この記事をまとめると
■かつてのモータースポーツでは予選専用タイヤ「Qタイヤ」が使用されていた



■驚異的なグリップ力を発揮する反面サーキット1~2周しかもたなかった



■いまはレギュレーションで使用禁止となっている



一発勝負のための専用タイヤがあった

最近聞くことがなくなったが、かつてQタイヤと呼ばれるタイヤがあった。旧タイヤならわかるが、Qタイヤの「Q」は何の意味? Quiz(クイズ)? Question(クエスチョン)? Quality(クオリティ)? まったく余談だがベビーチーズのQBBは「Quality's Best & Beautiful」の略。千葉県のブランド落花生に、ピ-ナッツを超える「Qナッツ」というのもあるが……。



脱線しすぎたが、Qタイヤの「Q」はQUALIFYのQ。つまりレースの予選専用タイヤのこと。



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タイヤの最大許容速度を示す速度記号にも「Q」があるが、速度記号の「Q」は、最高速度160km/hまでのパフォーマンスの低いタイヤ。乗用車用なら、最低でも速度記号S(最高速度180km/h)もしくはT(最高速度190km/h)以上のタイヤを履いてほしいところ。



さて、レース用のQタイヤだが、Qタイヤは、温まりやすくて、非常に柔らかいコンパウンド、つまりものすごいグリップ力を発揮する反面、タイヤのライフが、サーキット1~2周ぶんしかもたないという極端なタイヤ。



耐久性完全無視でグリップに全振り! たった10km前後で寿命を迎える「Qタイヤ」ってなにもの?
レーシングマシンのタイヤ



予選の1周だけずば抜けたタイムが出れば、あとはお役御免という、目的意識は高いが、野暮で下品なタイヤで、エコ精神の真逆ともいえるタイヤだった。



「だった」というのは、すでに廃止されているからで、F1では1992年にレギュレーションで禁止。



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90年代のF1日本グランプリ



ただ1980~90年代初頭には、国内レースでもトップカテゴリーに普及していたタイヤで、F3000、グループC、グループAなどでも、Qタイヤを装着して予選アタックに臨んでいた。



ミハエル・シューマッハは、F3のチャンピオンになって、F1にステップアップする前、1992年に日本のF3000にスポット参戦している。そのとき彼は「F1を目指しているので、予選専用タイヤを勉強したかった」と語っていたのは、レース界ではけっこう知られている。逆にいえば、それだけQタイヤは特異な存在で、使い方も特殊だったといえるだろう。



Qタイヤがレースを面白いものにしていた

また、グループCのレースは「時速400kmの燃費レース」といわれた。

Cカーは、レースで使用できる燃料の量だけが制限されていて、エンジンの排気量やターボ、NA、気筒数、レシプロ、ロータリーなどは自由だった。



耐久性完全無視でグリップに全振り! たった10km前後で寿命を迎える「Qタイヤ」ってなにもの?
グループCカーのレース様子



そんなCカーはやがてターボ全盛となり、予選時だけは燃費を気にせず、フルブースト。そのMAXパワーは1500馬力にも達し、FSWのストレートでは400km/hを超えてもなお加速し続けていたとのこと。



そこからわずか100mちょっとで1コーナーを旋回できる速度まで減速できるグリップ力をCカーのQタイヤはもっていた! その減速Gの高さといったら、まさに比類なし。



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日産R92CPの走行写真



その予選アタックを支えていたのも、Cカー用のQタイヤ。



グループAでもR32GT-R同士が戦った、1993年(グループAラストイヤー)は、ブリヂストン、ダンロップ、アドバン、トランピオの各タイヤメーカーが大激突。「タイヤ戦争」と呼ぶのにふさわしい、激戦を繰り広げ、レースウィークの半分はタイヤテストということも。当然、Qタイヤの開発も過熱していったので、予選からワクワクして観戦したのを覚えている。



耐久性完全無視でグリップに全振り! たった10km前後で寿命を迎える「Qタイヤ」ってなにもの?
グループA時代のレース様子



いまではマシンが速くなりすぎたのと、環境面にもネガティブなので、Qタイヤが解禁されることはないだろうが、タイヤライフと引き換えに、驚異のグリップ力を発揮したQタイヤは、ある意味おばけ。



オバケのQちゃんタイヤだったといったら、たとえが古すぎるだろうか???

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