この記事をまとめると
■トランプ政権は政府経費削減省にイーロン・マスクを就任させる予定だ■反EV派のトランプ政策によりテスラはむしろプラスになる可能性がある
■イーロン・マスクは現在テスラよりもスペースX社の火星移住事業に注力している
トランプ政権にイーロン・マスクが加わるメリット
いよいよアメリカの第47代大統領にドナルド・トランプ氏が就任した。
そして、改革の中核となる政府経費削減省(DOGE)のリーダーとして、トランプ氏の支持者であり、腹心ともいえるイーロン・マスク氏が就任するという。
とはいえ、第二次トランプ政権の目玉政策のひとつが化石燃料の復権であり、ひと言でいえば反EVがテーマとなっている。
はたして、イーロン・マスク氏の腹づもりはどのようなものだと想像できるだろうか。そして、イーロン・マスク氏が政権に入り込むことでテスラが得することがあるのだろうか?
新政権が発足したばかりなので具体的な政策や現実的な実施状況が見えてくるのは、まだ時間がかかるだろうが、イーロン・マスク氏の狙いについて想像してみよう。
まず、テスラのブランディングにおいてEV優遇措置とは距離を置いてきた印象がある。実際には減税であったり、補助金であったりといった優遇策はテスラの販売にプラスになってきただろうが、テスラ自体はEVがお買い得であることよりも、新しいモビリティの先駆者というイメージによって価値を高めてきた。最近では自動運転テクノロジーのアピールによってブランディングを進めている。

つまり、EV優遇の政策に乗っかってEVの販売を促進してきた他ブランドに比べると、EV優遇策の停止はテスラにおいてはマイナス要素が少ないといえる。相対的に、他ブランドのEVが失速するなかで、テスラが受ける影響は小さいという可能性も考えられる。
イーロン・マスクの狙いは宇宙にあり!?
そもそもEV失速という認識がミスリードであろう。たしかに北米市場については、EV販売の伸び率は小さくなっているのでEVは「オワコン」のように思えるが、じつは全体としての販売台数は増えている。

減速でも停止でもなく、あくまで失速(ペースダウン)でしかないともいえる。逆にいうと、他ブランドの伸びにより減速しているのはテスラだったりする。
むしろ、次なるテーマとしてマーケットは「自動運転」にフォーカスしている部分もある。ご存じのように自動運転の普及においては、保険制度を含めた法律関係や自動運転に合わせたインフラの整備などがポイントになってくる。そうした領域において、テスラにとって好ましい方向に進むように政策に関与できることは、テスラの将来性につながるだろう。
うがった見方をすれば、トランプ政権がエンジン車の復権に力を入れることで、GMやフォードといった伝統的な自動車メーカーがEVからエンジン車へリソースを割くことになれば、EV開発は鈍化するわけで、EVカテゴリーにおけるテスラの地位は安泰という近未来も想像できそうだ。

もっとも、筆者の個人的な想像としては、イーロン・マスク氏にとってテスラにとって有利な政策を実現するというのはプライオリティが低いであろうと感じている。よく知られているように、イーロン・マスク氏の究極的な夢は火星移住であり、革新的なロケットを開発しているスペースXこそが、イーロン・マスク氏がもっとも注力している事業という見方もある。

勝手な想像だが、NASAのコストダウンとして、知見や技術の一部を民間に移転するという建前で、スペースXのパフォーマンスをアップさせることが本丸で、そのために政権に入り込んだのかもしれない。イーロン・マスク=テスラとだけ捉えるだけでは見えてこない部分もあるといえそうだ。