ルノーは日本の事例に例えるならば「郵政民営化」

カルロス・ゴーン元会長の逮捕後、日産とルノーとの関係は大揺れの状態が続いている。途中、アメリカのデトロイト3の一角、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との提携話が急浮上したと思ったら、あっという間に話はご破産になった。報道によれば、FCA側が「ルノーの企業体質を受け入れられない」という感触を持ったからだ、とも伝えられている。



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ここでいう企業体質こそ、ルノーの正体なのかもしれない。ルノーは第二次大戦後に、経営を立て直すためにフランス政府によって国営化された。その後、1986年に民営化されている。日本で例えるならば、国鉄からJR、または専売公社から日本たばこ産業、さらには小泉政権下での郵政民営化といったケースに近い。つまり、ルノーのなかにはどこか、お役所体質が残っているのかもしれない。再び、日本で例えるならば、かんぽ生命の強引な保険販売の問題が浮上した日本郵政のように、民間企業でありながら、現場との距離が少し遠い。そんなイメージではないだろうか。



昨今のルノーのモデルラインアップは商品力が弱い

そうした民営化企業であるルノーの大株主は、いまでもフランス政府である。先述のようにFCAがルノーとのお見合いを蹴った際に問題視した「企業体質」のなかで、フランス政府が「経営に口を挟んでくる」とも指摘されている。公の場では、フランスのマクロン大統領など政府高官は、ルノーの経営、またはゴーン問題についても「政府として民間企業の経営について直接意見を言うべきではない」という。だが現実では、やはり、経営に対する政府介入が行われており、そうした体質のなかで提携先は慎重な対応が迫られるのではないだろうか。



不調にあえぐルノーの提携! 日産やFCAが受け入れ難いルノーの体質とは



では、改めてルノーを自動車メーカーとして見た場合、昨今のモデルラインアップは商品力が弱いと感じる。

商用車の領域を出て幅広い層に人気のカングーは、世界的にルノーブランドの中核にいる。だが、「どうしてもルノーが買いたい」と思えるクルマがあまりにも少ないのが実情だ。技術的にも日産との提携後、プラットフォームや電動パワートレインの開発でも日産の主導力を発揮するなかで、ルノーの存在感が薄い。



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FCAとしても連携を模索した最大の理由は、日産の技術実績が欲しかったはず。現在のルノーは売上的にも技術的にも日産ありき、なのだと思う。こうしたなかで、やはり気になるのが、ルノーと日産の今後の関係だ。ルノーとしては日産を離したくない。一方、日産はルノーと一定の距離を置いた付き合いがしたい。日産としては当然、ルノーの企業体質を十分に分かったうえで、今後の方針を決めていく。そのプロセスは商用取引というより、外から見ていると政治案件のように感じる。



以上、あくまでも筆者の私見である。

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