この記事をまとめると
■4サイクルエンジンではピストンが2回上下する間にすべてのシリンダー内で爆発を起こす必要がある■エンジンの気筒数によって点火する順序は異なっている
■点火タイミングはシリンダー数とクランクピンの配置角度によって決まる
点火時期は気筒数によって各気筒の最適タイミングが異なる
自動車で使われる内燃機関は、大きくわけてガソリンエンジンとディーゼルエンジンのふたつがある。両者の違いは、燃料がガソリンか軽油という点で、機構的に見るとガソリンエンジンは燃料の着火用にスパークプラグを使うことに対し、ディーゼルエンジンは吸入気を高圧縮しその熱で着火する方式を採っている。
さて、ガソリンエンジンのスパークプラグだが、常時、点火のための電気を流しているわけではない。
ところで、現在使われている自動車用4サイクルエンジンのシリンダー数だが、少ない順に並べていくと、単気筒、2気筒、3気筒、4気筒、5気筒、6気筒、8気筒、10気筒、12気筒、16気筒あたりと多岐に及んでいるが、ここで気になるのはどんな点火順序がとられているのか、ということだ。
単気筒は、当たり前だが選択肢はなし。2気筒も交互の点火以外に選択肢はない。問題は3気筒からだが、3気筒は1→2→3(または3→2→1)、4気筒は1→3→4→2(または1→2→4→3)、5気筒は1→2→4→5→3、6気筒は1→5→3→6→2→4など多数、8気筒になるとさらに増え1→8→4→3→6→5→7→2など多くの方式が存在し、10気筒は1→10→9→4→3→6→5→8→7→2など、12気筒も1→7→5→11→3→9→6→12→2→8→4→10など多くの方式が使われている。

なぜこんなに多様になるのか。この点火順序の決め方(というより必然的に決まってくるのだが)の基本となるのが、シリンダー数と回転バランス(慣性力、慣性偶力)を前提としたクランクピンの配置角度にあると考えてよいだろう。
同じ気筒数でも点火順序が異なるのは番号配置の違いのため
もっとも分かりやすい直列4気筒を例に挙げてみよう。各シリンダーのクランクピン角度は180度。4サイクルエンジンはクランクシャフト2回転で各シリンダーのサイクルが完結するから、クランク2回転は角度に置き換えると720度となる。これをシリンダー数の4で割ると180度となり、各シリンダーをつなぐクランクピン角度の値となる。別のいい方をすれば、あるひとつのシリンダーが上死点にあるときは、残る3気筒のうちどれかひとつが上死点にあり、ほかの2気筒は正反対の下死点にあることになる。
ここで考えられるクランクピン角の組み合わせは、均等に180度接合とするか、1番シリンダーと2番シリンダーを180度、そして3番シリンダーを360度(見かけ上は0度)、4番シリンダーを180度とする、ふたつの組み合わせがが考えられる。

その上で、回転バランス(慣性力、慣性偶力)を考慮すると、1番と4番を360度、2番と3番を360度設定とするクランクピン角度が選ばれている。いい替えれば、1番と4番、2番と3番のピストンが同位置にあるということは、1番が圧縮行程のときは4番が排気行程、2番が吸気行程、3番が爆発行程にあることになる。このピストン位置から点火順を見ていくと1→2→4→3となる。逆に両ピストンが同位置にある2番を爆発行程、3番を吸気行程とすれば、点火順序は1→3→4→2となる。
直列4気筒の場合、吸気→圧縮→爆発→排気の各行程は吸気/爆発と圧縮/排気の行程が同方向の動きとなるため、2気筒が同じ角度(見かけは0度だが行程の上からは360度)となる。その組み合わせが1番と4番、2番と3番が360度になるため、ふたつの点火順序が考えられることになる。
V8の点火順序が多数あるのは、シリンダーの番号配置がメーカーによって異なっているからだ。片バンクのシリンダーを1~4(反対側のバンクは5~8)と割り振るか、1、3、5、7と奇数番号を割り振るか(反対側のバンクは2、4、6、8と偶数番号)によって、表記上の点火順順序は異なってくる。なお、V8は直列4気筒を2基つないだ構造となるので、4サイクルエンジンの場合、一般的なバンク角は720度割る8で90度となる。余談だが、V12は720度割る12となるのでバンク角は60度となる。

さらに、V8の場合、クランクシャフトの軸位相が2種類あり、振動で有利な90度のクロスプレーンと高回転で有利(=レーシングエンジン)な180度フラットプレーンが存在する。
エンジンを構成する各シリンダーが、クランクシャフト2回転(720度)で吸気→圧縮→爆発→排気の行程が行われることを前提に、シリンダー数やシリンダー配列に応じて決められるのが点火順序、こう考えてよいだろう。