この記事をまとめると
■ホイールベースは前後タイヤの中心を結んだ長さで、トレッドは左右タイヤの中心をつないだ長さ■ホイールベースが長いと直進安定性に優れ、ホイールベースが短いと小まわりが利く
■トレッドが広いほうがコーナリング時の安定感が増す
ホイールベースは直進安定性に影響を及ぼす
自動車のスペックシートにおいて、ほとんどのケースで最上段に記されているのが全長・全幅・全高のボディサイズで、それは重要度が高いからといえる。機械式駐車場などでは、それぞれのサイズが明確に制限されていることがある。ほしいクルマが、パレットなどが対応するサイズに収まらないために「買いたくても買えない」という恨み節を聞くことも少なくない。
そして、スペックシートではボディサイズの次にホイールベースやトレッドの数値が書かれていることが多い。ご存じのように、ホイールベースとは真横から見たときに前後タイヤの中心を結んだ長さであり、トレッドというのは真正面(もしくは真後ろ)から見たときに左右タイヤの中心をつないだ長さとなる。
スペックシートの下にクルマの線画が掲載され、そこに全長・全幅・全高と合わせて、ホイールベースや前後のトレッド寸法が載っていることも多い。ホイールベースやトレッドの数値が無意味とはいわなくても、「クルマ選びにおいて何の参考になるんだろう?」や「ボディサイズと同等に扱われるほど重要なのか?」と思っているユーザーは少なくないのではないだろうか。
そこで、ホイールベースやトレッドの数値から想像できる機能面にフォーカスしつつ、クルマ選びの参考になる要素を整理してみようと思う。
まず、ホイールベースについて手短にまとめると、ホイールベースが長いと直進安定性に有利で高速巡行が楽に感じることが多い。逆にホイールベースが短いと小まわりが利く。つまり、長距離ドライブを重視するのであればホイールベースが長いモデルを選ぶといいし、街乗りでの扱いやすさを求めるならホイールベースが短いモデルのほうが乗りやすい傾向になるといえる。

一方、トレッドについては、同じようなボディサイズであれば、幅広いほうが有利なことが多い。一般論でいうと、トレッドが広いほうがコーナリング時での安定感が増す傾向にある。さらに、操舵輪であるフロントのトレッドが広いと、同じタイヤサイズで比べると切れ角を大きくしやすいので小まわりが利くクルマに仕立てやすい。
最近は技術の進歩で「いいとこ取り」のクルマも増えた
古い話になるが、1998年に軽自動車がいまの規格に変わったとき、全幅が1400mmから1480mmに広がった。

もちろん、ワイドトレッド化によるメリットは、ボディサイズやタイヤサイズが同等であった場合という条件付きの話であって、全幅2.0mのクルマのほうが1.7mのクルマよりトレッドが広いので小まわりが利く……と理解してしまうのはミスリードだ。
まとめると、ホイールベースが長く、トレッドが幅広いディメンションのクルマは、直進時もコーナリング時も安定性を感じやすい素性であると想像できる。
ただし、曲がりやすさにおいてはホイールベースが短いほうが有利な面もある。古典的なスポーツカーがショートホイールベースとワイドトレッドの組み合わせとなりがちなのは、コーナリング性能を重視した結果と理解できる。

もっとも、現在では、可変サスペンションや4WS(四輪操舵)など、さまざまな電子制御テクノロジーによって、ホイールベースやトレッドという物理的な特性を超えた走り味を実現することも難しくなくなっている。
曲がりやすいショートホイールベースとしながら、電子制御で直進安定性を確保するといったアプローチをしているスポーツカーも珍しくない。小まわり性能についても4WSを採用することでロングホイールベースながら最小回転半径を小さくしているモデルもあったりするほどだ。

そのため、ホイールベースやトレッドのスペックだけでスポーツ性能については判断しづらかったりするが、基本的な特性を知る参考スペックにはなるもので、クルマ選びでは参考にしたい重要な数値であることは間違いない。