この記事をまとめると
■1973年にロータスからセブンの権利を買い取って以降、ケータハムはセブンの製造を続けている



■ケータハムはスズキの660ccターボを搭載したセブン160を2014年に発売



■最近ではフルEVの2シータースポーツカーであるプロジェクトVを発表している



世界一高価な軽自動車はケータハム・セブン170

スズキの660ccエンジンを使ったふたり乗りの軽自動車が800万円オーバーで売られていると聞いたら、眉をひそめる方が大半でしょう。しかも、このクルマが世界中で愛されるライトウェイトスポーツカーだと聞けば、驚きを通り越して困惑すら覚えるに違いありません。もっとも、クルマ好きならケータハムの名を思い浮かべるはず。

ですが、知ってるようで馴染みの薄いブランドで、じつはケータハムという呼び名さえ正確ではないのです。



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そもそもケータハム・カーズは1959年にグラハム・ネアン(Graham Nearn)が、ロンドン郊外のケイタラム(Caterham)という地で創業したカーディーラー。このケイタラムがケータハムと間違われて以来、日本ではケータハムが根付いてしまったというのが定説です。このため、いまやケータハム・カーズのオーナーとなっているVTホールディングス(愛知に本拠を置く自動車ディーラーグループ会社)もあえてケイタラムでなく、馴染み深いケータハムと呼んでいる模様。



で、ケータハム・カーズはロータスのディーラーだったのですが、1973年にロータスが「ロータス・セブン」の販売を止めるとなった際、「だったら製造用の治具やら残ったパーツまるごと譲ってよ」と販売権もろとも買い取ってしまったのです。昔から、ケータハムはロータスのパチモノなどという知ったかぶりもいますが、経緯のとおりまったくの誤解もいいところ。



間違った表記がそのまま日本の正式名にってマジか! 尖ったクルマしか出さない「ケータハム」とは
ロータスからセブンの製造権を譲り受けたグラハム・ネアン



もっとも、ロータス・セブンを模したクルマは世界各国の小規模メーカーでいまも作られていますから(例:ドンカーブート@オランダ)そういった誤解も致し方ないところかもしれません。



さて、ケータハム・カーズは当初、ロータス・セブンの最終モデルとなったシリーズ4を生産していたのですが、これはボディが大きなFRP製だったり、バギーのようなフェンダーが不評だったことから、最初に60台ほどを生産してすぐさまシリーズ3へと切り替えられました。



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ロータス・セブン・シリーズ4のフロントスタイリング



小ぶりなタイヤフェンダー、荒っぽい仕上げのアルミボンネットフードといったロータス・セブンのアイコンをふんだんに盛り込んだシリーズ3は、ケータハム・カーズの大ヒット商品となったのです。



ケータハムはセブン一筋なわけじゃない

この際、ネアン氏は自社のシリーズ3をロータスの完コピとしたのではなく、ヒーターを追加したり、シャシーの各部を補強するなどのアップグレードを実施。これ以降のケータハム・カーズはセブン無双ともいえるほどさまざまなバリエーションをリリースし、それぞれが熱狂をもって迎えられたのです。



たとえば、ロータス製8バルブDOHC1600cc(121馬力)ロータスツインカム搭載モデルはそれこそロータス原理主義的なオーナーから「これぞ正統」とばかりに大絶賛。

冒頭に記したスズキの660ccターボを搭載した2014年発売のスーパーセブン160は、80馬力ながら440kgという軽量を活かして世界でもまれにみるライトウエイトスポーツカーに仕上がっています。はたまた、ホンダCBR1100XXなんてバイクのエンジンを積んだブラックバード(170馬力/車重422kg)なんて限定版もありました。



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ケータハム・セブン160のフロントスタイリング



とにかくセブンのバリエーションはとてもひと晩では語りつくせぬほどの数と特徴があるわけで、ケータハム=セブンのメーカーといっても過言ではないでしょう。



もっとも、少数ながらセブン以外のモデルもあるといえばあるわけで、最近ではフルEVの2シータースポーツカー、プロジェクトVを発表。イタルデザインによるボディの下には後輪を駆動するシングルモーターが搭載され、ロードモデルとして開発が進んでいます。



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ケータハム・プロジェクトVのフロントスタイリング



また、2013年にはエアロセブンという空力を積極的に利用するボディを載せたモデルを発表したほか、SP300Rと呼ばれるレースカーはケータハムがチューンアップしたエンジンをローラのシャシーに載せるなど、バリエーションの拡充にも積極的。



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ケータハムSP300Rのフロントスタイリング



が、これまた事情通がよくご存じのとおり、ケータハムの資本、つまり経営者はコロコロと変わってきました。まず、2005年には創始者グラハム・ネアンの息子、サイモンが経営権をロータスの元ゼネラルマネージャー、アンサー・アリに売却。2011年になると、格安航空会社エアアジアのCEOであるトニー・フェルナンデス率いるF1チーム、チーム・ロータスにより買収。この際、チーム・ロータスは「ケータハムF1チーム」として参戦したものの、2014年にはフェルナンデスがチームを投資家グループに売却し、F1から撤退というじつに浮き沈みの激しい歴史を刻んでいるのです。



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ケータハムF1チームのF1マシン



ようやく落ち着いたのは2021年のことで、ケータハムの日本総輸入元であるエスシーアイを子会社にもつVTホールディングスが全株式を買収し、堅実な経営になってからのこと。全従業員を合わせても100名たらずという規模ながら、余りある存在感をもつメーカーはケータハム・カーズをおいてほかには見当たりません。



願わくは、これからもセブンをコアに据えた熱いビジネス、ハンパないモデルのリリースを期待したいものです。

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