エンジン回転数が低く抑えられるメリットは大きい
今では軽自動車でも高速道路で100km/h走行をなんなくこなす。それ以上の速度だって、出そうと思えば出せる。コンパクトカーならさらに余裕だ。
何故か。まずは、ハイパワーでトルクのあるクルマは、一定の速度で走る際のエンジン回転数が低く抑えられるからだ。たとえば、小排気量でそれほどパワー、トルクのないクルマが100km/hをキープして走るのに、エンジン回転数が2600回転まで回っているとする。一方、パワーとトルクに余裕があるクルマだと1500~2000回転で済んでしまったりする。その分、アクセルの踏み込み量が少なくて済むわけだ。そーっと踏んでいればいい。だから肉体的にもラク。しかも、エンジン回転数が低いということは、エンジンに起因するノイズの高まりも抑えられ、車内騒音による聴覚的疲労度も低減することになる。

アクセルペダルの踏み込み量に関して、パワーとトルクに余裕がないクルマでも、ACC(アダプティブクルーズコントロール)を使えば、アクセル操作による肉体的な疲労度が少なくて済むのでは? と思うかもしれない。たしかにペダルを踏む力は必要なくなるものの、エンジンが目いっぱいがんばっているのと、余裕たっぷりに速度を維持しているのとでは、先に触れた車内騒音で差が付くというわけだ。
スムースで静かな合流・追い越しも可能!
巡航中もさることながら、パワーのないクルマとパワーのあるクルマで差が付くのが、合流や追い越し加速時だ。パワーがないと、それこそアクセル全開、マンガで描くとしたら、汗・汗・汗……のエンジンが張り叫ぶような加速を強いられたりする。車内の会話も途切れ、繰り返していくうちに、精神的、肉体的にも疲れてしまいそうだ。ところが、パワーとトルクに余裕があれば、それこそアクセルの踏み込み量は最小限で、スムースに、静かに合流、追い越しを行うことができるだろう。そう、車内で気持ちよく寝ている奥さんや子供、愛犬を起こさずに、である。
また、ハイパワー車は当然、上級車であり、乗り心地面で有利で(特殊なスポーツカーを除く)、遮音、吸音材もふんだんに使われていることが多く、速度にかかわらず、車内が快適かつ静かに保たれるため、運転がラクに感じられる。もし、ハイパワー車でドライブモードが付いていれば、ECOモードにセットすれば、巡航中のエンジン回転数が抑えられ、より快適な室内環境になりやすい(パワーのないクルマでECOモードにするとパワー的にさらに物足りなくなるはず)。逆にスポーツモードでは、エンジン回転数が高まるはずで、エンジンレスポンス、加速力は高まるものの、車内の静かさで不利になることもある。

結論としては、短距離の高速走行ならともかく、長距離の高速走行になると、ある程度、パワーとトルクに余裕があるほうが圧倒的にラク。ドライブで、目的地に着いたとき、家に帰ってきたときの疲労度が大きく違うはずだ。とはいえ、それは数値=スペックが絶対ではない。例えば、VWゴルフ7は主力グレードのハイラインでも140馬力と、決してハイパワーなクルマとは言えない。

そう聞くとローパワーのように感じるが、しかしVWゴルフ7はトルクが25.5kg-mと、アルファード&ヴェルファイアの2.5リッターNAエンジンの最大トルク24.0kg-mを上まわるほどで、直進性や乗り心地の良さ、車内の静粛性の高さ、エンジンのスムースさ、豊潤なトルクによる運転のしやすさ、そしてガッチリとした強固なボディに守られているような、そこはかとない安心感も手伝って、ヨーロッパでの国境を超えるような超長距離ドライブでも、運転手、乗員ともにじつに疲れにくい。ゴルフでドイツのアウトバーンを超高速巡航したことがあるが、日本での100km/h巡航ともなれば、ラクラクもいいところなのである。ハイパワーでなく、ハイトルクが運転のラクさに貢献する一例である。

合わせて、運転に緊張感を伴いやすい高速走行を含めた運転のラクさでは、運転のしやすさ、ボディサイズ、ステアリングや走行時に必要なスイッチ類の操作性、視界、シートとの相性、先進安全装備の充実度もかかわる総合性能で決まってくるということは、もちろんである。