メリットはメタルトップのほうが明らかに大きいが……
乗用車の「車体の形状」は、車検証上では「箱型」「幌型」「ステーションワゴン」の3種類しかない。このうち「幌型」=オープンカーは、別格な存在だ。
オープンカーとほかのクルマの違いは、屋根が開閉できるかどうかという点にあるわけだが、このオープンカーの屋根には、閉めればクーペと同じようになる、メタルトップ(ハードトップ)のものと、昔ながらの布製のソフトトップの二種類がある。
メタルトップはセキュリティの面でも、静粛性の面でも、断熱性の面でも、ソフトトップより優れていて、耐久性も高く、しかも基本的に電動で開閉できるのでエレガントでイージー。
これだけ見ると、ソフトトップよりメタルトップのほうがメリットが大きいとしか思えないが、依然としてソフトトップを採用するクルマの方が多いのはなぜなのか?
オープンカーらしい魅力を持っているのがソフトトップ!
それはやっぱり、ソフトトップのほうがオープンカーとしての魅力を多く持ち合わせているからだろう。そもそもオープンカーの魅力は、風や、光、香りといったある種の気配が感じられ、自然や季節との一体感を楽しめるところ。メタルトップを閉めるとたしかに快適で、普通のクーペやセダンと同じように走れるかもしれないが、そのぶん、車内と車外は完全に分離されてしまう。
一方、ソフトトップは布製なので、住宅でいえば障子一枚で内と外を隔てていたむかしの日本家屋のようなもの。とってもナチュラルで、わびさびもあって、情緒的。障子のようなものだからこそ、気が向けば、サッと開けたくなるし、閉めたとしても内外未分の感じが残る。

オープンカーというのはもともと実用的なクルマではないので、不便を愛するおおらかさが大事で、それを愛するオーナーが多いからこそ、ソフトトップが多いのだろう。
また、手動のソフトトップと電動のメタルトップを比べると、重量的にざっと30kgほどソフトトップのほうが軽量にできるので、よりスポーティーな走りができるのも大きい。

構造が複雑になるぶん、車体価格も20~30万円は電動メタルトップのほうが高コストになるし、設計面でもメタルルーフを収納するために、スペース的な制約が大きくなるというデメリットもある。
これらのことを考えると、よりオープンカーらしいのはソフトトップで、そうしたオープンカーの特性に惹かれる人は、今後ともソフトトップを支持し続けていくことだろう。