「クルマは走るものだから壊れて当たり前」との声も

最近ではマシになってきたが、イタリア車、フランス車といえば故障の代名詞。デザインや乗り心地のよさなどと引き換えに、トラブルは仕方がない的なあきらめも漂っていたほどだ。イタリアでよく聞くのが「クルマはかっこ良くて、速いのが大切」という言葉。

「壊れない」というのは「余の辞書にはない」ということなのだが、EU統合でドイツ車が流れ込んできたら、イタフラともに自国メーカーのシェアが急落したので、やはりラテン人でも質がいいに越したことはないのだろう。まぁ今でも現地で話をすると「クルマは走るものだから壊れて当たり前よ」というから、意識的には昔のままのような気もする。



日本人にとっては故障するといっても、止まるとかエンジンかからないぐらいのものだろうと思うだろうが、じつはあり得ないトラブルが発生したのが2000年ぐらいまでのイタリア車、フランス車だ。筆者も何台か所有していたので、自身が体験、そして仲間内で実際に目にした、耳にしたものをホンの一部だが紹介しよう。



1)床が抜けた

どんなクルマも長期間放置すればフロアは腐ってくるが、設計ミスで水が溜まりやすいクルマは多かった。ブレーキ踏んだら床まで踏み抜いたとか、視線が急に変わったと思ったらシートがフロアにめり込んでいたなどの逸話も。ウチのイタ車も比較的最近のクルマながら、対策をしないとワイパーの下が金魚鉢になる。



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2)タイミングベルトが切れる

タイミングベルトが切れやすいとは、とくにイタ車では昔から言われること。実際、4万kmで交換しないと切れたりしたし、見てみるとヒビがいっぱい入っていることも珍しくなかった。そもそもファンベルトと見間違える細さだった。1990年代のどん底時代のマセラティは5000kmで切れたり、久しぶりにエンジンかけたらプツリと切れることも。今でも5万kmちょっとで不安が増してくるクルマは多い。切れるならチェーンにすればいいのにと思うのだが。



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3)内張りが剥がれる

日本車でもなくはなかったが、1990年代までで頻発したのが、内張りの剥がれ。天井も剥がれやすく、ベロンと下がってくると王様のベッドみたいになって運転が危険なことにもなったりした。

全部剥がしてしまうのが手っ取り早い対策だった。



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4)とにかくオイルが漏れる

にじむとか、一部パッキン不良で漏れてくるといった甘っちょろいものではなく、あらゆるところから漏れまくるので、場所の特定などはかなり困難。またタイミングベルトが切れるのに関連して、ヘッドから漏れたのがベルトに染み込んでフカフカになるなんていうこともあったりした。今でも警戒レベルは下がったとはいえ、かなり漏れる。



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ドアノブが折れてドアが開かなくかったことも!

5)プラスチックが折れる

ドアノブの中が折れてドアが開かず。ハザードのスイッチが割れて、点きっぱなし。サンバイザーを戻すときにパチンとはめようと思ったら折れたなど、樹脂部分はとにかく弱い。イタリアの芸術大学にはプラスチック造形科もあって、デザインにはこだわるものの、品質には気にしないのだろう。冒頭のクルマに対する条件と同じだ。



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6)塗装が弱い

塗装の樹脂なので、上記と同じだが、普通に走っているだけで、飛んでくる小石などでバリバリ剥がれた。最近はかなりよくなっているが、コーティングのプロによれば磨いてみると強くはないとのこと。また新車なのにゴミや塗りムラがあるのはよくある話で、当人たちは「色が付いているからいいだろう」と気にもしない。



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7)ブローバイが凄い

マニアックなポイントだが、新車からしばらくするとブローバイがどんどん増えてくる。イタフラ車は電気は弱いがエンジン自体は強いという意見もあるが、開けてみるとシリンダーとピストンのクリアランスはかなり大きくて、ブローバイが増えるのも仕方がないというのが正直なところ。



8)整備性が極悪

一時のホンダ車も悪いと言われていたが、ラテン車はさらに極悪なことも。たとえばエンジンの下を通っている1本のボルトを外すのに、エンジンを吊らないとダメだったりする。どうやっても仕方がないというならあきらめるが、もともと右から入れてあるのを左からにしてくれていれば、吊らなくても外せるじゃん! と気がついてガックリくることも。



以上、キリがないのでこのあたりで。筆者も含めてディープなクルマ好きにとっては愛着が湧くのだが、デザインや走りだけで買ったフツーの人にとってはたまったものではないだろう。実際、一時期はそのすぐれたデザインセンスけっこう売れ、かなり見かけたのだが、最近はそのころの旧車をあまり見かけなくなったというのもイタリア車、フランス車の特徴。一般的なオーナーは耐えきれずに手放したのだろう。

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