どうせなら「見る阿呆」より「踊る阿呆」に!
WEB CARTOPでもおなじみの自動車評論家、国沢光宏さんがドイツの地でWRC(世界ラリー選手権)に挑戦する! 8月22日(木)~25日(日)に開催される第10戦ラリー・ドイツ取材のチャンスを得た新人編集部員篠田だが、ラリーについてはまったくの初心者。そこで前回は国沢さんにラリーとは何か、についてお話を伺ったが、そもそも国沢さんはなぜラリーに挑戦するのか? 素直な疑問をぶつけてみた!
篠田:前回はラリーの基礎について教えていただきましたが、今回は国沢さんにスポットを当ててお話をお聞きしたいと思います。まず率直な疑問なのですが、なぜ自動車評論家である国沢さんがラリーに挑戦しようと思ったのですか?
国沢:ラリーではいろんなクルマが出場できるレギュレーションになっているから幅があるのが面白いと思ったんだ。

篠田:なるほど、確かにATでも出られるというのは驚きでした。では、そもそもラリーを始めたきっかけはなんだったのですか?
国沢:1990年代にWRCを見に行ったことが始まり。実際に見ているとトップのドライバーはとんでもない速さで目の前を駆け抜けていくんだよね。でも、先頭から20台くらい後ろにいたクルマがやってくると、だんだん自分でもできるかもしれないと思い始めた。30台くらいが通りすぎていくようになると、むしろ自分のほうが速いんじゃないかと。そしたら、これはもう出るしかないだろう! と思ったんだ。でも、実際に出てみると後ろの人たちも速いということがわかるんだけどね(笑)。

篠田:その行動力を見習いたいです! 最初にラリーに出場したのはいつごろですか?
国沢:デビュー戦は2002年の日本アルペンラリー。日本国内で行なっている国際格式のラリーに参加したんだ。いきなり国際ラリーに出るなんて、と周囲からは反対されたよ。でも、そのラリーではGDBインプレッサの初期型で走り、クラス内の2番手につけたこともあった。
篠田:それはすごいですね! それからラリーに挑戦し続けているんですね。
国沢:デビュー戦で手応えを感じたこともあって、2004年に日本でWRCが開催されるとわかったときは出たくてしょうがなかった。でも、実績がないと、と言われて出られずに悔しい思いをしたよ。その代わりに、アジアパシフィックラリー選手権にエントリーして北海道開催のラリーにも参加し、ようやく翌年、WRCへの出場権を得ることができたんだ。その当時はラリー誌に「ポイントを稼いでしまった」なんて書かれたこともあったよ。今でも思い出すね。
篠田:その書き方はひどい! でもそれに挫けず、順調に実績を積まれてきているんですね。
国沢:それから、2008年にも日本が開催地になる最後のWRCに出場して、ジュニアWRC(現・WRC2)のワークスカーを除くグループNで6位、GDBでは1位を獲得できた。その後も2010年に今度は1年間参戦してみようということで、タイの選手権で1シーズン戦って総合優勝を果たした。ほかにも、タイの国王杯で2回勝ったことがある。楽しかったよ。

サッカーが流行る国ならラリーも人気になる!
篠田:やはりWRCを日本で開催するというのはラリーを盛り上げるひとつのきっかけになりそうですね。来年にはラリージャパン復活の噂もありますが、このことをどう見ていますか?
国沢:日本ではトヨタガズーレーシングのラリー参戦が一番身近でホットな話題かもしれないね。じつは面白い話があって、サッカーが人気な地域はラリーも人気。サッカーが人気な地域はラリーも人気なんだ。日本でもサッカーが流行り出すのはヨーロッパと比べて遅かった。だからラリーも流行り出せば結構イケると思うんだけど、実際にラリーを見てみないと、やっぱりわかりにくいのかな。動画で見ていても、実際の音や速さはわからないからね。本物を見たら全然違うと思う。

篠田:確かに、私も早く本物を見てみたいです。なかなかイメージが湧きにくいのですが、普段、練習などはどのように行なっているんですか?
国沢:なかなかラリー専用の練習はできないね。ダートトライアルなどで早く走れたとしても、実際のラリーでは同じように走ったらコースアウトしてしまう。WRCドライバーのように2週間に1回ラリーに出場できる環境ならいいけれど、そんなことはできない。そうすると、毎日いろいろなことをラリーに置き換えて考えながら運転するしかないかな。
篠田:日常からラリーを意識されているんですね。デビュー戦から17年ラリーに挑戦し続けて、楽しいと思う瞬間はどんなときですか?
国沢:正直、ラリーが始まると大変なことのほうが多い。タイ国王杯で2回目に優勝した時は他車が次々とリタイヤしていくなかで、普通に走れば優勝できることが決まっていてもタイヤがパンクしたり、クラッシュしたりとトラブル続きだった。そういう時は辛いね。他車がいないぶん、ラリーはドライバーとコ・ドライバーだけでの孤独な戦い。いつ引っ掛けて横転してしまうかという恐怖と戦っているよ。

篠田:なるほど、それはドライバーでなければわからない心境ですね。では最後に、今回のラリー・ドイツに向けてひと言お願いします!
国沢:意気込むと最初のコーナーでいきなりリタイヤとなってしまうこともあるのがラリー。だから気負わず、3日間を1つの競技だと言い聞かせて、焦らずじっくりやるしかないね。長い目で見ないとダメだと思う。

篠田:ありがとうございました! ドライバーとして活動する国沢さんならではの目線からお話していただいたことで、ラリーの面白さやドライバーの苦労などがよくわかりました。
次回は、なんと国沢さんがラリーに使用していた本物のラリーカーに私篠田が試乗してきたので、その模様をお届けします。