この記事をまとめると
■インドの首都デリー市内を走るクルマを見てみると圧倒的にスズキ車が多かった■中国系メーカーではBYDより上海汽車系のMG車が多い
■過酷な環境に晒されているが日本車が壊れにくい印象だ
インドではどんなクルマが走ってる?
海外に出かけるとポイントを見つけ、必ず通りを走るクルマの定点観測を行っている。やり方は、歩道橋を見つけてそこから下を通るクルマをウォッチ……といった具合だ。
非常時には戦車が走ったり、軍用機の滑走路代わりにすることも想定されているロシアの首都モスクワの道路などでは、中央分離帯とともに歩道橋も中心部では見かけることはないのだが、インドの首都デリーには歩道橋があったので、宿泊先の近くとメトロ(地下鉄)で数駅先にある歩道橋を観測ポイントとして定点観測を行った。
2023年度締めでは、ブランド別販売トップのスズキ、2位の韓国ヒョンデ、そして3位のインド・タタモータースを合わせて、インド国内販売シェアは約70%に達するという、少々いびつなマーケットでもあるので、定点観測していても同じクルマばかりを見かけることになる。
スズキでは、ウーバー車両としてよく使われる、ディザイア(スイフトベースの4ドアセダン)やワゴンR(日本の軽自動車とは異なる)、そしてエルティガ(新興国向け3列シートMPV)が多いのはやむを得ないとして、2023年の「オートエキスポ2023(通称デリーオートエキスポ2023)」でデビューして大旋風を巻き起こした「ジムニー5ドア(日本名ジムニーノマド)」が、さすが原産地ということもあるのか、かなり見かけることができた。
ほかにはバレーノなども多く、とにかく日本におけるトヨタ車並みに街にはスズキ車が溢れていた。

そのほかの日本メーカーでみると、ホンダは日本でWR-Vとして展開しているインド生産モデル「エレベイト」がやはり目立っていた。トヨタでは新興国向けミドルクラスMPV「イノーバ・ゼニクス」が目立つが、これは現地で社用車としてよく使われることもあるようだ。イノーバ・ゼニクスのスズキ向けOEM(相手先供給ブランド)車となる「インビクト」もイノーバ・ゼニクス並みに見かけることができた。レクサスでは圧倒的にESをよく見かけた。
日本車はやっぱり頑丈!
気になる中国系メーカーだが、BYDオート(比亜迪汽車)よりも、上海汽車系のMG車のほうがはるかに多かった。しかも、BEV(バッテリー電気自動車)ではなく、ICEとなるクロスオーバーSUVの「ヘクター」や「グロスター」が多い印象。
また、タイやインドネシアではウーリン(上海通用五菱汽車)ブランドで販売されているマイクロBEVの「エアEV」を「MGコメット」、「クラウドEV」を「MGウインザー」としてインド国内では販売しており、とくにウインザーはかなり多く走っていた。

2023年以来2年ぶりにデリーを訪れたのだが、乗用BEVは順調に増えており、そして選択肢も増えていた。2023年では圧倒的にインドブランドのタタ系BEVばかりだったのだが、今回定点観測してみると、フランスのシトロエンやルノーのほか、韓国の起亜自動車やヒョンデ自動車、BYD・ATTO3など、外資ブランドをよく見かけることもできた。
インドブランドでも、タタ以外にマヒンドラ&マヒンドラのBEVも街を走っていた。BEV以外にICEでもフランス車(ルノーやシトロエン)が目立つのだが、これはインド国内で生産したインド専売や新興国向け仕様を多くラインアップしていることが影響しているようである。

スズキは日本メーカーとしていち早くインド市場に進出した。ただし、「ファーストペンギン」だからというだけで、今日のインド市場でのトップの地位を築けたというわけでもないだろう。スズキの得意とする「小さいクルマ」をインドの人も求めており、インドに適したモデルの供給を続けたことも大きいように見えるし、現地子会社「マルチ・スズキ」の営業力の賜物というのもあるようにうかがえる。
インドにおけるクルマの使い方はまさに「酷使」という表現が似合うもの。ウーバーで使っていれば数年で走行距離が40万kmになってしまうほどで、メンテナンスらしいメンテナンスもろくに行われずに使い続けられるのである。
たまたまウーバーを呼んだら、韓国ヒョンデのコンパクトセダン「オーラ」がきた。走行距離は5万km弱(だいたい新車でおろして半年ほど経過)だったのだが、助手席側の後部ドアハンドルが抜け落ちるというあまり聞かないトラブルが発生していた。同クラスのディザイアでは見た目はかなり使い込んでいても、そのような「えっ?」と思うトラブルにはまず遭遇したことはない。日本車の優秀さを改めて知った瞬間であった。