この記事をまとめると
■大阪オートメッセ2025で強烈なオーラをまとっていたカスタムカーが「BEAST」だ■「BEAST」はランボルギーニ・ディアブロをベースに「バリュープログレス」が製作
■個性的フェイスやテールのデザインなどで他を圧倒する存在感を放っていた
19万人の来場者を驚かせた存在感抜群の和製スーパーカー
今年2025年の2月7~9日に大阪港湾地域のインテックス大阪で開催された「大阪オートメッセ2025」。記録的な大寒波に見舞われるなか、3日間合計で19万人以上のカスタムカー好きが来場し、会場は熱気を伴う賑わいを見せていました。
ここでは、多くの出展車両のなかから、筆者がとても興味を惹かれた車両を紹介していきたいと思います。
この車両は、カスタムショップや個人の展示がメインの4号館のなかでも異彩を放っていました。「バリュープログレス」が出展した「BEAST」を紹介していきましょう。
この「BEAST」と名付けられた車両は、車高短、ワイドボディなど、迫力を増したイカツい車両が多く並ぶ4号館のなかで、明らかに異彩を放っていました。前を通る来場者の声に耳を向けると、「え? なにこれ!」とか、「うおっ!」などの驚く声をあげる人もチラホラいるほどの存在感でした。
車両を製作したのは「Value Progres(バリュープログレス)」というカスタムカー製作会社の代表を務める白岩さんです。「価値ある進歩」という意味が込められた「バリュープログレス」というブランドは、福島で自動車の整備・修理をおこなう「白岩モーター商会」のカスタムカー製作事業部門です。2003年に製作した「日産マーチ」ベースの「TOY BOX」シリーズで、東京国際カスタムカーコンテストのコンパクトカー部門でグランプリ受賞するなど実績があります。
代表の白岩さんが、企画、デザイン、車両の調達、製作指揮を行い、たったひとりの熟練スタッフとともに製作を行っているそうで、完成車両を見ると、とてもそんな少人数でつくられたとは思えない仕上がりです。

この「バリュープログレス」は、白岩さんの「日本の頂点といえるカスタムカーを作り上げたい」という夢から生み出された事業だそうです。
一般的に「カスタム」というと、ベースの車両をエアロパーツや機能パーツで自分好みにアレンジすることを指しますが、白岩さんが「カスタム」という言葉に込める想いはそれらとは出発点が異なります。本来「custom」とは「特別に誂えたもの」という意味で、オリジナルのデザインをまとった車両のことといっていいでしょう。
白岩さんはそういう「真のカスタム」のイメージを追い求めて、唯一無二の存在を作り上げることに心血を注いでいます。
この「BEAST」は「バリュープログレス」のフラッグシップとしてリリースするため、エンジンは最高峰を搭載したいということでV型12気筒のエンジンを想定。一時はベース車のキャビン部のみを使ってパイプフレームを組むことも考えていたそうですが、多忙な本業と諸々の状況で計画の中断を強いられます。それから再始動をかけられるようになったとき、たまたま良い状態の「ランボルギーニ・ディアブロ」が見つかり、それをベースとして製作することになりました。

デザインは、細部に至るまですべて白岩さんがおこなっているそうです。この「BEAST」では、スピード感を強調するくさび形が全体にわたって連続であしらわれているのが印象に残ります。このくさび形を用いることによって、武者の甲冑や、昆虫をモチーフにしたヒーローのコスチュームのような強さも感じられます。
全体の雰囲気は、このモデルを多くの人に知ってほしいという狙いで、ワルい雰囲気で迫力が出るように仕上げることを狙ったそうです。
車検を通して公道を走ることもできる
クルマの印象を決める顔つきも大胆な造形でまとめられています。フェンダーアーチを受けるように縦に配置されたヘッドライトユニットと、左右に分割されたグリル部分に装着されたプロジェクターライトの構成は独創的です。個人的には武者の甲冑の兜と面具のように感じられました。ノーズ部分には「バリュープログレス」の「VALUE」の文字を組み合わせたエンブレムが装着されています。

全体の迫力を増すために、ボディのシェイプは後ろに行くに従って広くなるようにつくられました。そのため、全幅はベースのディアブロより360mmも広い2400mmとなっています。
長いステーをもつサイドミラーは、その幅でも後方視界を確保できる寸法になっています。ベースはヤリス用で、可倒式となっているそうです。

リヤホイールのサイズはなんと14Jで、じつに360mmも幅があります。特筆すべきはこのオフセット量で、市販品にこれだけ深い設定はなかったので特注したそうです。

ルーフから巨大なリヤウイングに繋がるセンターセクションは、F1のレッドブル「RB6」を思わせる構成で、この上面にもくさび形があしらわれています。

そしてリヤにまわると、フロントからの印象をさらに上まわるインパクトに圧倒されます。何よりまず目に留まるのが、ど真んなかのウイングステーに挟まれた部分に顔を出す4つのマフラーエンドでしょう。バックファイヤの炎をなびかせながら走るロケットのような姿を想像してしまいます。
テールランプは汎用の丸形を使いながら、広大な車幅を活かして片側に四連で装着。「既存の車種のユニットを使うとそのイメージに引っ張られるから」ということで、オリジナルデザインにこだわった手法です。

まだまだ紹介しきれないほどの密度でつくられたこの「BEAST」は、とにかく存在感という点で他を圧倒していました。
しかし、企画からデザイン製作までをおこなった白岩さんの自己採点は「まだ70点というところでしょうか」と辛口の評価でした。それというのも、目指すところは国産のカスタムカーの頂点なので、ベース車両の存在がだいぶ残っているという点で「100点にはまだまだ及ばない」のだそうです。

じつはいまの時点でこのクラスのカスタムカーを製作するためのベース車両が数台ストックされているそうで、すでに以前から温めていたデザイン案が4パターンあり、この「BEAST」の利益次第で次の車両に取りかかれるとのことです。100点の車輌がお目見えするのもそう遠くはないでしょう。そのときが楽しみです。
というわけで、この「BEAST」は販売可能とのこと。白岩モーター商会では車検の業務もおこなっているので、すべての部分で車検を通せるように作られているそうなので、すぐにでも公道走行が可能です。