この記事をまとめると
■滑りやすい路面はクルマのコントロールテクニックを磨くのに都合がいい



■低ミュー路はドリフトやカウンターステアなどのスキッドコントロール技術を磨くのに適している



■欧州では冬季になるとアイストレーニングを開催する自動車メーカーも多い



雪が降ると喜んでクルマを走らせていた

降雪があると路面が滑りやすくなり、クルマの運転には細心の注意が必要になる。一方で、滑りやすい路面はタイヤグリップ限界が低く、クルマのコントロールテクニックを磨くには都合がいい。



ドライバートレーニングとして、特設コースやスキッドパッドにおいて散水してミューを下げ、滑りやすい路面を意図してコース整備することもある。

ミューが下がると、低速でもスリップしやすくなるので、ドリフトやスライドを引き起こしやすく、それをカウンターステア操作やアクセルワークで姿勢制御するのだが、挙動がスローモーションで対処しやすい。



かつて(45年以上昔の話だが)は雪が降ると、犬が喜んで庭を駆けまわるように、クルマを走らせていたものだ。当時はまだスタッドレスレスタイヤがなく、降雪時でもクルマを走らせる場合はタイヤチェーンを装着するのが市街地でも当たり前。そこまでしてクルマで出かける人は少なかった。



冬の北海道じゃタクシーもバスも軽自動車の女性も「ドリフト」「...の画像はこちら >>



しかし、現代はそういうわけにはいかない。スタッドレスタイヤの普及が進み、性能も向上。4WDモデルも多く、積雪した道でも普通に走れてしまう。グリップ限界が乾燥舗装路より低いのは変わりないが、制限速度を守り、電子制御に頼っていれば、特別な運転技術は必要としないだろう。そんななかで、たとえ速度が制限速度以内だとしても、クルマをスライドさせたりドリフトさせたりして楽しむなんていうのは御法度だ。これは絶対にやめてほしい。



逆にサーキットやジムカーナ場など、積雪で走行が難しい状態になってしまったら、チャンスとばかりに安く借りてトレーニングするのはお勧めだ。散水するより遥かに低ミューで滑りやすく、アンダー/オーバーステア、ドリフト、カウンターステアなどスキッドコントロールのスキルを高めるのに適しているといえる。



冬の北海道じゃタクシーもバスも軽自動車の女性も「ドリフト」「カウンター」当たり前! レーシングドライバーが語る「雪上走行」の重要性とは
パイロンをたてて雪上走行しているマツダ・ロードスター



冬季に北海道へ出向くと、市街地の交差点でもドリフトしてカウンターを当てながら走るタクシーやバス、軽自動車の女性ドライバーなどが普通に見られる。毎年積雪道路を走ってきた経験から、雪道ドライビングのスキルが自然と身につき、こうした光景が散見されるようになるっているのだ。そうした地域に、非降雪地帯のドライバーが出かけて行って運転したら、おそらく流れに乗るのもおぼつかないだろう。



海外ではウインタートレーニングの開催は一般的

かつてはスパイクタイヤが一般的に販売され、北海道のユーザーの多くに普及していたが、いまはスタッドレスに付け替えられ、よりスキッドに対するスキルが磨かれて高まっている。



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北海道の街なかの様子



雪道で走る場合、スタッドレスタイヤ装着は必須なわけだが、スタッドレスの性能も一様ではない。数年前のタイヤや数万kmも走ったタイヤの場合もある。流れに乗る場合は他車が4WDか2WDか、車種や電子制御のレベルなども見抜いて車間距離や速度差を見計らなければならず、そうしたスペックが不明なら最悪のケースを想定して走ることが大事だ。そうした運転はストレスフルで、決して楽しいとは感じないだろう。



山岳地域で夜間などに交通量が少ないからとスキッドトレーニングを行うことも違法。公道は限界を試す場所ではなく、限界に達しないよう安全運転に徹しなければならない。



それだけに運よくクローズドコースを積雪状態で走れたら、千載一遇のチャンスと思って積極的に走る。パイロンをふたつ置いて8の字旋回するだけでも十分。

20~30km/hの低速、低Gでクルマに発生するヨーの発生・収束、タイヤのスキッド量とスロットル制御の関係、電子制御オンとオフなど、さまざまな経験値と高めることができる。



ただ、走行を繰り返していくうちに路面の積雪が掃け、アスファルトが露出しやすい。一定の低ミューを維持することは難しい。冬季に凍った湖上で低ミューでの走行トレーニングが行える場所も長野県の女神湖など国内に何カ所かあるのだが、氷上においてはスタッドレスタイヤでもグリップは低く、滑り過ぎて難しい。



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氷上走行している日産フェアレディZの様子



欧州では冬季になると自動車メーカー各社がアイストレーニングを開催する。フィンランドのラップランド地域にある大きな湖上に仮設コースを作り、スパイクタイヤを装着して端スピードで走らせる。150km/hでドリフトしたりカウンターステアを当てたり、またタイムアタックするなど高度なトレーニングが毎年行われ(参照:https://www.webcartop.jp/2019/11/458411/2/)、免許を取得したばかりの息子に参加させスノードライビングのスキルアップを願う親御さんも多くいるという。



ただ、規制や法律で縛り付けるだけではなく、そうした自動車文化の面も日本のドライバーは学ぶべきだと痛感させられるのだ。

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