国産ブランドの輸入車はほとんどが乗用車!
JAIA(日本自動車輸入組合)の発表している統計情報を見ていると、国産ブランドが意外に多くの台数を輸入していることがわかる。2019年度上半期(4月~9月)の輸入車総計は17万6946台だが、そのうち国産ブランドは2万4706台を占める。ブランドごとの台数は次のようになっている。
トヨタ:1万353台
ホンダ:5581台
日産:4249台
スズキ:2621台
三菱:1680台
トヨタは、1万台以上が商用車(ハイラックスとタウンエース/ライトエース)となっていて、日産のごく一部が電気商用車(e-NV200)なのを除くと、国産ブランドの輸入車は、ほとんどが乗用車というわけだ。並行輸入車もあるのですべてというわけではないが、カタログモデルとして輸入されているのは、ホンダはシビック(イギリス)やNSX(アメリカ)、日産はマーチ(タイ)、スズキはバレーノ(インド)とエスクード/SX-4 Sクロス(ハンガリー)、三菱はミラージュ(タイ)が挙げられる。※( )内は生産国
かつてであれば東南アジアでの生産は人件費減につながったと思われるが、いまや日本の人件費が突出して高い時代ではない。また、為替リスクや輸送コストなどもかかるため、単純に安く売るために海外で生産しているわけでもない。では、国内で生産するよりも海外で作るメリットは何があるのだろうか。
生産コストを上げないためにメインマーケットで生産する
たとえば、日産であればノートなどを生産している追浜工場でマーチを生産することは可能なように思える。たしかに組立ラインに関していえば混流に対応しているので、対応できないことはないだろう。ただし、生産のスタートとなるパネルの製造を考えると、急にハードルが上がる。

なぜなら、ボディの元となるパネルは巨大なプレス機によって鋼板を加工する工程であり、そのためには金型の管理が必要になるからだ。少量しか売れないクルマのために金型を保守管理するのは、生産コストを押し上げてしまう。もちろんプレス工程だけが課題というわけではないが、販売の見込み次第では、そのモデルのメインマーケットの近くで生産して、ほかのエリアにはそこから輸出するという手法をとることがトータルでは効率がよいといえる。
ホンダ・シビックの生産拠点であるイギリス工場は、すでに閉鎖されることが発表されている。

ほかにもサプライチェーンであったり、工場の稼働率であったりといった要素も見逃せない。生産拠点を分けるよりも、1カ所に集中させて稼働率を上げたほうがコストダウンにつながる部分もあるからだ。そうしたさまざまなファクターを考慮した上で、最適と思われる生産体制をとった結果が「輸入される日本車」を生み出している。

少子高齢化が進む日本は人口減少社会でもある。2045~2055年頃には総人口が1億人を切るのは、もはや避けられない。つまり国内市場は縮小するばかりといえる。生産の効率化を考えると、今後も海外で生産される「日本車」は増えることだろう。