こうした限界特性は電子制御とのマッチングが重要で、車種によっては不向きなモデルもあるかもしれない。

V61は運動性能より静粛性と低燃費を優先する考えで、スポーツドライビングよりジェントルドライビングを心がけるユーザー層に歓迎されるモデルといえそうだ。